壊れるぐらい愛して

ふしきの

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 東谷は高木に一緒に暮らさないかと持ちかけた。高木は唖然とした顔で、立ちつくして何も答えなかった。
「嫌か?」
「…嫌じゃない……」
 お互い干渉しあわなかったのが急に転がる石の様な展開に高木は躊躇している。
 
 東谷はむっとして言う。
「お前、細っちいだろ。見ててあぶなっかしいんだよ」
「そっそう?」
「俺の家、昔から総菜屋してて、料理には自信があるんだ。お前は体力付けないと絶対バテる」
 そう言って、頭をかきむしった。
「バテるって言われても」
 高木は半信半疑で東谷を見つめる。
 いらいらしながら東谷は、思う、バテることさせている訳だけど、どう言えば分かってくれるだろう。
「だ・か・ら!お前のことが四六時中気になってしょうがないんだよ、返事は?」
 ここまで言わすか、って恥ずかしそうに高木を抱きしめた。
 すっぽりと腕の中に入った高木は、小さく
「はい」
 と、答えた。
「それでよし!」
 そう言うと、東谷は安心して高木にキスをした。
 全く、自分がこんなにも恋に落ちていってしまうとは情けないと、東谷は思った。
 それでも、高木に対しては、どんなことがあっても離したくはなかった。

「最近つきあい悪いね」と東谷は上司に言われることがある。が、営業の成績は常に上位だったのであまり深くはつっこまれない。
「所帯持ちになるかもしれないので、金を蓄えないといけないんで」
 そう冗談を言う。
 実際の所、今の暮らしている生活空間では手狭なのでもう少し広い部屋を探している最中なのだ。
「お帰り。啓吾」
 そう言われて、出迎えられるだけでも幸せなのだが、
「やっぱり、2LDKくらい欲しい」
 と高木は言う。
「登は、俺と一緒に寝るのがそんなに嫌か?」
 と聞くと、
「そんなことはないんだけど……絶倫馬鹿だから。たまには一人で寝たい時もある……」
 と、言われて、少しだけ自分を恥じた。 
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