壊れるぐらい愛して

ふしきの

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第三章

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「へい、にーちゃん、終点だよ」
 陽気な運転手のダミ声。
 あれ、俺、寝てた??


「お客様が最後です」
 フライトアテンダントが、到着を知らせに、起こしに来た。
「ああ、寝ていたのか」
 寝落ちしていたのか、着陸準備につけてもらっていたシートベルトを外す。


「チケットをお願いします」
 格安航空会社の並ぶ第ニターミナルからさらにはずれの、航空会社。
 ポケットから長い航空券を出す。
 券を破られ戻される。
 半券を眠たげに胸ポケットに入れた。

 今どき??半券??いつの時代だ?
 どこから違和感が出てきたんだ。
 もっと前からか??


 飛行機が落ちている。

 浮遊感だけが自分の周りにある。

 見渡しても人は誰もいない。

 やわらかで、温かい、なぜか胸ポケットのチケットが燃えているような感覚がした。


 ああ、何もかも眠い。


 頭の中でぼんやりと回想しているのだが、なにがなんだかそれそのものが分からない。


 雨。
 俺を見た誰か。
 その空気。

 誰だろう。


 誰よりも練習したグラウンド。
 誰よりも???
 そう思っているのは自分だけなのか?何度も何度も試合に出ても、距離が伸びない。
 表彰台に上がることは一度もなかった。
 誰よりも練習しているはずなのに。
 結果が出ない。
 焦ってはダメだ。
 追い込んではダメだ。
 空回りする。


「女ってさ、八割演技なんだってよ」
「やっべー。俺なんか落ち込むわー」


「好きな女とSEXするときって、最高に気持ちいいんだってよ」


 何を隠している。
 その目の奥に。
 見たい、見たい、見たい。


「ほんと、素に戻ると口が悪い」そう言った気がする。
 裏腹な性格。
 譲らない頑固者。
「一生懸命やっている子を応援するの好きなんだ」そう言った気がする。


「グダグダ悩んでないで、さっさと行っちまえ、糞野郎」
 失敗だ、いつも失敗だ、最後に君を泣かしてしまった。
「ごめん……ありがとう」


「好きだよ。好き……愛してる」
『俺もだよ、愛しているよ。昇、私の命』
「知ってるよ。ありがとう父さん。でも、言わなきゃいけない人に、今度こそ間違えずにきちんと伝えてね」
 

 命そのものの光が見えた。
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