有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第五章:もういいよ

百井_5-2

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 百井は焦った。

 ――このままじゃ時任先生が奪われちゃう。

 時任から優しい言葉を貰う前の自分がフラッシュバックした。

 ――嫌だ。あの優しい言葉も、二人の時間も私には必要なの。取らないでよ。

 混乱する思考は、一つの着地点に無理矢理たどり着く。

 ――駄目だよ。このままじゃあ。私が、時任先生を助けなきゃ。

 どのように形成されたのかは解らない歪な思考回路が導く回答を、百井は絶対的に信じた。いや、信じるしかなかったのかもしれない。それにより、自身の心を防衛したのだろう。
 そこから、百井は時任との会話から彼に協力する提案を持ちかけ、日下部を呼び出したのだった。

「日下部さん、あのね――」
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