上 下
44 / 86
第四章:旗揚げ記念日

有栖_4-1

しおりを挟む
「いよいよね」
「はい」

 開場時間となり、会場内にお客さんがぞろぞろと入ってきていた。あと一時間後には第一試合が開始となる。ユースティティアも警察も警備の準備と配置が完了している状態だ。特にユースティティアは京の指示により選手とスタッフの動きも確認するようになっている。
 一方で有栖と反保は所定の業務を終え、バックステージにて自由に動けるようになっていた。つまり、ここからが二人にとっては本番だ。

「過去の傾向から興業自体は三時間ぐらいです」
「メインは棚神選手と藤内選手。セミファイナルがハルカ選手とミサゴ選手よね」
「そうですね……この二試合は何回か対戦経験があり、どの試合も時間は三十分前後でした」

 反保がこれまでのデータからその傾向を話してくれる。彼は有栖が何を導きだそうとしているのか理解し、追加の情報を提供する。

「セミファイナル以外の試合は約十分から十五分ぐらいで終わると思います。ただ、入場や退場を含めると前後はあるでしょうけど」
「毒の効果が出始めるのが三十分ぐらい、と考えると一つ前の試合途中で服毒させる。そうすればメインとセミファイナルに関しては事故死に繋がる可能性があるってことね」
「はい。そういった意味では調整はしやすいかもしれません。ですが、他の選手やスタッフも考慮する必要はありますが」
「そうね。そっちは京さんも協力してくれているけど……」
「複数の目ってのは大事ですからね」
「けど、メインとセミファイナルの選手は控え室が一人一室与えられているんだよね?」
「えぇ、他の選手達は所属ユニットごとに共通らしいですけど」
「複数人いる部屋は上手くやらないと毒を盛ることに気づかれたり、怪しまれたりする。それこそ誰に見られているか解らないから」
「人の影に隠れられる利点もありますが……利点もあれば不利な部分もあります」
「個室でも同じよね。誰にも見つからず忍び込めれば確実に成功。忍び込むところを見られるとアウト」
「監視はしやすいですけどね」
「京さんの計らいで複数人の部屋にはユースの隊員が一人以上常駐させてもらってる。こっちも行動に移すのは難しいと思うけど……」

 二人は少し考え、実行の方法が今は思いつかないことを理解すると、

「とりあえず、試合が始まる前に出来ることをしよう。聞き込み、行くよ」
「はい」

 二人は互いに拳を作ってこつん、とぶつけると、それを合図に同時に駆け出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

どんでん返し

あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~ ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが… (「薪」より)

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...