ふさすぐりと巨人のお話

ふしきの

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巨人と共に生き残りの顛末

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村が鉄砲水で流されたとき、ツタ網に引っ掛かったのを助けてくれたのはしらみの巨人でした。
「しらみ巨人」といわれるのはその通り、身体中の垢とアザと汚れに共存共栄している嫌なものが引っ付いているからです。
それでも、巨人が半眠りから起きて村人全員を頭にのせてくれる優しさを持っていました。

鉄砲水で絡まったのに手を差しのべてくれたのはしらみ巨人だけだったのです。
「わしらは青いふさすぐり、食らっても酸いだけ」
『わははは、どだ、私の頭の上にいる鳥の巣立ちが全部できたかどうか確認んしてくれんか?痒くても頭も掻けん』
それほどまでに優しい巨人だけだったのです。

恩を返すのが習わしの部族は、しらみ巨人のしらみつぶしや。不快な顎髭をそろえたり目の中のごみや、耳の中の詰め込まれた砂金を堀当てたりして日々を暮らしていましたが、やがて巨人は空腹と孤独に敏感になりすぎたのです。

あの日。

『木苺。食う』
「温度で頭がいかれた!」
とひとは言います。
ですが、
「あれはわしらとたもとを別れた種族。だが、ヒトに落ちた種族じゃ」
『迷う迷うな、食うな。食えるな食える……な。木苺。赤い実』
と言い聞かせている巨人に老女が
「私の子が、息子が見える。生き残り最後の部族、最愛の息子が生きている」
と狂い出したのです。
「止めて、わしらは生きている。わしらの子の最後のあの子を助けておくれ。おーい。おーい。母じゃはここにおる。皆も欠けずに生きておる!」
「おーいおい」
その声は巨人の腕をあげる音にかきけされても叫び続けるのです。
「助けておくれ。わしらの子」

まだ見つからぬ我が子を探す仲間の一人が巨人を狂わせ自分も狂ったとなったのは、
「止まれ。止まれ」
そういうと、
『止まれ』
といいながら巨人が石を投げていたこと。
「足を止めろ。あの子は立ち止まる。」
巨人に向かって飛んでくる眉間に刃の消えない傷をつけた破片は同族の再生組織でした。


破片がめり込んだ巨人の気持ちはもう誰にも伝わらなくなりました。

「我等は治癒と貴方に安心を約束いたします」
逆です。
我等は組織的狩猟を覚えていったのです。巨人ひとり分ぐらいの食いぶちは我等が採取していくのは当たり前です。
「食えるもの、食えないもの」分け、我等が食えるもの食えないものも取る。捕りすぎないように。一山二山など巨人の股のしたかもしれませんが食べ物はあるのです。
巨人が自分の爪ひとつで怪我をしないように整えたり、丁寧に丁寧に語り、かれの蓄積された言葉を教わりました。お互い長寿なので待つことにも耐えることにも慣れています。そして、ひどい言葉にはおびえます。同じなのです。
巨人は生涯笑ってはくれなかったのです。

ワタシが最後の生き残り。
血縁が濃すぎて継ぎ子はもうできない。


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