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第二章:もういいかい?
反保_2-4
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反保と虹河原は教えてもらったスクールカウンセラーがいる場所へと向かった。保険室から少し歩いたところに『カウンセリングルーム』と記載された表示札があり、その部屋の前で二人は立ち止まる。
「少し入りにくいですね」
「部外者でそうなら、学生なら尚更かもしれないな」
そんな会話を交わしたあと、ドアに掛かっているボードに『在籍中』という文字を確認すると、反保はノックをした。
「はーい」
ドア越しに少しくぐもった女性の声が聞こえてきた。
「失礼します」
ドアを開けて中に入ると、一人の女性がそこには立っていた。少し長めの黒髪を後ろで結い、小柄で赤い縁の眼鏡を掛けている可愛らしい容姿だ。歳は二十代半ばだろう。
「えっと、どちら様ですか?」
「警察とユースティティアの者です。学園長から連絡はありませんでしたか?」
虹河原の言葉にその女性は少しハッとした表情を見せたあと、
「あっ、そういえば。すみません、自分は関係ないかと思っていました」
「私は虹河原、こちらは反保です。少し話を聞きたいのですが宜しいですか?」
「あっ、はい。私はスクールカウンセラーの百井(ももい)と言います。どうぞ、お掛けになってください」
そう言って、百井は二人を近くにあるソファに座ることを勧め、二人も促されるままに座った。
カウンセリングルームは十畳ぐらいの部屋で二人掛けのソファが二つあり、その間にテーブル、一番奥の窓際にはデスクがありパソコンとモニターが置いてあった。それ以外は特に目立つものはなく、質素な部屋に反保は感じた。
「えっと、どのようなご用件で?」
百井がテーブルを挟んで向かいのソファに座った。
「色々とお話を聞きたいのですが……百井さんはこの学校に赴任して長いのですか?」
まず最初に虹河原が質問をした。若さから経歴の浅さが気になったのだろう。歳が近い分、学生との距離は近いかもしれないが、相談や対応となると経験が重要だと考えているのだろう。学生も、頼りない人物に相談するほど甘くはない。
「私は赴任して五年になります」
「なるほど。この学校が初めての赴任先ですか?」
「そうです」
虹河原は百井のハキハキとした回答を聞き、納得したのか反保の腕を肘で突いた。彼の中では五年も学校に所属している、ということはそれなりの結果を残している、と判断したのだろう。そして、質問する権利を反保に譲った。
「あ、その……ここ最近で学生からイジメに関する相談はありませんでしたか? もしくは、百井さんが実際に見たことがあるかどうかでも構いません」
「ありませんよ。私が赴任してからは一度も」
百井が言うには生徒からは進路相談や愚痴などを聞くことが多いらしい。
――この部屋だとイジメられている当人が入るところを見られると、更にイジメられそうだもんなぁ。
反保は心の中でそう思ったが、
「この部屋では入るところが他の生徒達に見られる可能性がある。イジメられている生徒なら、ここに入ったことを見られると余計にイジメられるのではないか、という心理が働いて、入りにくいでしょう」
虹河原ははっきりと百井に告げた。
「えっと……確かにそうかもしれませんね。その勇気は必要でしょうけど、その一歩を踏み出す手伝いもできれば、と思ってはいまして……」
百井は明らかに困惑した様子で、しどろもどろに答える。その反応は五年も勤めている割には対応力に難があるように思えた。
「あのー、実際に来ることはなくてもオンラインなどで匿名で相談が届いたりはしていませんか?」
反保が百井に助け船を出すように、別の質問をした。しかし、それは彼女にとっては助けにはならなかったようだ。
「えっと、その……」
百井は表情を明らかに曇らせた。それを二人が見逃すはずがない。
「何かあるんですね?」
反保が更にもう一歩踏み込む。百井は更に困った表情で、額にじんわりと浮かんだ汗を拭ったあと、口を開いた。
「えっと、実は――」
「少し入りにくいですね」
「部外者でそうなら、学生なら尚更かもしれないな」
そんな会話を交わしたあと、ドアに掛かっているボードに『在籍中』という文字を確認すると、反保はノックをした。
「はーい」
ドア越しに少しくぐもった女性の声が聞こえてきた。
「失礼します」
ドアを開けて中に入ると、一人の女性がそこには立っていた。少し長めの黒髪を後ろで結い、小柄で赤い縁の眼鏡を掛けている可愛らしい容姿だ。歳は二十代半ばだろう。
「えっと、どちら様ですか?」
「警察とユースティティアの者です。学園長から連絡はありませんでしたか?」
虹河原の言葉にその女性は少しハッとした表情を見せたあと、
「あっ、そういえば。すみません、自分は関係ないかと思っていました」
「私は虹河原、こちらは反保です。少し話を聞きたいのですが宜しいですか?」
「あっ、はい。私はスクールカウンセラーの百井(ももい)と言います。どうぞ、お掛けになってください」
そう言って、百井は二人を近くにあるソファに座ることを勧め、二人も促されるままに座った。
カウンセリングルームは十畳ぐらいの部屋で二人掛けのソファが二つあり、その間にテーブル、一番奥の窓際にはデスクがありパソコンとモニターが置いてあった。それ以外は特に目立つものはなく、質素な部屋に反保は感じた。
「えっと、どのようなご用件で?」
百井がテーブルを挟んで向かいのソファに座った。
「色々とお話を聞きたいのですが……百井さんはこの学校に赴任して長いのですか?」
まず最初に虹河原が質問をした。若さから経歴の浅さが気になったのだろう。歳が近い分、学生との距離は近いかもしれないが、相談や対応となると経験が重要だと考えているのだろう。学生も、頼りない人物に相談するほど甘くはない。
「私は赴任して五年になります」
「なるほど。この学校が初めての赴任先ですか?」
「そうです」
虹河原は百井のハキハキとした回答を聞き、納得したのか反保の腕を肘で突いた。彼の中では五年も学校に所属している、ということはそれなりの結果を残している、と判断したのだろう。そして、質問する権利を反保に譲った。
「あ、その……ここ最近で学生からイジメに関する相談はありませんでしたか? もしくは、百井さんが実際に見たことがあるかどうかでも構いません」
「ありませんよ。私が赴任してからは一度も」
百井が言うには生徒からは進路相談や愚痴などを聞くことが多いらしい。
――この部屋だとイジメられている当人が入るところを見られると、更にイジメられそうだもんなぁ。
反保は心の中でそう思ったが、
「この部屋では入るところが他の生徒達に見られる可能性がある。イジメられている生徒なら、ここに入ったことを見られると余計にイジメられるのではないか、という心理が働いて、入りにくいでしょう」
虹河原ははっきりと百井に告げた。
「えっと……確かにそうかもしれませんね。その勇気は必要でしょうけど、その一歩を踏み出す手伝いもできれば、と思ってはいまして……」
百井は明らかに困惑した様子で、しどろもどろに答える。その反応は五年も勤めている割には対応力に難があるように思えた。
「あのー、実際に来ることはなくてもオンラインなどで匿名で相談が届いたりはしていませんか?」
反保が百井に助け船を出すように、別の質問をした。しかし、それは彼女にとっては助けにはならなかったようだ。
「えっと、その……」
百井は表情を明らかに曇らせた。それを二人が見逃すはずがない。
「何かあるんですね?」
反保が更にもう一歩踏み込む。百井は更に困った表情で、額にじんわりと浮かんだ汗を拭ったあと、口を開いた。
「えっと、実は――」
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