有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第四章:もういいかい??

奉日本_4-1

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「いらっしゃいませ」
「どうも」
 ランチタイムが終わった店内に、事前にあった連絡通り有栖が訪れた。
「本日はローストビーフ丼と中華スープです」
「いいですね、肉食べて気合いを入れて、昼以降も仕切り直して頑張ります」
「じゃあ、準備しますね……仕切り直して、ということは進捗は駄目そうですか?」
 奉日本は黒い陶器でできた小ぶりの丼に白米をよそうと、大葉を散らし、赤身が鮮やかな肉を重ねていく。
「調べる場所はまだありますが。現状はイマイチですね」
「ヒントになるかは解りませんが、俺の方でも客に桜華学園の話を聞いたりしてみたんですが……はい、どうぞ」
「どうも。何か気になる情報とかありました?」
 奉日本は頂点に卵黄を乗せたローストビーフ丼と中華スープが乗ったトレイを有栖に渡す。情報の収集については有栖の頼み。そして、楓のことが気になる――という二人の常連の為、という大義名分が一応あるので動いているのだと、彼は自身の行動理由として納得していた。
「ヒントになるかは解りませんが、日下部という生徒を知っていますか?」
「高本さん、どこでその情報を?」
 有栖の箸を止めた様子を見ると、既に彼女がその情報を得ていることは容易に察することができた。
「バーの時間帯に来ていたお客様が桜花学園に通う生徒の親御さんだったみたいで。その方から、その生徒が自殺した、ということを聞きました」
「その通りです」
「やはり、既にご存じでしたか。しかし、随分と『奇妙な自殺』だったそうですね」
「え? 奇妙って――何ですか?」
 ぽかん、とした顔の有栖を見て、奉日本はその反応に一瞬だけ疑問を覚えたが、即座に二人の間に情報の齟齬があることを理解した。
「どうやら情報の擦り合わせが必要のようですね。ですが、とりあえずは――ランチを召し上がってください」
 奉日本は接客サービスである笑顔を有栖に見せて、そう言った。
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