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第二章 恋におちたら
28 side樹理
しおりを挟む「マンゴープリン!!」
大きな目が、さらに大きく見開かれ、きらきらと輝いている。Tシャツにあるとおり、好物なのだと聞かなくてもわかる。
二人がかりでテーブルに置かれた金魚鉢に、これまた大きなスプーンを突っ込んで、こんなに開けてあごがはずれないのかとあきれるくらい口をあけて、樹理の五口分くらいを一気に飲み込んで、彼は幸せそうにため息をついている。
「おいしー これはみやざきの太陽の味ー」
続いて、高級フルーツ専門店の名前も挙げて美礼ににっこり笑いかけた後、ものすごい勢いで食べ始めた。
「あ、お姉さま、この人は私の父で」
「つぐのー とーるです」
流し込むようにマンゴープリンをむさぼりながらも、何とか自己紹介をする。
「で、こちらが行野樹理お姉さま」
「……真里菜さんのお父様……?」
よろしくと挨拶も忘れて、樹理がつぶやく。そう言われたら確かに真里菜にそっくりだが、どう見ても二十五、六にしか見えない青年が、父? 兄ではなく?
このメンバーで、一番理性的と思える真里菜の祖母の美礼に目で本当ですかと問う。
「ええ、うちの娘とは結婚していませんけどね、真里菜の父ですよ。これが」
「うわー ひどい。コレ扱い」
美礼は澄ましたまま紅茶を飲んでいる。都織は非難しながらも笑っている。信じられないが、あれだけあったプリンがない。彼の前になめたようにきれいになった空の特大金魚鉢があるから、幻ではなかったはずだ。
「まあまあ、おばあ様もとーるちゃんのこと好きなのよ。でなきゃこんなの作らないから」
気楽に笑いながら真里菜が言う。そうだろう、これだけの量をつくるのは、結構大変だ。体力以外にお金も。少々の出費、あんまり気にしなさそうな家だけれど。
「うん。おいしかったです。ごちそうさまでした」
そう言って都織が席を立つ。
「もう帰っちゃうの?」
「うん。届け物に来ただけだから。これから好葉ちゃんとデートなのさ」
「ああっ ずるい。私も行きたい」
「ダメー 大人のデートだからお子様はついてきてはいけないのですー」
両手を体の前で大きくバツの形に合わせてそう言ったあと、都織はひらひらと手を振ってもと来たとおり、建物の影に消えていった。
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