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第五章:もういいよ
楓_5-1
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一色楓は多くの大人達を前に強い緊張と不安と戦いながら、マイクを握り立っていた。手には汗がにじみ、緊張と不安に飲み込まれてしまうと頭が真っ白になりそうだった。しかし、負けてはいけない――その気持ちの方が強かった。ここまで協力してくれた皆の為にも。
「お騒がせしたことは謝罪します。すみません。ですが、私達が何故、このようなことをしたのかを、聞いて欲しいのです」
一部の教師達は狼狽しているが、今回のことが自作自演でイジメ問題ではないことに安堵しているのか、複雑そうな表情に見えた。大人達はこれで生徒に問題がある、とでも思っているのかもしれない。
「私達がこのようなことをした理由――それは、この記者会見の場を設け、そこで発言をする為です。マスコミ、テレビを見ている視聴者、第三者が多くいるこの場で『真実』を教えて欲しかったからです……桜花学園の教師達に」
その発言で、再び矛先が向いたことを理解した教師達の表情が驚きのものへと変わる。しかし、ここまで話してしまえば、止めること不可能だ。無理に強制終了させてしまえば、マスコミと世間にいらぬ憶測をさせることになり、叩かれるのは明白だ。
「私達が教えて欲しいのは――日下部 葵の自殺についての詳細です」
どより、と周囲が反応する。楓にはその反応を咀嚼する余裕はない。
「新聞にも、ネットニュースにも『桜華学園の生徒が飛び降り自殺をして死亡』、とその一文だけしか書かれていませんでした。そこに嘘はありません。ですが、その一文では納得できないのです」
そこまで話すと、学園長が言葉を差し込んだ。
「あ、あれはただの自殺で――」
「そんな簡単に片付けないでください!」
楓は感情のまま叫んだ。目からは自然と涙が零れていた。それが、悲しみなのか怒りなのか、どの感情が生み出したものなのかは彼女ですら理解できない。
「私達は葵とは仲が良かった。だから、葵が両親のことが大好きで仲が良いことも知ってる。葵には友達が多くて学園生活を楽しんでいたのも知っている――ただ一つの悩みを除いて。それについて、私達は相談を受けていました。だからこそ、あの自殺は決して『ただの』なんて言葉じゃ片付けられない!」
楓は視線を『とある教員』へと向けて、訴えるように叫ぶ。
「葵は――『彼』は何故、『女子生徒の制服を着て自殺』をしたんですか! その理由は……時任先生、貴方しか説明できないはずです! 彼が大好きだった、彼が愛していた、貴方にしかできないはずなんです!」
「お騒がせしたことは謝罪します。すみません。ですが、私達が何故、このようなことをしたのかを、聞いて欲しいのです」
一部の教師達は狼狽しているが、今回のことが自作自演でイジメ問題ではないことに安堵しているのか、複雑そうな表情に見えた。大人達はこれで生徒に問題がある、とでも思っているのかもしれない。
「私達がこのようなことをした理由――それは、この記者会見の場を設け、そこで発言をする為です。マスコミ、テレビを見ている視聴者、第三者が多くいるこの場で『真実』を教えて欲しかったからです……桜花学園の教師達に」
その発言で、再び矛先が向いたことを理解した教師達の表情が驚きのものへと変わる。しかし、ここまで話してしまえば、止めること不可能だ。無理に強制終了させてしまえば、マスコミと世間にいらぬ憶測をさせることになり、叩かれるのは明白だ。
「私達が教えて欲しいのは――日下部 葵の自殺についての詳細です」
どより、と周囲が反応する。楓にはその反応を咀嚼する余裕はない。
「新聞にも、ネットニュースにも『桜華学園の生徒が飛び降り自殺をして死亡』、とその一文だけしか書かれていませんでした。そこに嘘はありません。ですが、その一文では納得できないのです」
そこまで話すと、学園長が言葉を差し込んだ。
「あ、あれはただの自殺で――」
「そんな簡単に片付けないでください!」
楓は感情のまま叫んだ。目からは自然と涙が零れていた。それが、悲しみなのか怒りなのか、どの感情が生み出したものなのかは彼女ですら理解できない。
「私達は葵とは仲が良かった。だから、葵が両親のことが大好きで仲が良いことも知ってる。葵には友達が多くて学園生活を楽しんでいたのも知っている――ただ一つの悩みを除いて。それについて、私達は相談を受けていました。だからこそ、あの自殺は決して『ただの』なんて言葉じゃ片付けられない!」
楓は視線を『とある教員』へと向けて、訴えるように叫ぶ。
「葵は――『彼』は何故、『女子生徒の制服を着て自殺』をしたんですか! その理由は……時任先生、貴方しか説明できないはずです! 彼が大好きだった、彼が愛していた、貴方にしかできないはずなんです!」
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