有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第一章:この指止まれ

反保_1-2

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「綺麗な学園ですね」
 学園長に案内されながら、校舎と校舎を繋ぐ、渡り廊下で反保は率直な感想を口にした。
 桜華学園は長い伝統があり、広い学園だが、設備や施設に古いものはなく、キラキラと輝いているように見えた。校内で見かける生徒達は男女ともにブレザーで、男子は紺色の上着にグレーのズボン。女子はキャメル色の上着、チェックのスカート。男女で制服の色が違うものの、違和感はなく学園に溶け込んでいる。このときにしか着られない制服に身を包む彼等もまた輝いているように見えた。
「生徒に良い教育をする上で、設備への投資は大事ですからね。そこは重点項目になっています」
 今回、有栖の要望で高等学校の部分を見せてもらっているが、小中高一貫であるこの学園では全てにおいて、同様の投資をしているとのことだった。
 設備には温水プール、人工芝のテニスコート、最新のパソコンが導入されているPCルームなど、ちょっとしたレジャー施設のようだった。校舎も学年ごとに棟があり、フローリングも壁もピカピカだ。
 ある程度見終わった道中で、有栖が聞いた。
「素行、という点ではイジメとかはありませんか?」
「無い、と言いたいところですが……実際は解りません。子供、とはいえ狡猾な考えが出来る子もたくさんいます。私達は上辺で、目に見える範囲では無い、としか回答できません」
 学園長は嘆くように、悲しむように、重たそうな口調だった。本心かもしれないが、言い慣れているようにも感じるので何とも追求がしにくい。また、言っていることも間違っていないように聞こえた。
「なるほど、そうですか」
 有栖がそう答えて、反保の方を見る。彼は小さく首を横に振った。所々でトイレ、と行って離れたり、学園長の見学プランを乱すように予想外の場所や授業を見学させるように要望だしたりしたが、そこでもイジメのような風景を見つけることは出来なかった。
 今日はここらが引き際ではないか、と反保が思ったときだ。
「あー、やっと見つけた。探しましたよ」
 渡り廊下から次の校舎に入ろうとしたとき、後方から声をかけられたので振り返る。
 そこには――おそらく男性が近づいて来ていた。
 このような表現になったのは、一見、その男性がショートカットのボーイッシュな女性にも見えたからだ。
 中肉中背。細い糸目で常に笑顔のような顔が特徴的だ。そして、整った容姿と、細く、すらっとしたスタイルは黒のスーツ姿では、まるでモデルのようだった。
 何やら惹きつけられる――年齢は不明だが何処か妖艶で、目を離せない男性だった。
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