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第五章:もういいよ
有栖_5-5
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「おつかれさま」
有栖はそう言って、事務所で桜華学園の件の後処理をしている反保に缶コーヒーを差し入れした。
「どうも」
「疲れてるね」
「することが多いので。でも、もう少しで片付きそうです」
桜華学園の後処理は既に終盤をむかえようとしていた。
学園長の交代、警察とユースティティアによる調査。学園側に色々と問題点はあったのだが、ユースティティアとしては裏金問題による証拠が見つからなかったのは痛手だった。
「今回、一緒に行動することは少なかったけど、仕事の感想は?」
「反省点が多いですね。感情的になったこともありましたし、裏金については解らなかったし……あと、結構、不安でした」
「先輩のありがたみが解った?」
「悔しいけど、そうですね。有栖先輩や一色さんがいないと、まだまだ駄目みたいです」
その真っ直ぐな言葉を受けて、有栖は少し照れる。
「仕事は一人じゃできないからね。それが解れば大収穫じゃない? それに、自分も今回の反保と同じ状況なら感情的にもなっていたと思うよ。充分、頑張った」
「ありがとうございます……先輩だったら、制止を振り切って殴ってたと思いますけど」
「……ご要望に応えて、拳で後輩の教育をしようかな?」
「出張中の一色さん、早く帰ってこないかなぁ……」
そんな会話をしながら二人は笑う。
――イチさんが帰ってきたら、今回のことちゃんと報告したいな。
有栖は空席である上司の席を見て、そう思うのだった。
有栖はそう言って、事務所で桜華学園の件の後処理をしている反保に缶コーヒーを差し入れした。
「どうも」
「疲れてるね」
「することが多いので。でも、もう少しで片付きそうです」
桜華学園の後処理は既に終盤をむかえようとしていた。
学園長の交代、警察とユースティティアによる調査。学園側に色々と問題点はあったのだが、ユースティティアとしては裏金問題による証拠が見つからなかったのは痛手だった。
「今回、一緒に行動することは少なかったけど、仕事の感想は?」
「反省点が多いですね。感情的になったこともありましたし、裏金については解らなかったし……あと、結構、不安でした」
「先輩のありがたみが解った?」
「悔しいけど、そうですね。有栖先輩や一色さんがいないと、まだまだ駄目みたいです」
その真っ直ぐな言葉を受けて、有栖は少し照れる。
「仕事は一人じゃできないからね。それが解れば大収穫じゃない? それに、自分も今回の反保と同じ状況なら感情的にもなっていたと思うよ。充分、頑張った」
「ありがとうございます……先輩だったら、制止を振り切って殴ってたと思いますけど」
「……ご要望に応えて、拳で後輩の教育をしようかな?」
「出張中の一色さん、早く帰ってこないかなぁ……」
そんな会話をしながら二人は笑う。
――イチさんが帰ってきたら、今回のことちゃんと報告したいな。
有栖は空席である上司の席を見て、そう思うのだった。
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