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後悔先に立たず
ちゃんと謝るからサバ味噌煮引かないで。
しおりを挟む今日の晩ごはんは柊也作。俺もちょっとだけお手伝い。
フツーの和食。
ご飯とみそ汁とほうれん草にしらすが入ったお浸しと、里芋の煮物とサバ味噌煮。しかも美味い。
なにコレ美味い。冷蔵庫から出てきた麦茶とか入れるボトルに昆布入っててびっくりしたけど。
「柊也も料理できたの?」
「本当に失敬な子ですね。藤也に出来て私に出来ないわけがないでしょう」
ああ、そうですか。そうですよね。ゴメンナサイ。ちゃんと謝るからサバ味噌煮引かないで。
今夜は、なんか藤也は自分の店の方とは違う仕事があるとかで、帰ってくるのは九時くらいらしい。ので、柊也と二人ご飯中。
でも、帰ってきて小一時間くらいでこれだけ作れるってすごい。
二人が外食連れて行ってくれてたから、俺の中でこいつらは毎日外食ってイメージだったんだけど。
「これだけできるならあんないつもいつも外食しなくてよかったんじゃねぇの?」
「連れ出す口実は外食が一番簡単でしょう。普段も外食が多かったですよ。一人分作っていても不経済ですからね」
ご飯とみそ汁を一杯ずつお代わりしてお腹いっぱい食べてお茶を飲んでたら藤也が帰ってきた。
「あー もう疲れたー」
右肩に左手置いて、腕をぐるんぐるん回しながらリビングダイニングに入ってきた藤也がため息つきながら第一声。
「おかえ……いきなり抱きつくなー!!」
「ちょっとマコチャージ」
「生気吸う気かッ!? ってか重ッ 腰ッ 痛ッ!!」
ガバッと圧し掛かられて、背中が反る。ぐぎぎぎぎっ
「夕食は?」
「おー なんか超美味そう……でも悪ぃ 何も入ってない茶漬けほしい。胃がおかしい……」
また、はーって盛大なため息をついて、藤也が離れて、俺の前のイスにどっかり座る。
「何? どしたの?」
「テレビのお仕事。一時間番組なんだけど、料理系は拘束長くてさ。しかもタレントが作った不味くはねぇにしても美味くもない、よくわかんねぇ創作料理食って大げさにおいしいとか。マジでエージェントやめて俺もうテレビでない」
「藤也テレビ出てたの!?」
「時々。年に数回。グルメ番組とか、芸能人料理王決定戦の審査員とか。いてもいなくても関係ない、毒にも薬にもなんねぇようなの」
「毎回毎回『もう出ない』って言っといて、結局エージェントの社長に押し切られてるんですよ、藤也は」
藤也の前に、柊也が白ごはんとお茶の入った急須と、塩? コショウ?
コショウがりがりする容器だったけど、どうやら入ってたのは塩。ご飯の上に塩振りかけて、お茶ドバーって。それをまた、豪快にかきこむ。
「うん、シンプルに紅岩塩が美味い」
あっという間に平らげて。
「やっぱ、疲れた時はゆっくり風呂だよなぁ」
「もう張ってありますよ」
「えええええ!? いつの間にッ!?」
張ってあるなら言って! 勝手に入ったから!!
「というわけで、真琴」
「ゆーっくり、じーっくり、お風呂はいろっか」
頭ぷるぷる振って、遠慮したところでどうにもならない。
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