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学園☆天国
22 side夏清
しおりを挟む「モテモテだね、樹理ちゃん」
「いや、ちょっと違う……って言うか、夏清ちゃんもだと思うけど」
そう言われて、無意識にゴロゴロ懐いてる逢ちゃんの頭とかなでてたのに気づく。一方の樹理ちゃんは、二人にしがみつかれてちょっとヨロヨロしながら照れたように笑う。ちらりと氷川さんを窺っても、さっき柾虎君にしたような暴挙に出ようって気配はない。そうか、女の子なら大丈夫なのか。
「ごめん、ちょっと無意識にかわいくてつい。手があと五セットくらいほしい気分。あったらみんなぎゅーなのに」
「増えすぎ増えすぎ。夏清ちゃん、神崎さん知ってるの?」
「あー うん。ちょっとだけ知ってる。顔はいいけど口の悪い人でしょ?」
ああ。思い出しても腹が立つ。あの時は先生の悪口言いたい放題言ってくれやがって。理右湖さんが殴ってくれてなかったら私がヤってたよ。あれ? じゃあ今日ココにきてるのかな、あの人。先生知ってるのかな? 私はもう別に、会いたくないんですけど。
「……なんか、ミもフタもない言い方だね……神崎さんの奥さんの理右湖さんが、実冴さんと同級生で、ココの卒業生なの」
ふーん……って、ちょっと待って。理右湖さんってそんな年上なの!? ちょっと年上かなとは思ったけど、さすがに初めて会って年齢とか聞けないし、でも実冴さんと同級生ってことはすごい逆年の差なのでは? この二人は理右湖さんの連れ子って言ってたからまあ分かるんだけど、そう言えばリナちゃんのお父さんが先生たちのイッコ上の先輩だとか言ってたよね? ちょっと待って。いくつのときの子供よ、それって。
リナちゃんは高一、先生の年を思い出して、ざっと引き算してどっちにしてもありえない数字が出てきて脳内がお祭り騒ぎ状態。先生に聞こうと思って口を開きかけたとき、向こうから、琉伊さんたちが小走りでやってきた。
「ほら、先の組が終わってるわ。全くもう、だから最後のをやめておけって言ったのに」
「ごめぇん。でもほら、間に合ったからいいじゃない。いつだって時間が押して決まった時間に始まったためしがないんだし」
「そう言う問題じゃないでしょう」
誘っておいて一番遅れるってどういうコトかとか、タイミング悪いなぁとか思うけど、そう言う感情がわいてくるのはやっぱりユリさんのことが好きになれないからかも。仕方ない、あとで先生に詳しく聞こう。
「ああよかった。先に来ててくれて。途中でいなくなっちゃったからどうしようかと思ったわ。連絡も出来ないし」
駆け寄ってきた琉伊さんが、色々ほっとしたように言う。この人、結構苦労人?
「うわぁ びっくりした。アンタなんでこんなとこ居るの?」
聞き覚えのある声に振り返ったら、ステキなスーツに身を包んだ実冴さんが先生をみてびっくり顔。しかし、こういう格好すると良家の奥様みたいに見えるんだよねぇ この人。普段はフリーダム過ぎるけど。そのとなりに、こちらも負けてないくらい高そうなツーピースを着こなした理右湖さん。
「いろいろあって。そっちこそ、ココの部員だったのか」
「理右湖は正部員だったわよ。私は色々やってたからね。あーあ、そう言うことか。ふぅうん」
でてきて、先生見つけて驚いて、その周りに居る人物に視線をまわして、実冴さんが一瞬すうっと目を細めたあと、表情をひっくり返すように戻して、一人何か納得している。
「電車で来てるんなら帰り、よかったら送るけど?」
「いや、久しぶりに哉とメシ食って帰るからいい」
「そ。じゃ 速人君も誘ってあげたら? 今日も置いてけぼりだから」
「アイツはこういうのが嫌いだろ」
「アンタたちが来るって聞いたら来たと思うけどねぇ ほんっと、昔からアンタって哉君以外結構ないがしろよね」
実冴さんがくすくす笑って、先生がイヤそうな顔をしている。実冴さんってどこまで知ってるんだろう。聞いても教えてくれないんだけどさ。
「そうそう、速人君、よく昔の話しでグチグチ文句言ってわよ。構わないなら電話してあげて。家にいると思うわ」
同じように笑いながらそう言った理右湖さんに、先生が仕方ないってポーズを取りながら電話してみますよと答えていた。いや、別にいいです。会いたくないです。先生の昔のこと聞きたいけど、神崎さんからはいいです。ムカつくから。なんか微妙に含みを持たせて私の知らないことで盛り上がるのは許せないのよ。肝心のところは言ってくれないのが一番ムカつくの。
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