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学園☆天国
7 side夏清
しおりを挟む「すっごーい。こんなのいつの間に折ったの?」
私が鶴を戻してる間に折ったんだろうけど、どう考えても三分くらいしか経ってない。
「簡単だぞ。慣れたら一分で折れるから『一分ローズ』」
「一分で折れるの!?」
見ただけでは、どうやって折ったのかも分からないくらい立体的なバラ。
「さすがに久しぶりだしそれなりにきれいに折ろうと思ったら一分は無理だな。んでこっちのが、一分ローズを考えた川崎敏和准教授が作ったもっと本格的で難しいバラだから『川崎ローズ』」
「ひゃー」
「ちなみにこの人は、折り紙に関する論文で数学の博士号をとってる。確か川崎定理『一点から放射状に延びた折り線で紙を平坦に折りたたんだとき、折り線のなす角度の交代和が……」
「たんま。ココで講義始めないで。帰ってから聞くから、ゆっくり」
放って置いたら延々講釈垂れそう。先生はヘイキかもしれないけど、私は周りの人たちの視線が気になる。多分誰もついて来れない。
一分ローズの横に、さらに精巧なバラ。一分ローズがシンプルな原種に近い一重のバラなら、川崎ローズと手渡されたほうは八重の花びらをほころばせかけた豪華なバラ。どうやったら折り紙一枚でこんなものが作れるの? 切ったり貼ったりしてないんだよね? ココにはハサミもノリもないから。
誰が作ったって、そんな地味な作業を黙々とやっちゃうのは氷川さんくらいしかいないよね。ちらりと窺うと、どうやったのか折り紙の辺に対して微妙に角度が違う大量の折り目で作られた升目がついた折り紙をくるくる手の中で回しながら川崎ローズを折り上げている。魔法を見ているのかしら。
折り紙を折っていたほかの来場者も、折り紙を配っていたお嬢様方も、あっけに取られたような顔で一体何分割の升目が付いているかもしれない折り紙がバラに変貌する様を見ている。実際に折っている指先をじっとみても、ああ、本当に全然分からない。って言うか、何この早送り映像。しゃべらないし、ぼーっとしてる雰囲気からは思いもよらない早業よ。
暫く氷川さんの手元を見て、なんとなく先生を見る。なんかヘンな間が出来たので、もらった一分ローズを頭の天辺に載せてみた。
「見てみてー ティアラみたい? 今度アルミホイルで折ってよ、一辺三十センチの」
「教えてやるから自分でやれ」
「あ、あそこにいらっしゃったわ! お兄様っ 井名里様っ お久しぶりですわ!! まあ素敵なバラ! 折り紙には見えませんわね」
すっとーんと突き抜けるような女性の声が後ろから聞こえて、折り紙のバラを片手で支えながら振り返ると、全身からお嬢様オーラを炸裂させているとしか表現しようがないくらいキラキラ全開のかわいらしい女性が、両手の平を胸の前で合わせて、濡れたような大きな瞳で、私の頭のバラを見上げている。ダレ? 先生のこと、呼んだよね。しかも『様』で。
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