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Ⅵ章 衰亡
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「ォぉおぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽっ!!」
なんとも形容し難い、聞いたことのない奇声を叫びながら、魔王のホムンクルスが異様に肥大化した手のひらを薙ぎ払うように振り回す。
「ちっ!舐めんなクソやろおっ!!」
先頭を走るリーダーの兵士がスライディングをするように姿勢を低くして飛び込む。
狙いは馬鹿みたいに開いている股下だ。
魔王のホムンクルスの体長は2メートルほど。
家屋内という狭い環境下ではあるもののギリギリ股下を潜り抜けれるだけのスペースはある。
それだけではない。
手に持つ巨獣用ライフルと呼んだソレの引き金をすれ違いざまに引く。
発射された数発の弾丸は顎下から頭上へ貫けとばかりに撃ち込まれ、下から上へと向かう弾はホムンクルスの他の部位に比べて比較的薄い顎下皮膚を着弾、そして貫通。
口腔内へと侵入、そのまま硬口蓋をも貫通して脳内にまで侵入をはたす。中にある柔らかい脳組織を貫通し続けて頭部内の頭蓋骨で弾は押しどまった。
つまりは苦し紛れの弾丸がホムンクルスの脳をも損傷させた。
「おぽぉっ?!」
殆どの急所が骨のような外骨格に覆われているホムンクルスの数少ない弱点である顎下への攻撃に、たまらずよろける魔王のホムンクルス。
見た目には出血も少なく然程のダメージではないように見える。
しかし、確実に重傷致命傷の類ではあった。
とはいえ。
致命傷ではあるがすぐに死んでしまうほどではない。
最早追撃は間に合わぬと判断したホムンクルスは脳を損失したことで動きを鈍くしながらも、まんまと自らを出し抜いたリーダー兵士には目もくれず後から続こうとする兵士に体ごとぶつかる様に襲い掛かった。
「ぃっ!!」
後から続く兵士が足を止めずに巨獣用アサルトライフルをぶっ放しながら、なんとか押し留めようとするが、顎下から弱点を撃ち抜いた先の場合とは違い、真正面からの射撃ではその硬い外骨格で弾は弾かれて、致命傷はおろかよろけさせることすら難しい。
脇を抜けようにも、家屋内の通路でそこまでのスペースはない。
リーダーと同じく股下を抜けようにも警戒している様で姿勢を低くして半ば四足歩行をするように突っ込んできた。
背後からはまだまだ元気なもう一体のホムンクルス。
「飛べぇっ!!」
「了解!」
躊躇いは一瞬。判断も一瞬。
股下を抜けぬ様に姿勢を低くして突っ込んだ結果、上方向に抜けるスペースができた。
2人の兵士は跳び箱を飛ぶように突っ込んでくるホムンクルスをかわし、すり抜けた。
ホムンクルスは背後のホムンクルスへと激突。
派手に転げる。
その隙に2人の兵士もまた死地から生還し、結果的には5人中、3人の兵士が家屋内からの脱出を果たしたのである。
「お前たち、無事だったか!」
外で包囲していた兵士の一部が脱出してきた3人へ駆け寄る。
ヘルメット内部には通信機もあるために5人がどうなっていたのか、ある程度の状況は把握できていた。
「他2名は?」
「生死不明です!」
「そうか…救助に行きたいところだが…」
あえなくホムンクルスに倒された生死不明の2名の兵士を助けたいと考えるのは当然のことだが、いかんせん家屋内に救援隊を送ろうにも狭い家屋内でぞろぞろと突入するわけにはいかない。
閉鎖空間で銃器を使えば跳弾ないしは何かの拍子に銃の射線を遮って誤射してしまう可能性が高いためである。
かと言って接近戦でなんとかできる相手ではないだろう。
そうした問題がなかったら2人がやられる前に援軍を送り込んでいただろうし、そもそもわざわざ5人だけで攻めることなく全員で攻め入ったのだから。
「…追ってくると思ったが、追ってこない様だな?」
「猿の一種のように見えますからね。彼らは非常に賢いと聞きますから、我々が待ち構えているところにわざわざ出てはこないでしょう」
どうしたものかと僅かながらに膠着状態へと陥る。
持っている巨獣用ライフルならば一般家庭の壁くらいなら容易に貫通させて中にいる敵に攻撃を与えることはできる。
しかし、いる場所に当たりをつけて撃ったところで大部分の弾は外れるだろうし、ただでさえ効果の薄かった巨獣用ライフルが、壁で多少なりとも威力を減らした状態になるのだ。
いくら弾をぶち込んでも死ぬとは思えないし、死ぬにしてもアホほどの弾薬が必要になる。
大部分の人手や資材をドーラと人腕ナマコとの戦いで消費し続けている現状において、そんな大量の弾薬を用意している余裕はなかった。
しかも家屋内の2匹だけではなく、さらに2匹もいることがわかっている。
しかもだ。
本来ならば1匹しかいないはずの化け物が2匹いたということは、他にも見逃した個体がいる可能性だってある。
いっそのこと奴らは放置でもいいのではと言う極端な考えすら浮かぶ。
どうせこの街、超巨大都市ゴモランは放棄することになるし、現在ここにいる人間は死を覚悟した軍人のみ。
放置した場合の被害と無理して倒そうとした際の被害を考え、比較して無理をしてまで倒す必要性は薄い、と考えたところで指令室からの頼もしい援軍の知らせだ。
なんとも形容し難い、聞いたことのない奇声を叫びながら、魔王のホムンクルスが異様に肥大化した手のひらを薙ぎ払うように振り回す。
「ちっ!舐めんなクソやろおっ!!」
先頭を走るリーダーの兵士がスライディングをするように姿勢を低くして飛び込む。
狙いは馬鹿みたいに開いている股下だ。
魔王のホムンクルスの体長は2メートルほど。
家屋内という狭い環境下ではあるもののギリギリ股下を潜り抜けれるだけのスペースはある。
それだけではない。
手に持つ巨獣用ライフルと呼んだソレの引き金をすれ違いざまに引く。
発射された数発の弾丸は顎下から頭上へ貫けとばかりに撃ち込まれ、下から上へと向かう弾はホムンクルスの他の部位に比べて比較的薄い顎下皮膚を着弾、そして貫通。
口腔内へと侵入、そのまま硬口蓋をも貫通して脳内にまで侵入をはたす。中にある柔らかい脳組織を貫通し続けて頭部内の頭蓋骨で弾は押しどまった。
つまりは苦し紛れの弾丸がホムンクルスの脳をも損傷させた。
「おぽぉっ?!」
殆どの急所が骨のような外骨格に覆われているホムンクルスの数少ない弱点である顎下への攻撃に、たまらずよろける魔王のホムンクルス。
見た目には出血も少なく然程のダメージではないように見える。
しかし、確実に重傷致命傷の類ではあった。
とはいえ。
致命傷ではあるがすぐに死んでしまうほどではない。
最早追撃は間に合わぬと判断したホムンクルスは脳を損失したことで動きを鈍くしながらも、まんまと自らを出し抜いたリーダー兵士には目もくれず後から続こうとする兵士に体ごとぶつかる様に襲い掛かった。
「ぃっ!!」
後から続く兵士が足を止めずに巨獣用アサルトライフルをぶっ放しながら、なんとか押し留めようとするが、顎下から弱点を撃ち抜いた先の場合とは違い、真正面からの射撃ではその硬い外骨格で弾は弾かれて、致命傷はおろかよろけさせることすら難しい。
脇を抜けようにも、家屋内の通路でそこまでのスペースはない。
リーダーと同じく股下を抜けようにも警戒している様で姿勢を低くして半ば四足歩行をするように突っ込んできた。
背後からはまだまだ元気なもう一体のホムンクルス。
「飛べぇっ!!」
「了解!」
躊躇いは一瞬。判断も一瞬。
股下を抜けぬ様に姿勢を低くして突っ込んだ結果、上方向に抜けるスペースができた。
2人の兵士は跳び箱を飛ぶように突っ込んでくるホムンクルスをかわし、すり抜けた。
ホムンクルスは背後のホムンクルスへと激突。
派手に転げる。
その隙に2人の兵士もまた死地から生還し、結果的には5人中、3人の兵士が家屋内からの脱出を果たしたのである。
「お前たち、無事だったか!」
外で包囲していた兵士の一部が脱出してきた3人へ駆け寄る。
ヘルメット内部には通信機もあるために5人がどうなっていたのか、ある程度の状況は把握できていた。
「他2名は?」
「生死不明です!」
「そうか…救助に行きたいところだが…」
あえなくホムンクルスに倒された生死不明の2名の兵士を助けたいと考えるのは当然のことだが、いかんせん家屋内に救援隊を送ろうにも狭い家屋内でぞろぞろと突入するわけにはいかない。
閉鎖空間で銃器を使えば跳弾ないしは何かの拍子に銃の射線を遮って誤射してしまう可能性が高いためである。
かと言って接近戦でなんとかできる相手ではないだろう。
そうした問題がなかったら2人がやられる前に援軍を送り込んでいただろうし、そもそもわざわざ5人だけで攻めることなく全員で攻め入ったのだから。
「…追ってくると思ったが、追ってこない様だな?」
「猿の一種のように見えますからね。彼らは非常に賢いと聞きますから、我々が待ち構えているところにわざわざ出てはこないでしょう」
どうしたものかと僅かながらに膠着状態へと陥る。
持っている巨獣用ライフルならば一般家庭の壁くらいなら容易に貫通させて中にいる敵に攻撃を与えることはできる。
しかし、いる場所に当たりをつけて撃ったところで大部分の弾は外れるだろうし、ただでさえ効果の薄かった巨獣用ライフルが、壁で多少なりとも威力を減らした状態になるのだ。
いくら弾をぶち込んでも死ぬとは思えないし、死ぬにしてもアホほどの弾薬が必要になる。
大部分の人手や資材をドーラと人腕ナマコとの戦いで消費し続けている現状において、そんな大量の弾薬を用意している余裕はなかった。
しかも家屋内の2匹だけではなく、さらに2匹もいることがわかっている。
しかもだ。
本来ならば1匹しかいないはずの化け物が2匹いたということは、他にも見逃した個体がいる可能性だってある。
いっそのこと奴らは放置でもいいのではと言う極端な考えすら浮かぶ。
どうせこの街、超巨大都市ゴモランは放棄することになるし、現在ここにいる人間は死を覚悟した軍人のみ。
放置した場合の被害と無理して倒そうとした際の被害を考え、比較して無理をしてまで倒す必要性は薄い、と考えたところで指令室からの頼もしい援軍の知らせだ。
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