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第五章:もういいよ
時任_5-2
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「時任先生は、もしかして……日下部さんのことが好きだったりしませんか?」
いつだったか、時任は百井の相談を聞いているときに、彼女からそう切り出された。彼女とは何度か仕事の悩みを聞いていたので、その流れでそのような話になったことを覚えている。ぎくり、としたのは時任の本音だが、それは表情に出さないように努めた。
「やっぱりそうなんですね。解るんですよ、私カウンセラーだし」
見透かし、納得するように頷いて語る百井に、時任は戸惑った。彼女の言うことも本当かもしれないし、自身が解りやすかったのかもしれない。
「告白はされたんですか?」
「――いいえ」
時任は観念したかのようにそう言うと、百井は笑顔を見せた。
「このままでは時任先生の精神状態に良くありませんよ。業務に支障をきたすかもしれません。あの、良ければ……」
百井は笑顔を向けながら、時任に提案したのだ。
「私が日下部さんの気持ちを確認してきましょうか? 時任先生の名前は伏せて――」
その提案を時任は受け入れた。日下部の気持ちが時任に向いていなければ、この気持ちは彼にとっては戸惑い、不信の対象になり得るかもしれないからだ。
――日下部にとって、俺は信頼している教師の一人……それだけかもしれないからな。
そう思い、そうならば裏切りたくない、と思ったのだ。日下部の笑顔が曇ってほしくない、と時任は心底そう思ったのだ。
いつだったか、時任は百井の相談を聞いているときに、彼女からそう切り出された。彼女とは何度か仕事の悩みを聞いていたので、その流れでそのような話になったことを覚えている。ぎくり、としたのは時任の本音だが、それは表情に出さないように努めた。
「やっぱりそうなんですね。解るんですよ、私カウンセラーだし」
見透かし、納得するように頷いて語る百井に、時任は戸惑った。彼女の言うことも本当かもしれないし、自身が解りやすかったのかもしれない。
「告白はされたんですか?」
「――いいえ」
時任は観念したかのようにそう言うと、百井は笑顔を見せた。
「このままでは時任先生の精神状態に良くありませんよ。業務に支障をきたすかもしれません。あの、良ければ……」
百井は笑顔を向けながら、時任に提案したのだ。
「私が日下部さんの気持ちを確認してきましょうか? 時任先生の名前は伏せて――」
その提案を時任は受け入れた。日下部の気持ちが時任に向いていなければ、この気持ちは彼にとっては戸惑い、不信の対象になり得るかもしれないからだ。
――日下部にとって、俺は信頼している教師の一人……それだけかもしれないからな。
そう思い、そうならば裏切りたくない、と思ったのだ。日下部の笑顔が曇ってほしくない、と時任は心底そう思ったのだ。
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