有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第四章:もういいかい??

反保_4-3

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「結局、駄目でしたね」
 桜花学園の調査も五日目――最終日となった。本日も二組に分かれて放課後に生徒達へヒアリングを行った。反保は虹河原と飛田は我孫子と……の予定だったが、今回だけは昨日の成果の違いから反保は飛田とペアを組んでヒアリングを行ったのだった。
 しかし、結果は芳しくなかった。生徒達は昨日同様にフレンドリーに接してくれるが得られた情報はない。唯一の希望は楓へのヒアリングだったのだが、どうやら欠席らしく、反保と飛田は緊張し損だった。
 そして、放課後まで様々な努力をしたが、駄目だった、という結論に至る。

「これにて桜華学園の調査は終了になります。何か意見はありますか?」
 応接室で虹河原が締めの言葉を話す。反保としてはまだ調査を延期させたいが、始めに虹河原から条件を提示されているので、真っ当な理由がない限りは何を言っても意味はないだろう。彼は無念そうに俯く。

 ――楓さんの件も裏金の件も何一つ上手くいかなかった。クソッ!

 悔しさに彼が歯を食い縛り、拳を強く握ったときだ。

「すみません! 失礼します!」
 解散直前となった応接室に時任がノックもなしに慌てて駆け込んできた。ドン、と大きな音は中にいた全員を驚かせた。
「どうしたんですか?」
「こ、これを――」
 虹河原に問いかけられた時任は息を切らしながら、スマホの画面を四人に見せた。そこには一つの動画が映っている。覗き込むように四人が見ると、そこには――


「死ねよ!」
「うぜぇんだよ!」
「消えろ!」

 流れる音声は罵倒の数々。それを発するのは桜華学園の生徒達だった。全員が祭などで売られているアニメやマンガのキャラクターのお面を着けている。そして、全員で一人の生徒を囲むように物を投げつけたり、暴力を振るっている。
 そのターゲットは――楓だった。


「このイジメ動画がネットに流れている見たいで、すごい勢いでSNSにて拡散されています」
 蒼白した顔面で、助けを求めるように時任は話す。おそらく、この拡散具合では既にマスコミへと届き、職員室に問い合わせの嵐がくるのも時間の問題だろう。
「ネットに流れた以上は消せないので記者会見の準備が遅かれ早かれ必要になるでしょう。学園長に準備をするように伝えてください。警察も助力します」
 虹河原は冷静に指示を出す。
「は、はい!」
 息を整えることもなく時任は応接室を走って出て行く。彼が出て行くと室内は静寂に包まれた。
「日下部という生徒との関係は不明ですが、イジメは学園に存在した――どうやら出直す必要がありそうですね」
 虹河原は大きな溜め息と共に本日の結論を告げた。
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