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学園☆天国
11 side樹理
しおりを挟む「あ、私たちも済ませちゃおう。先生、半券頂戴。氷川さんのもついでに書きましょうか?」
夏清ちゃんがそう言って、男性二人がポケットから出した半券に六と書いて柾虎君と入れ替わりに投票に行く。みんな、ありがとう……
「すごいね。毎年盛り上がるの?」
「うーん。実は私、あまり興味がなくて、去年まではクラスの出し物とかで忙しくて……よくわからないの。ただ、六人も立候補者が出たのは長い歴史があるらしいのだけど、今年が初めてみたい」
大本命と目されていた藤原さんが突然学校を去って、彼女に遠慮していたと思われる生徒たちが雨後の竹の子みたいに立候補したの。なんとなく、藤原さんがいなくなったのは私のせいだとみんな気づいてはいるみたいだけど、面と向かって聞いてきたりはしないし、私も何も言わない。リナちゃんたちにも口止めしてるから、真相は藪の中。
琉伊さんが言うとおり、それなりに父親や祖父が有名人な子が、他の美人を抑えてグランプリなんて年も時々ある。琉伊さんは実力っぽいけどなぁ
そんな理由もあって、私は最後までミスコンへの参加に乗り気じゃなくて、受付最終日に例の二人に引きずられて書類を調えて提出したの。もう少しで出なくてよかったのに……
「ユリ、そろそろ食事に行かない? お茶会が一時からだから、そろそろ行かないと」
投票を終えて、琉伊さんが左腕に巻いた高そうな時計を見て、ユリさんに話しかけている。
そこらじゅうに花を撒き散らさんばかりの微笑を湛えて井名里さんや氷川さんに話しかけていたユリさん。あ、なんか若干夏清ちゃんが機嫌悪そうだ。琉伊さんもやれやれって顔をしている。
「あら、もうそんな時間? もう少し皆様とお話したいわ」
皆様、と言っても、彼女は男性陣二人としか話そうとしていない。いや、彼女は二人に話しかけてるけど、相変わらず氷川さんは話さないからだいたい井名里さんが答えてる。ああ、それで夏清ちゃんが不機嫌なんだわ。
「ユリが迷子になってたからね。もう十分でしょう? これ以上は迷惑……」
「あ! そうだわ!!」
いいこと考えた!! って顔で、琉伊さんの言葉をさえぎってユリさんが叫ぶ。そんな彼女の様子に、見間違いじゃなかったら全員イヤそうな顔をしている。夏清ちゃんなんか最上級な感じ。
「よろしければ皆様ご一緒されませんこと? ランチテラスでお昼をしてからお茶会にでるのですけど。師匠方もきっとお兄様や井名里様にお会いになりたいと思いますわ!」
「ユリ、急に客を増やすのは……」
「構いませんわよぅ あの時あんなにお世話になった方々がいらっしゃるのにお招きしないほうが師範に叱られてしまいましてよ? ちょっと詰めたら入れます」
「用意もあるだろうし……」
「大丈夫ですわ。お菓子は余分を用意しているはずですもの。ね? 皆様と一緒のほうがきっと楽しいわ! ちょっと待ってらしてね。今電話して聞いてみますわ」
なんと言うゴーイングマイウェイ。みんながあっけに取られている間に有無を言わさぬ勢いで携帯電話を取り出して、誰かと会話を始めてなんだかぽんぽん畳み掛けて、最後は言い逃げのように電話を切ってご機嫌な笑顔でみんなの顔を一巡。
「皆様! 時間が少し遅くなりますけれど大丈夫ですわ!! さあ一緒にお食事に参りましょう!!」
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