153 / 326
学園☆天国
4 side樹理
しおりを挟む「柾虎君、疲れない? 座ってていいよ」
「いや。ぼ……お、俺は大丈夫だから樹理が座るといい」
今更だけど隅っこに空いているパイプイスを見つけて柾虎君に勧めると、きっといつもは『ボク』な一人称を慣れないほうに言い換えて少し恥ずかしそうにうつむいている。どうしよう、ホントにめちゃめちゃかわいい。
小さな男の子が一人前を一生懸命演じている姿に、つい口元が緩んじゃう。
「じゃあこうしよう」
「え? わっ!!」
ついでに、気も緩んじゃったのだと思う。でないと、いつもの私なら絶対出来ないような行動にでちゃったからだ。
すとんとイスに座って、柾虎君を膝に抱く。わたわたしてるけどムリに降りようとはせず、なんだか立ってるより緊張してそうな感じで柾虎君が膝に乗っている。ああ、ますますかわいい。
「ほら、二人とも座れた」
「いや、これは……樹理が重いだろう?」
「大丈夫よ? 柾虎君一人くらいヘイキ。でも、お母さん遅いわね。もう一回放送してもらう?」
「……母は……ちょっと変わってるから、もしかしたら放送自体聴いてない可能性も……」
なんだか所在無さ気に柾虎君がゴニョゴニョとさっきまでの勢いはどこにやったのか、歯切れ悪く答えてる。あんまり聞かれたくないのかな。さっきもすごく頑なだったし。
とりあえず、リナちゃんたちの影響で見てる、ちょっと子供向けじゃない内容のだけどアニメの話を振ってみたら、キャラクターの裏設定とか、私よりやけにに詳しかった。他にも習い事のこととか、幼稚舎のことを話題にしたら、だいぶ気持ちがほぐれてきたのか素直に何を習っているかとか、お友達の名前とか教えてくれる。暫くそうしていて、ふと視線を感じて顔を上げると、本部テントのそばに若い女性が立っているのが見えた。あれ?
「すいません、さっきの迷子……あれ? 樹理ちゃん?」
「琉伊さん?」
すらりとした細身を上品なワンピースに包んだその人は、知っている人だった。膝に乗っていた柾虎君がするっと降りてくれた。
「琉伊さん? ……の、子供?」
「違う、私のじゃなくて、友人の子供。ああ、やっと来た。ユリ、いたわよ」
「うわあ、よかったぁ トラ君急にいなくなっちゃったから、ユリ、どうしようかと思っちゃったわ」
琉伊さんから遅れること数歩。まぶしいくらいのお嬢様オーラの塊が立っていた。茶色くカラーリングした髪を念入りに巻いた、どう見ても女子大生……同じ制服を着ていたら同級生にも見えてしまいそうな若々しい……っていうか、自分のことを名前で言っちゃう辺りからしてちょっと常識が通用しなさそうな、その姿より中身がずっと幼い雰囲気の女性が、満面の笑顔で柾虎君を見ていた。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
The Anotherworld In The Game.
北丘 淳士
ファンタジー
ふと立ち寄った店で見たものは、見たこともないゲーム機。
凪野涼は惹かれるように、それを手に取ってしまう。
それに絡む三人の同級生。
なぜ四人の思いにそのゲーム機は反応したのか。
ちょっとしたSFも込みのライトノベル風ラブコメ。
以前外部リンクしていましたが、第4回次世代ファンタジーカップ、エントリーのため少し改変して掲載しています。ストーリーは変わっていませんが、幾分読みやすくなっていると思います。巻きで連載しますので、ご賞味?下さい。
婚約者に捨てられた令嬢が王妃になる話
白雨あめ
恋愛
親が不正をしていたという理由で家を取り潰されてしまったミリア。婚約者に捨てられたミリアは辺境の子爵領へ飛ばされてしまう。そこで出会ったのは幼い頃一緒に遊んだ第一王子セフィロスだった。
※短編です
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる