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Ⅱ章 進撃
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「ぐはあっ!?」
「ベータっ!」
通ると思った攻撃が通じずに驚いた隙をつかれて、ベータと呼ばれた1人が魔王ゾウムシの腕の振り払いを食らい、幾つかの建造物を貫通しながら吹き飛んでいく。
「くそっ!司令部っ!!応援はまだかっ!?」
『他の部隊は救助活動中だっ』
「アームズシェル部隊は全てこちらに回すべきだろうっ!?」
『…そういうわけにもいかん。瓦礫に埋もれた一般市民を迅速に助けるにはアームズシェル部隊が1番効率が良い。大半の部隊は救助活動で手一杯だし、これがどこかの大国からの陽動の可能性も捨てきれんぬゆえ、国境で何かあった時用に余剰戦力も残しておきたい。ゆえに援軍はしばらく送れない』
「目先の脅威の排除を優先すべきだと思うが?原因を排除しない限り、救助したそばから新たな要救助者が増えるっ。救助がいつまで経っても終わらないぞ!?」
『かと言って今いる要救助者を無視すわけにもいくまい。確かに効率を考えれば侵入者の排除を優先すべきだが、効率優先の場合、一般市民から酷く悪く映る。犠牲を容認した、とな。犠牲者の遺族からの不評を恐れて上層部は救助を優先することにしたのさ。どちらを優先しようと一般市民の悪態はあるだろうにな』
「くそったれめ」
『その悪態は聞かなかったことにしておこう。他部隊の手が空くまでで良い。現状戦力で引きつけろ。倒せなくても構わん』
「…了解」
一応、だが。
魔王ゾウムシにも弱点はある。
昆虫ゆえに外骨格は皮膚としての機能だけではなく、人間で言うところの骨の役目も果たす。
非常に頑健で隙がないように思われるが、実のところ柔らかい部分はある程度存在する。
硬いからと全身をキッチリカッチリ覆ってしまうと困る部位がある。
それは「腹」だ。
他の部位に比べ、腹はある程度の柔軟性が必要になる。
食物を食べた際に膨れる必要があるからだ。
人間も沢山食べるとお腹が膨れる。
膨れる分、一度に沢山食べることができるし、食べ過ぎたとしても膨れるだけで済む。
これが例えばぴっちりした締め付けるような衣服を着ていれば圧迫されて苦しくなる。子供ができた妊婦であればなおのこと。
昆虫にもそれが当てはまる。
ガッチリし過ぎて多少の膨らむ余裕がないと一度に食べられる餌の量が限られてくるし、食べ過ぎてしまえば内臓を圧迫し、一度に産める卵の数も減る。
そうした弊害を避けるために昆虫は腹の部位だけは柔らかくなるように出来ているのだ。
ゾウムシは昆虫の中でも特に硬い外骨格に包まれている甲虫という種に分類されるが、例え甲虫であっても腹は柔らかい。
道端で頭だけを残したクワガタムシやカブトムシの死骸はこの柔らかい腹の部分だけが野生動物に食べられた結果なのである。
魔王ゾウムシにおいても同じことが言える。
しかし、そうした弱点が剥き出しな訳がない。
甲虫の場合、腹は硬い前羽にぴっちり覆われていて守られている。
硬い前羽は飛び立つ際に羽ばたくことは出来ず、二枚一対の後羽のみで飛ぶために甲虫は飛ぶのが下手くそという欠点はあるもののアームズシェル部隊が魔王ゾウムシをどうにかするためにはその硬い前羽の下に隠れる腹に攻撃を行うのがベスト。
しかし、もちろんのこと凄まじいパワーで動き回る魔王ゾウムシを捕まえ、前羽をこじ開け、弱点である腹を切り裂くなど簡単ではない。
そもそもとして彼らは誰もがそこまでの知識や発想を持っていなかった。
結果、引きつけろと言われどうしたものかと考えるのも束の間。
魔王ゾウムシがいよいよ行動を開始した。
彼女はとりあえずとばかりに目の前にいた1人を殴り飛ばしたが、考えても目の前の彼らが人間なのかはよく分からなかった。
まあ、人の形に近いし、人間の街にいる。かつ襲ってきたのだから返り討ちにしても良いと思うが、殴った感じ、彼らをどうにかするのは厳しいと判断した。
つまり、魔王ゾウムシは彼らを無視して他の人間を倒し続けることを選択した。
みちり。
彼女は脚に力を溜める。
そして、再度砲弾のように前へ突進する。
「こいつっ!?
