有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第三章:まぁだだよ

奉日本3-1

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「私が知っているのはそれぐらいかなぁ」
「あはは、そうなんですね」
 夜も更け、アルコールによって客の口が饒舌になる頃、奉日本は客と話をしながら仕事をし、情報も集めていた。様々な情報の中には、彼が意図的に桜花学園のことを話題に出し、話を聞いていたりしている。
「じゃあ、また来るね、マスター」
「はい、お待ちしています」
 妖艶な女性が上機嫌に奉日本に手を振って、別れを告げる。彼女には先程、桜華学園について聞いてみた。過去に通っていたらしいが、聞けたのは当時の教員や彼女の青春時代のエピソードぐらいで彼が気になるようなものはなかった。

 ――学園長が警察と繋がっていることやスクールカウンセラーが議員の娘などの裏情報はありますが、これをユースティティアに展開するのは憚れますね。警察に睨まれるようなことは避けたいですし。

 ユースティティアに流す情報はイジメに関してのみ、と奉日本の中で決めていた。それ以上のことを協力するつもりは現在のところはない。
「マスター、さっき桜華学園の話してなかった?」
 グラスを磨いていると、よく一人で飲みに来ているサラリーマンの男性が話しかけてくれた。ウイスキーのハーフロックの為に入れた丸い氷が、その形を崩すぐらいに溶けている。いつもはそこそこのハイペースで様々な種類の酒を飲むのに、今日はずいぶんとゆっくり飲んでいるので、別のところで飲んできたのか既に自身が飲める酒量としては限界まできているだろう。その一杯を飲んだら帰宅かな、と奉日本はそんなことを傍目に見ながら考えていた。
「あぁ、はい。先程の方が卒業生みたいでして」
「へぇ、俺も娘が通ってるんだよ」
「良い学園に通っているんですね。娘さんの将来も有望なのでは?」
「そうだったら良いんだけどね。この前、学園で生徒が自殺したってこともあったからさ、ちょっと心配なんだよ」
「自殺ですか。多感な時期ですから、そのようなことがある、という話を聞くことはありますが……場所が学園、というのは珍しいですし、不穏ですね」
「だよな。しかも、その自殺がさ、ちょっと変だったらしいよ」
「変、ですか」
「あぁ、娘から聞いたんだけど――」
 奉日本はその男性の話を聞くと、
「……なるほど、そうなんですか」
 と、その話に興味を示した。
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