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第四章:もういいかい??
反保_4-1
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「――という、感じでしたね」
そう話す飛田に、虹河原は少し唸ったあと、
「さすがですね、飛田くん」
と、微笑んで褒めた。
本日の調査報告について情報を交換しているときだ。虹河原の称賛を反保も納得していた。今回の調査はアンケートで「イジメがある」と全員が答えたクラスの生徒達にヒアリングを行った。方法としては、クラスの生徒を無作為に抜粋し、反保と飛田、虹河原と我孫子で数名の生徒へヒアリング。アンケートの回答は全員が同じなので、この方法で問題ないだろう、というが虹河原の提案であり、生徒達へヒアリングについては時任へ事前に連絡をしていた。彼の提案に異を唱える人物はなく、放課後に数名の生徒に残ってもらいヒアリングを実施したのだが……
「まぁ、年の離れたおっさんと難しい顔した奴の相手じゃ萎縮もさせるわな」
我孫子は自嘲しながら虹河原を巻き込む。それを否定しないのは虹河原としても同意する部分があるのだろう。
ヒアリングの結果は二極化した。
虹河原と我孫子がヒアリングを行った生徒達は緊張し、萎縮し、雰囲気も重く、回答も、
「解りません」
「なんとなく」
などの回答か黙秘だった。
一方で状況と結果を説明した反保と飛田のヒアリングは違った。
二人の年齢が生徒達に近いことも要因の一つではあるが、それ以上に飛田のコミュニケーション能力の高さが光った。
飛田と生徒は非常に明るく、楽しく、フレンドリーに会話をし、まるで友人同士のやりとりのような様子は反保も驚き、会話の内容に思わず笑みを零したほどだ。これまでの調査の中でも彼はきっと生徒達としっかりと同じ目線で話してきたのだ、というのが解る。
「晴太くんってさ――」
「晴太くんって警察に見えないよね」
「飛田さんって面白いね」
「反保さんは少し暗いね」
「反保さん真面目だー」
気がつけば飛田は一部の生徒からは晴太と名前呼びされており、その流れで反保もフレンドリーに接して貰えていた。これまでにない経験から戸惑ったのも事実だが。
――ちょっと楽しかったな。
反保は生徒達との会話を振り返るとそう思った。
そして、
――相手をしている生徒達は僕と少ししか年齢は変わらない。だけど、学生で社会経験はほとんどない。やっぱり、大人でも子供でもない複雑な年頃って感じなんだな。
ヒアリングのときに話し、笑い、真剣に考え、悩む生徒達を見て彼はそう思った。自身が経験できなかった『高校生』というものを少し羨ましく思いながら。
一方で、飛田は報告を続けていた。
「和気あいあいとした雰囲気ではありましたが、こちらも「イジメ」に関しての質問では肝心なところで黙秘でした。ごめん、とか少し意味深な態度はありましたけど」
「じゃあ、仲良く話して終わりか?」
我孫子がからかうように言ったが、
「いえ、違います。一部の生徒から興味深い発言がありました」
飛田がそれを遮る。そして、彼は反保に視線を送り、二人は頷いた。その合図によって、次の発言を反保が引き継いだ。
「はい、彼の言う通りです。「イジメ」については黙秘でしたが、一部の生徒から日下部という生徒については――『先生が一番解っている』という回答がありました」
そう話す飛田に、虹河原は少し唸ったあと、
「さすがですね、飛田くん」
と、微笑んで褒めた。
本日の調査報告について情報を交換しているときだ。虹河原の称賛を反保も納得していた。今回の調査はアンケートで「イジメがある」と全員が答えたクラスの生徒達にヒアリングを行った。方法としては、クラスの生徒を無作為に抜粋し、反保と飛田、虹河原と我孫子で数名の生徒へヒアリング。アンケートの回答は全員が同じなので、この方法で問題ないだろう、というが虹河原の提案であり、生徒達へヒアリングについては時任へ事前に連絡をしていた。彼の提案に異を唱える人物はなく、放課後に数名の生徒に残ってもらいヒアリングを実施したのだが……
「まぁ、年の離れたおっさんと難しい顔した奴の相手じゃ萎縮もさせるわな」
我孫子は自嘲しながら虹河原を巻き込む。それを否定しないのは虹河原としても同意する部分があるのだろう。
ヒアリングの結果は二極化した。
虹河原と我孫子がヒアリングを行った生徒達は緊張し、萎縮し、雰囲気も重く、回答も、
「解りません」
「なんとなく」
などの回答か黙秘だった。
一方で状況と結果を説明した反保と飛田のヒアリングは違った。
二人の年齢が生徒達に近いことも要因の一つではあるが、それ以上に飛田のコミュニケーション能力の高さが光った。
飛田と生徒は非常に明るく、楽しく、フレンドリーに会話をし、まるで友人同士のやりとりのような様子は反保も驚き、会話の内容に思わず笑みを零したほどだ。これまでの調査の中でも彼はきっと生徒達としっかりと同じ目線で話してきたのだ、というのが解る。
「晴太くんってさ――」
「晴太くんって警察に見えないよね」
「飛田さんって面白いね」
「反保さんは少し暗いね」
「反保さん真面目だー」
気がつけば飛田は一部の生徒からは晴太と名前呼びされており、その流れで反保もフレンドリーに接して貰えていた。これまでにない経験から戸惑ったのも事実だが。
――ちょっと楽しかったな。
反保は生徒達との会話を振り返るとそう思った。
そして、
――相手をしている生徒達は僕と少ししか年齢は変わらない。だけど、学生で社会経験はほとんどない。やっぱり、大人でも子供でもない複雑な年頃って感じなんだな。
ヒアリングのときに話し、笑い、真剣に考え、悩む生徒達を見て彼はそう思った。自身が経験できなかった『高校生』というものを少し羨ましく思いながら。
一方で、飛田は報告を続けていた。
「和気あいあいとした雰囲気ではありましたが、こちらも「イジメ」に関しての質問では肝心なところで黙秘でした。ごめん、とか少し意味深な態度はありましたけど」
「じゃあ、仲良く話して終わりか?」
我孫子がからかうように言ったが、
「いえ、違います。一部の生徒から興味深い発言がありました」
飛田がそれを遮る。そして、彼は反保に視線を送り、二人は頷いた。その合図によって、次の発言を反保が引き継いだ。
「はい、彼の言う通りです。「イジメ」については黙秘でしたが、一部の生徒から日下部という生徒については――『先生が一番解っている』という回答がありました」
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