させっかよぉっ!!」
「ガンマっ!?まてっ!」
それに気づいたガンマと呼ばれた隊員が魔王ゾウムシの前に飛び出した。
ガンマは受け止める気なのである。
地球にあった巨大戦艦の主砲弾以上の質量を持つ魔王ゾウムシの高速体当たりを。
「ごあああああああっ!!」
どっかん、と。
あたりに生物同士がぶつかったとは思えない轟音が鳴り響く。
あまりの衝撃に突風が発生し、砂埃や瓦礫が吹き飛ばされ、魔王ゾウムシの体はガンマの体で受け止められていた。
「ここはな…俺の故郷なんだよ。これ以上好き勝手にさせるかよ、この虫野郎っ」
ガンマはやった、と内心笑った。
1度目は。
みちり。
魔王ゾウムシは目の前で立ち塞がる壁を突き飛ばすべく、再度力をこめて発射。
先ほどまでやっていたように途中で止まってもひたすらに地面を蹴り飛ばしてガンマごと街を破壊するつもりだった。
2度目の体当たりは受け止め切れずガンマは吹き飛ぶ、いや、吹き飛ばされまいと魔王ゾウムシの体にしがみついたまま、足を地面に食い込ませてひたすらに止めようとする。
魔王ゾウムシは意に介さずにひたすら街を突き進む。
「と…まれ」
家屋を
「とまれ」
人を
「とまれっ」
物を
「とまれっ!」
破壊しながら。
「とまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれっ!!!」
1度目の体当たりでガンマが装備していたアームズシェルは半ば壊れた。
それからの立て続けの体当たりによって彼のアームズシェルは全身から火花が吹き出し、今にも壊れて動かなくなってもおかしくない。
しかし、ガンマは決して離さず、諦めず、止めようとしていた。
足周りは特に酷く、ほとんど鎧が剥がれ落ちていたが、未だ諦めてはいない。
そして、人間の執念とは恐ろしい。
「どまれぇぇええええええええええっ!!」
みちり。
構わず突進しようとした魔王ゾウムシがわずかな時間、止まる。
ガンマの執念だけではなく、魔王ゾウムシとて生物であるがゆえに連続で力を込め続けるのに疲れたというのと、ガンマの体から出た血がちょうど魔王ゾウムシの脚を滑らせた結果だ。
「隊長ぉぉおおっ!!
俺ごとやれぇぇえっ!!」
ガンマが吠えた。
すかさず。
「すまんっ」
体当たりの速度についていけず、置いていかれた他の人間のうち、僅かにガンマが止めたことで追いついた隊長と呼ばれた1人が周辺に落ちていた建材の鉄パイプをガンマの太ももに突き刺さした。
貫通、そしてしっかり地面へと縫い付ける。
もちろんこれは魔王ゾウムシを押しとどめるガンマがより止めやすくするためだけのもの。
魔王ゾウムシはもちろん、今も押したり引いたりしてガンマを引き離そうとするがガンマはボロボロになりながらも決して離さない。
甲斐あって、残りの4人が集い、それぞれが魔王ゾウムシの脚に組み付いた。
「このままへし折ってやらぁっ!!」
「ガンマの頑張りは無駄にしないっ!」
「うおおぉぉおぉおおおおっ!!」
「絶対に離さないぞっ!!」
みしみし、みしみし。
魔王ゾウムシの組み付かれた脚から軋む音がする。
彼女は頑健な体を持つが、その体を支える脚は他の部位に比べて一番細長く、歩くために可動する前提の関節まである。
腹を除けば一番脆い場所であろうそこに4人がそれぞれ組み付きへし折ろうとする。
もちろんそれを黙って見ているはずがなく、魔王ゾウムシは組み付かれた脚を振り回して地面や壁に何度も叩きつける。
地面が抉れ、アームズシェルから火花が咲いても彼らは一人として離さない。
「折れろ折れろ折れろ折れろ折れろっ!」
「はああああっ!」
「ここで決めるんだっ!!」
「死ねぇえええええええっ!!」
しかし、限界はある。
2トンもの体を高速で動かすことのできる魔王ゾウムシの膂力は凄まじく、叩きつける力もそれ相応。
1人、また1人と剥がされていく。
「折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろっ!!」
次々に倒れていく仲間を尻目に1人だけが脚を抱えたまま、離さない。
1人だけならばと魔王ゾウムシは空いた脚で殴りつづける。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るっ。
「折れろぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ひたすらに殴り続けて、ついに。
なんと、魔王ゾウムシの脚がへし折れたのである。
「バキリっ!?」
悲鳴、ではない。
魔王ゾウムシは発声器官を持たない。
バキリという音は魔王ゾウムシの脚から発した音。
その音を聞いて、やり切ったと安堵したのだろう。
殴られ続けた1人は倒れ伏し、二度と起き上がることはなかった。
「ベータっ!」
通ると思った攻撃が通じずに驚いた隙をつかれて、ベータと呼ばれた1人が魔王ゾウムシの腕の振り払いを食らい、幾つかの建造物を貫通しながら吹き飛んでいく。
「くそっ!司令部っ!!応援はまだかっ!?」
『他の部隊は救助活動中だっ』
「アームズシェル部隊は全てこちらに回すべきだろうっ!?」
『…そういうわけにもいかん。瓦礫に埋もれた一般市民を迅速に助けるにはアームズシェル部隊が1番効率が良い。大半の部隊は救助活動で手一杯だし、これがどこかの大国からの陽動の可能性も捨てきれんぬゆえ、国境で何かあった時用に余剰戦力も残しておきたい。ゆえに援軍はしばらく送れない』
「目先の脅威の排除を優先すべきだと思うが?原因を排除しない限り、救助したそばから新たな要救助者が増えるっ。救助がいつまで経っても終わらないぞ!?」
『かと言って今いる要救助者を無視すわけにもいくまい。確かに効率を考えれば侵入者の排除を優先すべきだが、効率優先の場合、一般市民から酷く悪く映る。犠牲を容認した、とな。犠牲者の遺族からの不評を恐れて上層部は救助を優先することにしたのさ。どちらを優先しようと一般市民の悪態はあるだろうにな』
「くそったれめ」
『その悪態は聞かなかったことにしておこう。他部隊の手が空くまでで良い。現状戦力で引きつけろ。倒せなくても構わん』
「…了解」
一応、だが。
魔王ゾウムシにも弱点はある。
昆虫ゆえに外骨格は皮膚としての機能だけではなく、人間で言うところの骨の役目も果たす。
非常に頑健で隙がないように思われるが、実のところ柔らかい部分はある程度存在する。
硬いからと全身をキッチリカッチリ覆ってしまうと困る部位がある。
それは「腹」だ。
他の部位に比べ、腹はある程度の柔軟性が必要になる。
食物を食べた際に膨れる必要があるからだ。
人間も沢山食べるとお腹が膨れる。
膨れる分、一度に沢山食べることができるし、食べ過ぎたとしても膨れるだけで済む。
これが例えばぴっちりした締め付けるような衣服を着ていれば圧迫されて苦しくなる。子供ができた妊婦であればなおのこと。
昆虫にもそれが当てはまる。
ガッチリし過ぎて多少の膨らむ余裕がないと一度に食べられる餌の量が限られてくるし、食べ過ぎてしまえば内臓を圧迫し、一度に産める卵の数も減る。
そうした弊害を避けるために昆虫は腹の部位だけは柔らかくなるように出来ているのだ。
ゾウムシは昆虫の中でも特に硬い外骨格に包まれている甲虫という種に分類されるが、例え甲虫であっても腹は柔らかい。
道端で頭だけを残したクワガタムシやカブトムシの死骸はこの柔らかい腹の部分だけが野生動物に食べられた結果なのである。
魔王ゾウムシにおいても同じことが言える。
しかし、そうした弱点が剥き出しな訳がない。
甲虫の場合、腹は硬い前羽にぴっちり覆われていて守られている。
硬い前羽は飛び立つ際に羽ばたくことは出来ず、二枚一対の後羽のみで飛ぶために甲虫は飛ぶのが下手くそという欠点はあるもののアームズシェル部隊が魔王ゾウムシをどうにかするためにはその硬い前羽の下に隠れる腹に攻撃を行うのがベスト。
しかし、もちろんのこと凄まじいパワーで動き回る魔王ゾウムシを捕まえ、前羽をこじ開け、弱点である腹を切り裂くなど簡単ではない。
そもそもとして彼らは誰もがそこまでの知識や発想を持っていなかった。
結果、引きつけろと言われどうしたものかと考えるのも束の間。
魔王ゾウムシがいよいよ行動を開始した。
彼女はとりあえずとばかりに目の前にいた1人を殴り飛ばしたが、考えても目の前の彼らが人間なのかはよく分からなかった。
まあ、人の形に近いし、人間の街にいる。かつ襲ってきたのだから返り討ちにしても良いと思うが、殴った感じ、彼らをどうにかするのは厳しいと判断した。
つまり、魔王ゾウムシは彼らを無視して他の人間を倒し続けることを選択した。
みちり。
彼女は脚に力を溜める。
そして、再度砲弾のように前へ突進する。
「こいつっ!?
させっかよぉっ!!」
「ガンマっ!?まてっ!」
それに気づいたガンマと呼ばれた隊員が魔王ゾウムシの前に飛び出した。
ガンマは受け止める気なのである。
地球にあった巨大戦艦の主砲弾以上の質量を持つ魔王ゾウムシの高速体当たりを。
「ごあああああああっ!!」
どっかん、と。
あたりに生物同士がぶつかったとは思えない轟音が鳴り響く。
あまりの衝撃に突風が発生し、砂埃や瓦礫が吹き飛ばされ、魔王ゾウムシの体はガンマの体で受け止められていた。
「ここはな…俺の故郷なんだよ。これ以上好き勝手にさせるかよ、この虫野郎っ」
ガンマはやった、と内心笑った。
1度目は。
みちり。
魔王ゾウムシは目の前で立ち塞がる壁を突き飛ばすべく、再度力をこめて発射。
先ほどまでやっていたように途中で止まってもひたすらに地面を蹴り飛ばしてガンマごと街を破壊するつもりだった。
2度目の体当たりは受け止め切れずガンマは吹き飛ぶ、いや、吹き飛ばされまいと魔王ゾウムシの体にしがみついたまま、足を地面に食い込ませてひたすらに止めようとする。
魔王ゾウムシは意に介さずにひたすら街を突き進む。
「と…まれ」
家屋を
「とまれ」
人を
「とまれっ」
物を
「とまれっ!」
破壊しながら。
「とまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれとまれっ!!!」
1度目の体当たりでガンマが装備していたアームズシェルは半ば壊れた。
それからの立て続けの体当たりによって彼のアームズシェルは全身から火花が吹き出し、今にも壊れて動かなくなってもおかしくない。
しかし、ガンマは決して離さず、諦めず、止めようとしていた。
足周りは特に酷く、ほとんど鎧が剥がれ落ちていたが、未だ諦めてはいない。
そして、人間の執念とは恐ろしい。
「どまれぇぇええええええええええっ!!」
みちり。
構わず突進しようとした魔王ゾウムシがわずかな時間、止まる。
ガンマの執念だけではなく、魔王ゾウムシとて生物であるがゆえに連続で力を込め続けるのに疲れたというのと、ガンマの体から出た血がちょうど魔王ゾウムシの脚を滑らせた結果だ。
「隊長ぉぉおおっ!!
俺ごとやれぇぇえっ!!」
ガンマが吠えた。
すかさず。
「すまんっ」
体当たりの速度についていけず、置いていかれた他の人間のうち、僅かにガンマが止めたことで追いついた隊長と呼ばれた1人が周辺に落ちていた建材の鉄パイプをガンマの太ももに突き刺さした。
貫通、そしてしっかり地面へと縫い付ける。
もちろんこれは魔王ゾウムシを押しとどめるガンマがより止めやすくするためだけのもの。
魔王ゾウムシはもちろん、今も押したり引いたりしてガンマを引き離そうとするがガンマはボロボロになりながらも決して離さない。
甲斐あって、残りの4人が集い、それぞれが魔王ゾウムシの脚に組み付いた。
「このままへし折ってやらぁっ!!」
「ガンマの頑張りは無駄にしないっ!」
「うおおぉぉおぉおおおおっ!!」
「絶対に離さないぞっ!!」
みしみし、みしみし。
魔王ゾウムシの組み付かれた脚から軋む音がする。
彼女は頑健な体を持つが、その体を支える脚は他の部位に比べて一番細長く、歩くために可動する前提の関節まである。
腹を除けば一番脆い場所であろうそこに4人がそれぞれ組み付きへし折ろうとする。
もちろんそれを黙って見ているはずがなく、魔王ゾウムシは組み付かれた脚を振り回して地面や壁に何度も叩きつける。
地面が抉れ、アームズシェルから火花が咲いても彼らは一人として離さない。
「折れろ折れろ折れろ折れろ折れろっ!」
「はああああっ!」
「ここで決めるんだっ!!」
「死ねぇえええええええっ!!」
しかし、限界はある。
2トンもの体を高速で動かすことのできる魔王ゾウムシの膂力は凄まじく、叩きつける力もそれ相応。
1人、また1人と剥がされていく。
「折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろ折れろっ!!」
次々に倒れていく仲間を尻目に1人だけが脚を抱えたまま、離さない。
1人だけならばと魔王ゾウムシは空いた脚で殴りつづける。
殴る。
殴る。
殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るっ。
「折れろぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ひたすらに殴り続けて、ついに。
なんと、魔王ゾウムシの脚がへし折れたのである。
「バキリっ!?」
悲鳴、ではない。
魔王ゾウムシは発声器官を持たない。
バキリという音は魔王ゾウムシの脚から発した音。
その音を聞いて、やり切ったと安堵したのだろう。
殴られ続けた1人は倒れ伏し、二度と起き上がることはなかった。
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