幸せのありか

神室さち

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学園☆天国

4 side樹理

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「柾虎君、疲れない? 座ってていいよ」

「いや。ぼ……お、俺は大丈夫だから樹理が座るといい」

 今更だけど隅っこに空いているパイプイスを見つけて柾虎君に勧めると、きっといつもは『ボク』な一人称を慣れないほうに言い換えて少し恥ずかしそうにうつむいている。どうしよう、ホントにめちゃめちゃかわいい。


 小さな男の子が一人前を一生懸命演じている姿に、つい口元が緩んじゃう。

「じゃあこうしよう」

「え? わっ!!」

 ついでに、気も緩んじゃったのだと思う。でないと、いつもの私なら絶対出来ないような行動にでちゃったからだ。

 すとんとイスに座って、柾虎君を膝に抱く。わたわたしてるけどムリに降りようとはせず、なんだか立ってるより緊張してそうな感じで柾虎君が膝に乗っている。ああ、ますますかわいい。

「ほら、二人とも座れた」

「いや、これは……樹理が重いだろう?」

「大丈夫よ? 柾虎君一人くらいヘイキ。でも、お母さん遅いわね。もう一回放送してもらう?」

「……母は……ちょっと変わってるから、もしかしたら放送自体聴いてない可能性も……」

 なんだか所在無さ気に柾虎君がゴニョゴニョとさっきまでの勢いはどこにやったのか、歯切れ悪く答えてる。あんまり聞かれたくないのかな。さっきもすごく頑なだったし。


 とりあえず、リナちゃんたちの影響で見てる、ちょっと子供向けじゃない内容のだけどアニメの話を振ってみたら、キャラクターの裏設定とか、私よりやけにに詳しかった。他にも習い事のこととか、幼稚舎のことを話題にしたら、だいぶ気持ちがほぐれてきたのか素直に何を習っているかとか、お友達の名前とか教えてくれる。暫くそうしていて、ふと視線を感じて顔を上げると、本部テントのそばに若い女性が立っているのが見えた。あれ?


「すいません、さっきの迷子……あれ? 樹理ちゃん?」

「琉伊さん?」

 すらりとした細身を上品なワンピースに包んだその人は、知っている人だった。膝に乗っていた柾虎君がするっと降りてくれた。


「琉伊さん? ……の、子供?」

「違う、私のじゃなくて、友人の子供。ああ、やっと来た。ユリ、いたわよ」

「うわあ、よかったぁ トラ君急にいなくなっちゃったから、ユリ、どうしようかと思っちゃったわ」


 琉伊さんから遅れること数歩。まぶしいくらいのお嬢様オーラの塊が立っていた。茶色くカラーリングした髪を念入りに巻いた、どう見ても女子大生……同じ制服を着ていたら同級生にも見えてしまいそうな若々しい……っていうか、自分のことを名前で言っちゃう辺りからしてちょっと常識が通用しなさそうな、その姿より中身がずっと幼い雰囲気の女性が、満面の笑顔で柾虎君を見ていた。


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