幸せのありか

神室さち

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学園☆天国

27 side琉伊

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 この年は、物心つく前からお茶を習っていたと言う部長の手腕がすばらしいこともあって、端っからお任せムードでやる気ゼロ。それに、中等部の三年間は見て覚えなさいってことでここでお手前の練習などさせてもらえていなかった。

 実際、高等部の部員だけで十名以上。全員が練習すれば、部活を終えるにちょうどよい時間になってしまって、中等部の出番はない。私もユリも、バレエやピアノは習っていても、部長のようにお茶は小さい頃から習ったりなんかしていなかった。


 結局私なんか、一応六年在籍したのにすでにお手前の手順なんかうろ覚え。

 お仕着せのそろいの小紋姿で右往左往。


 そんな中、誰か他の人に頼めないだろうかと言い出したのはユリだった。しかし、他にお手伝いに来てくれて、無事だったOGも、客としてきてくれていたOGも、みんな卒業後お茶を続けていた人は居らず、大師匠の前でお手前が出来るような腕に覚えのある御仁は皆無。

 今日来ているお客で、お茶が点てられる人物を思い出してみても、部長のおばあ様は、なにか用があるとかで、午前の早い時間に来てもう帰ってしまっている。ユリはと言うと、いいとこのお嬢様のくせに、身内にお茶を点てられる人はいなかった。対する私は──……



 ……──私は思い出してしまったのだ。


 そう言えば、哉が子供のころオニのように習い事をさせられていて、その中に茶道が含まれていたことを。そして、今日哉がここに来ていることを。

 そんなことをどうして知っていたかと言うと、当時、ユリが付き合っていたからだ、神崎君と。いや、神崎君にもユリにも他に大勢彼女彼氏がいたから、そのうちの一人だったと言うべきか。忌憚なく言えば心より体のほうでとても親しい間柄。うん、それ以上は察して。後半は脳内オフレコにしよう。この子たちにヘンなこと吹き込んだら、『次のお茶』が怖すぎる。


 ついでに、ユリはいつも影の薄いオタク君とも仲良しだった。どのくらいって、一緒に海辺にあるイベント会場に行くくらいには。

 なぜか彼は高確率で超難関イベントでもサークルチケットをゲットすることが出来る能力を有していて、入場が楽なサークルチケット目当てにある意味ユリがおいしく操縦してたんだけど。ユリの『お友達に会いたいの』攻撃に辟易して、部室に超絶遅れて現れたにもかかわらず二人で中抜けしてしぶしぶ『お友達』に会いにいったら、その中に哉がいたのだ。


 ユリの友達の中に哉を見つけた衝撃でほとんど何もしゃべることが出来なかったけどね。彼らと別れたあと、哉が私の兄だとは全く気づかなかったらしいユリに、彼女にとっては初見だった男二人……片方実の兄で男同士掛け算するような話を延々されて、ぐったりした気分で部室に帰ると、緊急事態が待っていたってワケ。さっきまでアドレナリン全開で動き回っていた人たちが、青い顔でウンウン唸ってる図ってのは、かなり衝撃。


 おぼれるものは藁にも、これまで一度とて会話したことのない兄にもすがる。


 背に腹は替えられない。この窮地を脱すべくユリに、アレが兄であることをカミングアウト。


 ……してもユリが哉たちで遊ぶのをやめるような子じゃないって事くらい知ってたけどさ。とにかく走って本部まで。放送をかけてもらうために。


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