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第五章:もういいよ
時任_5-3
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「あの、時任先生。言いにくいんですけど――」
数日後、百井に呼び出されて時任は結果を知らされた。
日下部は時任のことを信頼している先生と認識していること。
日下部には好きな女子生徒がいること。
それを告げられたとき、時任は身体がずしり、と重くなったのを覚えている。肩の荷は下りたはずなのに、と皮肉に考えたものだ。涙は出なかったが、自然と鼻の奥が痛くなり眉間に力が入った。
「あの、こんなときに言うべきではないとは思うのですが……私じゃ駄目ですか?」
そんな時任に百井はそう声をかけた。想定外の言葉に、時任は呆けてしまった。
「へ?」
「いや、その不謹慎かもですが、私は時任先生のこと素敵だと思ってまして。えーと、すぐに交際とかじゃなくて、今は悲しい気持ちもあるかと思いますから、答えはそれが消えてからでも良いんです……その、時任先生に寄り添いたいんです」
百井の言葉はしどろもどろになりながらも素直なものだ、と時任は感じた。
――百井先生は悪い人じゃないし異性としても素敵だ、と思う。それに仕事に生きるのもいいか。
百井が桜華学園に多額の寄付をしている議員の娘、ということを時任は知っていた。彼女と結婚となれば、この学園で上の立場に出世するのは容易になるだろう。打算的な考えだが、失恋から今までのように仕事に生きるのには丁度良い。元々、自分はそんな人間だったはずなのだから、と言い聞かせた。
「俺なんかで良ければ――宜しくお願いします」
その回答から数日後――日下部は自殺をした。
日下部が死んだとき、時任は出張で学園を不在にしており、彼が女子生徒の制服を着ていたことを『第一報』で聞いたときには知らなかった。
数日後、百井に呼び出されて時任は結果を知らされた。
日下部は時任のことを信頼している先生と認識していること。
日下部には好きな女子生徒がいること。
それを告げられたとき、時任は身体がずしり、と重くなったのを覚えている。肩の荷は下りたはずなのに、と皮肉に考えたものだ。涙は出なかったが、自然と鼻の奥が痛くなり眉間に力が入った。
「あの、こんなときに言うべきではないとは思うのですが……私じゃ駄目ですか?」
そんな時任に百井はそう声をかけた。想定外の言葉に、時任は呆けてしまった。
「へ?」
「いや、その不謹慎かもですが、私は時任先生のこと素敵だと思ってまして。えーと、すぐに交際とかじゃなくて、今は悲しい気持ちもあるかと思いますから、答えはそれが消えてからでも良いんです……その、時任先生に寄り添いたいんです」
百井の言葉はしどろもどろになりながらも素直なものだ、と時任は感じた。
――百井先生は悪い人じゃないし異性としても素敵だ、と思う。それに仕事に生きるのもいいか。
百井が桜華学園に多額の寄付をしている議員の娘、ということを時任は知っていた。彼女と結婚となれば、この学園で上の立場に出世するのは容易になるだろう。打算的な考えだが、失恋から今までのように仕事に生きるのには丁度良い。元々、自分はそんな人間だったはずなのだから、と言い聞かせた。
「俺なんかで良ければ――宜しくお願いします」
その回答から数日後――日下部は自殺をした。
日下部が死んだとき、時任は出張で学園を不在にしており、彼が女子生徒の制服を着ていたことを『第一報』で聞いたときには知らなかった。
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