有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

文字の大きさ
上 下
20 / 82
第二章:もういいかい?

反保_2-2

しおりを挟む
 事前にアポイントをとっていたので、桜華学園の受付での案内はスムーズだった。受付の職員によって反保と我孫子は応接室へと案内され、木材でできた立派な扉が開けられて、入室を促された。二人が応接室へと足を踏み入れると、
「あっ、来た」
 と、聞き覚えのある声が反保の耳に入ると、同時に視界には見覚えのある三人が先客としていた。警察の飛田、虹河原、そして――天使だ。虹河原と飛田は応接室にある二人がけのソファに並んで座り、天使は周囲を見渡していたのか立っていた。ちなみに、反保を見て反応したのは飛田だ。その情報が揃うと、後方で扉の閉まった音がした。
「サイバーフェス以来ですか?」
「あ、はい。まぁ、一応……」
 天使に問われ、飛田が答え、虹河原も一度だけ頷いた。
「どうぞ、ユースティティアの二人も座って下さい」
 天使が笑顔で反保達を虹河原達の対面――正確には高級感と重厚感のある木材で出来たテーブルを挟んで置いてある同じソファへと座るように促す。我孫子が座ったので、反保もワンテンポ遅れて座った。

 応接室は入室した瞬間から解るぐらいに、大事な来客用に作られた部屋、という印象を与えた。六畳ほどの広さで、床には柔らかく、複雑な紋様が描かれた絨毯が敷き詰められている。その上にはニスを何重にも塗って黒光りする木材で出来た家具類が統一されて置かれていた。反保達が座るソファも、腰を下ろしたときに沈んで包み込むような座り心地の良いものだ。このソファも反保達と虹河原達が座る二人用の物以外にも、長方形のテーブルの短辺側に一人用の物が一席ずつ用意されていた。
 そして、その一人用のソファに天使が座る。

 全員が座ると天使が切り出した。
「さて、警察側からは虹河原と飛田が協力します。彼らが選出された理由は、そちらの反保さんとサイバーフェスで一緒に仕事をしたことがあるからです」
「それが何故、理由なんですか?」
 反保は率直な疑問を伝えた。
「一緒に仕事をしたことがある人の方が、捜査もやりやすいでしょう? 警察と一緒に仕事なんて、やりにくいでしょうから……少しでもやりやすい方がいいかと思いまして」
「……えっと、ありがとうございます」
 天使の気づかいに、反保は戸惑いながら礼を言った。その反応に天使はクスクスと笑う。
「対立する組織とはいえ、別に捜査の妨げをしたいわけではありません。この桜華学園で駄目なところ、悪しきところがあれば暴き、正すことが我々の組織がのすべき事――そうでしょう?」
「なるほど、確かにそうですね」
 天使の言葉を聞き、反保は納得する。同時に、対立しているとはいえ警察も治安を守る組織だ。その考えを重視する人もいるのだ、と少し嬉しくも思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

化粧品会社開発サポート部社員の忙しない日常

たぬきち25番
ミステリー
【第6回ホラー・ミステリー小説大賞、奨励賞受賞作品!!】 化粧品会社の開発サポート部の伊月宗近は、鳴滝グループ会長の息子であり、会社の心臓部門である商品開発部の天才にして変人の鳴滝巧に振り回される社畜である。そうしてとうとう伊月は、鳴滝に連れて行かれた場所で、殺人事件に巻き込まれることになってしまったのだった。 ※※このお話はフィクションです。実在の人物、団体などとは、一切関係ありません※※ ※殺人現場の描写や、若干の官能(?)表現(本当に少しですので、その辺りは期待されませんように……)がありますので……保険でR15です。全年齢でもいいかもしれませんが……念のため。 タイトル変更しました~ 旧タイトル:とばっちり社畜探偵 伊月さん

グレイマンションの謎

葉羽
ミステリー
東京の郊外にひっそりと佇む古びた洋館「グレイマンション」。その家には、何代にもわたる名家の歴史と共に、数々の怪奇現象が語り継がれてきた。主人公の神藤葉羽(しんどう はね)は、推理小説を愛する高校生。彼は、ある夏の日、幼馴染の望月彩由美(もちづき あゆみ)と共に、その洋館を訪れることになる。 二人は、グレイマンションにまつわる伝説や噂を確かめるために、館内を探索する。しかし、次第に彼らは奇妙な現象や不気味な出来事に巻き込まれていく。失踪した家族の影がちらつく中、葉羽は自らの推理力を駆使して真相に迫る。果たして、彼らはこの洋館の秘密を解き明かすことができるのか?

幻影のアリア

葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、とある古時計のある屋敷を訪れる。その屋敷では、不可解な事件が頻発しており、葉羽は事件の真相を解き明かすべく、推理を開始する。しかし、屋敷には奇妙な力が渦巻いており、葉羽は次第に現実と幻想の境目が曖昧になっていく。果たして、葉羽は事件の謎を解き明かし、屋敷から無事に脱出できるのか?

ヨハネの傲慢(上) 神の処刑

真波馨
ミステリー
K県立浜市で市議会議員の連続失踪事件が発生し、県警察本部は市議会から極秘依頼を受けて議員たちの護衛を任される。公安課に所属する新宮時也もその一端を担うことになった。謎めいた失踪が、やがて汚職事件や殺人へ発展するとは知る由もなく——。

一話完結のミステリー短編集

緑川 つきあかり
ミステリー
全て一話完結です。 黒猫と白猫と?神の願い あらすじ 不変なき日常を生きる三つの存在。 白猫と黒猫と?神だけが在る空間。 其々の持つ願望が世界を変える。 岐天駅 あらすじ 人はその選択に後悔する その駅に辿り着いた者は皆、絶望する。 どんな道を選んだとしても、正解は無いのだから。

そして503号室だけになった

夜乃 凛
ミステリー
『白き城と黒き砦を血濡れに』。 謎のメッセージが、対を成すホテルである、 『ホテル・ホワイトホテル』と『ホテル・ブラックホテル』に同時に届いた。 メッセージを反映するかのように、ホワイトホテルと、ブラックホテルにて、 殺人事件が発生する。対を成すような、二つの死体。 二つの死体は、同時に発見されたと証言された。 何のために?何故同時に?関係は? 難事件に、二人の探偵が挑む。

処理中です...