171 / 326
学園☆天国
22 side夏清
しおりを挟む「モテモテだね、樹理ちゃん」
「いや、ちょっと違う……って言うか、夏清ちゃんもだと思うけど」
そう言われて、無意識にゴロゴロ懐いてる逢ちゃんの頭とかなでてたのに気づく。一方の樹理ちゃんは、二人にしがみつかれてちょっとヨロヨロしながら照れたように笑う。ちらりと氷川さんを窺っても、さっき柾虎君にしたような暴挙に出ようって気配はない。そうか、女の子なら大丈夫なのか。
「ごめん、ちょっと無意識にかわいくてつい。手があと五セットくらいほしい気分。あったらみんなぎゅーなのに」
「増えすぎ増えすぎ。夏清ちゃん、神崎さん知ってるの?」
「あー うん。ちょっとだけ知ってる。顔はいいけど口の悪い人でしょ?」
ああ。思い出しても腹が立つ。あの時は先生の悪口言いたい放題言ってくれやがって。理右湖さんが殴ってくれてなかったら私がヤってたよ。あれ? じゃあ今日ココにきてるのかな、あの人。先生知ってるのかな? 私はもう別に、会いたくないんですけど。
「……なんか、ミもフタもない言い方だね……神崎さんの奥さんの理右湖さんが、実冴さんと同級生で、ココの卒業生なの」
ふーん……って、ちょっと待って。理右湖さんってそんな年上なの!? ちょっと年上かなとは思ったけど、さすがに初めて会って年齢とか聞けないし、でも実冴さんと同級生ってことはすごい逆年の差なのでは? この二人は理右湖さんの連れ子って言ってたからまあ分かるんだけど、そう言えばリナちゃんのお父さんが先生たちのイッコ上の先輩だとか言ってたよね? ちょっと待って。いくつのときの子供よ、それって。
リナちゃんは高一、先生の年を思い出して、ざっと引き算してどっちにしてもありえない数字が出てきて脳内がお祭り騒ぎ状態。先生に聞こうと思って口を開きかけたとき、向こうから、琉伊さんたちが小走りでやってきた。
「ほら、先の組が終わってるわ。全くもう、だから最後のをやめておけって言ったのに」
「ごめぇん。でもほら、間に合ったからいいじゃない。いつだって時間が押して決まった時間に始まったためしがないんだし」
「そう言う問題じゃないでしょう」
誘っておいて一番遅れるってどういうコトかとか、タイミング悪いなぁとか思うけど、そう言う感情がわいてくるのはやっぱりユリさんのことが好きになれないからかも。仕方ない、あとで先生に詳しく聞こう。
「ああよかった。先に来ててくれて。途中でいなくなっちゃったからどうしようかと思ったわ。連絡も出来ないし」
駆け寄ってきた琉伊さんが、色々ほっとしたように言う。この人、結構苦労人?
「うわぁ びっくりした。アンタなんでこんなとこ居るの?」
聞き覚えのある声に振り返ったら、ステキなスーツに身を包んだ実冴さんが先生をみてびっくり顔。しかし、こういう格好すると良家の奥様みたいに見えるんだよねぇ この人。普段はフリーダム過ぎるけど。そのとなりに、こちらも負けてないくらい高そうなツーピースを着こなした理右湖さん。
「いろいろあって。そっちこそ、ココの部員だったのか」
「理右湖は正部員だったわよ。私は色々やってたからね。あーあ、そう言うことか。ふぅうん」
でてきて、先生見つけて驚いて、その周りに居る人物に視線をまわして、実冴さんが一瞬すうっと目を細めたあと、表情をひっくり返すように戻して、一人何か納得している。
「電車で来てるんなら帰り、よかったら送るけど?」
「いや、久しぶりに哉とメシ食って帰るからいい」
「そ。じゃ 速人君も誘ってあげたら? 今日も置いてけぼりだから」
「アイツはこういうのが嫌いだろ」
「アンタたちが来るって聞いたら来たと思うけどねぇ ほんっと、昔からアンタって哉君以外結構ないがしろよね」
実冴さんがくすくす笑って、先生がイヤそうな顔をしている。実冴さんってどこまで知ってるんだろう。聞いても教えてくれないんだけどさ。
「そうそう、速人君、よく昔の話しでグチグチ文句言ってわよ。構わないなら電話してあげて。家にいると思うわ」
同じように笑いながらそう言った理右湖さんに、先生が仕方ないってポーズを取りながら電話してみますよと答えていた。いや、別にいいです。会いたくないです。先生の昔のこと聞きたいけど、神崎さんからはいいです。ムカつくから。なんか微妙に含みを持たせて私の知らないことで盛り上がるのは許せないのよ。肝心のところは言ってくれないのが一番ムカつくの。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
冷たい外科医の心を溶かしたのは
みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。
《あらすじ》
都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。
アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。
ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。
元々ベリカに掲載していました。
昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる