有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第二章:もういいかい?

虹河原_2-4

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「失礼します」
 虹河原と反保は保健室に訪れ、中へと入った。
 扉を開けると薬品の匂いが鼻孔を軽く刺激し、明らかに独特な空間に入ったことが解る。白い部屋の中はベッドが三つ並びスペースの半分を占めており、残り半分とはカーテンで仕切れるようになっていた。残りのスペースは薬品棚とデスクと椅子が数個並んでいる。
「あら? どうも……」
 デスクのある椅子に座っていた白衣の女性が、入って来た虹河原と反保に反応した。四十代半ばぐらいの少し小太りの女性で少し戸惑っているように見えた。
「私達は警察とユースティティアの者です」
「あぁ、そういえば教員の連絡網で何か巡回があるってメールできてたわね。それで、保健室には何の用ですか?」
「少し話を聞きたいのですが、ここでは学生から相談とかありますか? 話せる範囲で良いのですが……特にイジメ関係とか」
「あー、私にはそのような相談はありませんね」
 その女性は少し考えたあと、少し寂しそうな表情を浮かべて続けた。
「少し前はあったんだけどねぇ。今は『私』じゃないわね」
「私じゃないってことは、他に相談するような場所や人がいるんですか?」
 虹河原は女性の含みのある発言を拾い上げる。
「そういう相談は、最近は匿名性の高いオンライン上で専用のサイトにすることが多いの」
「こちらでもそうなんですか?」
「えぇ、そのようなサイトを管轄している専門家がこの学園にはいるのよ。ほら、スクールカウンセラーってやつね」
 虹河原は反保と顔を合わせて、頷く。次へ行く場所に相違はないようだった。
「では、この桜華学園のスクールカウンセラーのいる場所を教えて頂いても宜しいですか?」
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