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2 なんとなくもやもやする、のはなぜなのかと。
総トータルの重量なら勝ってるけど部分的には敗北していることは認める。
しおりを挟むとはいえ、姉の音葉ちゃんはバリバリの陽キャである。フルオープン系の才能満載努力惜しまない系の突き抜けたオタク精神を昇華させてスキを仕事にしちゃえるようなタイプなので、どちらかと言うとそう言う部分を隠しがちな私とは、対極の位置にいる。
並べてみたら姉妹と分かるくらいに似ているけど、私と姉では纏う空気が違うせいで、これまで誰も声優の街宮音葉が私の姉だとは気付いていない。
しかし、そこからスイッチが入っちゃったのか、小畑さんの話は延々、声優『音葉』の話題になってしまった。ここまで耐えていた大峰さんが、スマンと一言残して逃げた。確かに努力家で声優として頑張ってる姉の事は応援しているけど、家族が他人からこんなにも賞賛を受けるとなんだかムズムズする。
ちょっと居心地悪いなぁと思いながら、あんまりニヤニヤしないように気を付けつつ、小畑さんの話に超適当に相槌を打ち続けていると、突然ぱんぱんと手が鳴った。音の方を見ると、友枝さんが立ち上がっている。
「えー 宴も闌(たけなわ)かと存じますが、ここらで一締めして一次会終了したいと思います。これからカラオケに行く人は準備して店の前で待機、もう帰る人はそのまま解散」
その言葉にちらっと佐藤君を見る。相変わらずその隣には内藤さんがいて、彼の腕を小柄なのにたっぷりある胸元にガッチリキープしている。折角誘ってもらったのに話せなかったし、同じ干支同士親睦も深められなかったなぁとちょっとがっかりしながら、カバンから財布を出す。
「えっと、支払いは……」
「いいよ、街宮さんウーロン茶一杯しか飲んでないし、他に何も頼まなかったし。初参加歓迎ってことで今日は奢られて」
この場を仕切っているらしい友枝さんが、店員が持ってきた伝票を見て、スマホで計算をしていたので、割り勘を払おうと思っていったら断られてしまった。
「あ、それから街宮さんは、初参加だからこの後のカラオケも強制参加ね。って、何その嫌そうな顔」
「私、カラオケって苦手で……」
「ダメー 別に素人が集まって楽しく歌うだけなんだから、音外そうがなんだろうが大丈夫!」
何が大丈夫なのかわからないけど、友枝さんが自信満々な感じで親指を突き出している。もともと陽気なタイプなんだろうけど、相当飲んでるんじゃなかろうか、この人。
再びちらっと佐藤君を見ると、甘えてしなだれかかる内藤さんを邪険に払うこともできず、何とか不自由な体勢のまま友枝さんにお金を払っている。
うーん、どうにか逃げる方法はないかな。
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