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嵐の前の静けさ
ぷるぷる頭を横に振って拒否。断固拒否ッ!!
しおりを挟む「んー イイ匂い」
「ッ! おんなじシャンプーだろッ」
「同じもん使っててもちょっとずつ違うだろ」
俺の耳の後ろ辺りに、藤也の鼻先。
あと、なんか、背中ッ!!
当たってる! 絶対アレが当たってる!!
「藤也……」
頭洗い終わった柊也の方みたら、こちらも同じしぐさで髪をかきあげてから、呆れたような口調で藤也の名前を呼んだ。
「へーい」
ぱっと、拘束が解けて、一目散さっきと同じ隅っこへ。足が届いちゃうのは実証済だけど、くっついてるよりいくらかマシだ。
「マコー? 別になんも悪戯してなかったっしょー? イイコだからこっちこいよ」
「い、や、だッ! しっ しなくても、密着したら……なんか、当たるからヤだ!!」
「えー それは不可抗力っしょ?」
ぷるぷる頭を横に振って拒否。断固拒否ッ!!
隅っこで小っちゃくなってる俺に、ちぇーって言いながらも、藤也の足は触れてはいても意図的に動くことはない。ほっとしてたら。
「あ」
ざばっと藤也が湯船の中で膝立ちになって、置きっぱなしになってたネコ耳。
「悪い悪い。付け忘れてた」
「忘れてていい!」
付けようとする藤也。阻止しようとする俺。二人で湯が溢れるほど暴れてたら、すぐ近くからこれ見よがしな感じの溜息。
わざとらしいそれに、二人同時に止まって、発生源……柊也の方を見てしまった。
うう。怖い。なんか、怖い。あの笑顔。
「体。洗ってあげますから、いらっしゃい、真琴」
「じ、じぶんで……」
洗う、と言う言葉が、尻すぼみ。ちらっと藤也を見たら、目が行っといたほうがいいって言ってる。
どさくさの内につけられたネコ耳も、今外したらヤバそうな雰囲気で、ちらちら双子両方見ながらそーっと、湯船から出て、そーっと、やっぱりあけられたイスに座る。なんとなく、柊也に背中向けて。
「な、なんで怒ってんの?」
「怒ってなどいませんよ?」
嘘だー 絶対嘘だー 声も不機嫌モードじゃんか。
「怒ってるっつーより拗ねてんの」
背中に、あわあわの感触。体洗うナイロンタオルを丸めたような、くしゃくしゃのヤツ。ゴシゴシされてるけど痛くない。こういう力加減も、そっくりだなこの双子。
「すねるって、なんで」
「そりゃマコ、俺と二人でいちゃいちゃしてたからだろ」
「してねぇよ!!」
アレか? ネコ耳の攻防のどこがそんな風に見えるんだよ。なんか、変なフィルターかかってるだろ、その目!
「羨ましいならお前もいちゃいちゃしたらいいだろ。つーか、風呂入る前してたじゃんかよ。人が頑張って風呂桶の裏とかまで洗ってる間に!」
「だから、違うって言ってんじゃん! うわぁ」
後ろにグイッと引っ張られて、思わず両手を上げてバランスをとる。真後ろに柊也がいて、すっ転ぶことはないってわかってても、いきなりされたら反射反応。
「コレの事なら、藤也もしてもらったでしょう」
とんっと、後頭部が当たったのは当然柊也の胸。空いた手が首元に回ってて、身動きができない。
しかも、手を上げてガードががら空きになった脇腹とか、物のついでと言わんばかりな感じで洗われる。いい感じの力加減で気持ちいいけどくすぐったい!!
「ひぅ ひゃっ うぁ」
別に、ヤらしい洗い方されてるわけじゃないけど、って言うか、昨日のヤられ方に比べたらものすっごい、フツーだけど、くすぐったいところ洗われたら変な声が出る。
「えー でもなんか、ついでっぽかったしー」
「ッん!! ほんっとに、バッカ、ばっかり!! なんかも、ちょっと見直した俺の素直に感心した気持ちを返せこの野郎どもがッ ぁン!」
上半身、余すところなく丁寧に洗われて、太ももくらいまで後ろにいた柊也が洗って、それ以上はさすがに手を伸ばしても洗いきれないのか、あわあわの玉が至極当然のように藤也へ。
お前らなんか、ケンカしそうになってなかったか? なんでそんな自然に連携できるんだ!?
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