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第四章:三極-1-

飛田_4-2

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 ――あれ? この男、どこかで……

 相手と睨み合った飛田には、その男の顔に見覚えがあった。そして、それは過去に会ったことがあるのではなく、データ上で、見たことがある感覚だ。
「……岩田」
 そう呟いたとき、男の眉間に皺が出来て、それが深くなるような反応があった。
「そうだ、岩田。詩島組の幹部」
 飛田の記憶から情報が正常に出力された。彼の記憶がまだ鮮明だったのは、一週間前に虹河原から目を通しておくように言われた資料に相手の情報があったからだ。それより前だったら、うろ覚えになっていたかもしれない。
「絶好調で衰退している詩島組が何の用……いや、聞くだけ無粋か。俺達のところにも、『そういった意味』で危険人物の情報がきていたわけだし」
 衰退している組織は、現状打破の為に危険な思想に至ることがある。それが飛田の見た資料の内容であり、該当する人物達だった。
 そして、その為に選ばれた方法がアース博士の誘拐、といったところだろう。それぐらいは想像に容易かった。
「どけ、チビ」
「断る、デカブツ」
 その会話が開戦の合図となった。
 岩田は右の拳を振り下ろす。しかし、それを飛田は後方に跳んで避ける。

 ――凶器を持っている可能性は……いや、今の攻撃が充分危険か。

 振り抜かれた拳が空を切った音で、相手の打撃の破壊力は理解できた。また、凶器があるなら即座に使っているはずだ。応援が来られてはマズい現状では、相手に余裕があるわけではないのだから。
「行くぞ!」
 後方に跳んだ飛田が脚に力を入れて、前方へと射出するように跳び出す。
 その顔面に左拳が振り下ろされるが、飛田をそれをもう一段階スピードを上げて、前方に駆けて、避ける。そのまま相手の懐に入り込むと、ローキックを放つ。乾いた破裂音が響いた。
「まだまだ!」
 続けて、反対側の内腿を蹴る。次に、わき腹。飛田は蹴りながら岩田の身体を上っていく。
 左肩を蹴り、そして――相手の右側頭部へと左足の蹴りをクリーンヒットさせた。
「一丁上がり――なっ!」
 飛田の蹴りは的確だった。だからこそ、彼も致命的なダメージを与えたのだと思ったのだろう。
 しかし、その攻撃は岩田の身体の頑丈さからすれば軽かった。衝撃はあれど脳を揺らすほどではなかったのだ。岩田は倒れることなく、飛田の足首を掴んだ。
 まるで人形を相手するように軽々と引き上げ、更にもう片方の足首を掴む。そして、飛田をパワーボムのように地面へと叩きつけた。
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