24 / 86
第二章:ファイティングプロレス
反保_2-3
しおりを挟む
「とりあえず今、ファイティングプロレスで中心となっている選手を紹介していきたいと思いますが……」
海野がスマホの画面で何かを確認している。おそらく先程、棚神選手から紹介してもらったアプリだろう。それを見れば、これから誰が、どの施設を使うのが解るのからだ。
「あ、予定が更新されてる」
「え? そうなの?」
海野と中島がスマホの画面を一緒に見ながら、情報を共有しあう。
「丁度良いじゃん。今日、紹介できるか解らない人だったし」
「そうだな。というか、そろそろ――」
二人が会話をしていると、道場のドアが開く。それと同時に彼らはまるで軍隊のように姿勢をピン、と正し、後ろ手に組んで初めて挨拶されてときと同じ体勢になる。
「ハルカさん! チワッス!」
「ハルカさん! チワッス!」
海野と中島が入って来た人物に挨拶をした。
有栖と反保も同じ方向を見る。反保の視線が視界に捉えた人物――その人物の情報は事前にインプットしていた。
ハルカ・カズチカ選手。
短髪は金色に染められ、鋭い目つきに二メートル近い身長はまるでモデルのようだが、その体つきは確かに鍛えられていて分厚い。筋骨隆々、というよりは引き締まっており、その中身に筋肉が詰まっている、という印象だ。
現在は三十代半ばで、ファイティングプロレスのトップ選手の一人。
二十代前半で海外武者修行から帰国し、当時人気絶頂かつ最強と呼ばれていた三十代だった棚神選手に異例の挑戦。結果、誰もが無理だと考えていた棚神選手の撃破を凄まじい実力で成し遂げ、最年少での最強の証明であるベルトを戴冠。その後は何度も棚神選手と激戦を繰り広げ、名勝負数え歌、とも呼ばれている。
今はベルトを巻いていないが、最多防衛記録も樹立し、海外からのオファーもひっきりなしにくる華のある選手だ。
別名は『黄金の雨を降らせる男』だ。これはこのプロレス界を潤わせる、という意味があるらしい。
「海野、中島。その方々は?」
ハルカ選手に問われ、海野と中島は有栖と反保のことを紹介し、今、彼らが与えられている仕事についても説明した。聞き終えたハルカ選手が有栖と反保に近づき、笑顔を見せる。
「初めまして。俺はハルカ・カズチカといいます。旗揚げ記念の警備は大変だと思いますが頑張ってください」
そう言って、握手を求められ二人は順に握手をする。その手は大きく、しっかりとして、エネルギーが伝わってくる気がした。
「では、俺はこのあとトレーニングなので失礼します」
ハルカ選手は一礼し、去っていく。その背中を見ながら、
「映像で見たときはギラギラしていて怖そうな印象だったのになぁ」
反保が呟くと中島がそれを聞いてくすり、と笑う。
「反保さんの言いたいことも解ります。確かにハルカ選手は二十代のときはトップになるという気迫がスゴくてギラギラしていました。けど、今は棚神さんと協力体制を取っていて、それ以降はだいぶ変わりましたね。棚神さんと接する内に団体を背負う覚悟が生まれてきたんだと思います」
「なるほど」
中島の説明を聞きながら、反保はリングの上でロープワークをしているハルカ選手を見つめていた。
海野がスマホの画面で何かを確認している。おそらく先程、棚神選手から紹介してもらったアプリだろう。それを見れば、これから誰が、どの施設を使うのが解るのからだ。
「あ、予定が更新されてる」
「え? そうなの?」
海野と中島がスマホの画面を一緒に見ながら、情報を共有しあう。
「丁度良いじゃん。今日、紹介できるか解らない人だったし」
「そうだな。というか、そろそろ――」
二人が会話をしていると、道場のドアが開く。それと同時に彼らはまるで軍隊のように姿勢をピン、と正し、後ろ手に組んで初めて挨拶されてときと同じ体勢になる。
「ハルカさん! チワッス!」
「ハルカさん! チワッス!」
海野と中島が入って来た人物に挨拶をした。
有栖と反保も同じ方向を見る。反保の視線が視界に捉えた人物――その人物の情報は事前にインプットしていた。
ハルカ・カズチカ選手。
短髪は金色に染められ、鋭い目つきに二メートル近い身長はまるでモデルのようだが、その体つきは確かに鍛えられていて分厚い。筋骨隆々、というよりは引き締まっており、その中身に筋肉が詰まっている、という印象だ。
現在は三十代半ばで、ファイティングプロレスのトップ選手の一人。
二十代前半で海外武者修行から帰国し、当時人気絶頂かつ最強と呼ばれていた三十代だった棚神選手に異例の挑戦。結果、誰もが無理だと考えていた棚神選手の撃破を凄まじい実力で成し遂げ、最年少での最強の証明であるベルトを戴冠。その後は何度も棚神選手と激戦を繰り広げ、名勝負数え歌、とも呼ばれている。
今はベルトを巻いていないが、最多防衛記録も樹立し、海外からのオファーもひっきりなしにくる華のある選手だ。
別名は『黄金の雨を降らせる男』だ。これはこのプロレス界を潤わせる、という意味があるらしい。
「海野、中島。その方々は?」
ハルカ選手に問われ、海野と中島は有栖と反保のことを紹介し、今、彼らが与えられている仕事についても説明した。聞き終えたハルカ選手が有栖と反保に近づき、笑顔を見せる。
「初めまして。俺はハルカ・カズチカといいます。旗揚げ記念の警備は大変だと思いますが頑張ってください」
そう言って、握手を求められ二人は順に握手をする。その手は大きく、しっかりとして、エネルギーが伝わってくる気がした。
「では、俺はこのあとトレーニングなので失礼します」
ハルカ選手は一礼し、去っていく。その背中を見ながら、
「映像で見たときはギラギラしていて怖そうな印象だったのになぁ」
反保が呟くと中島がそれを聞いてくすり、と笑う。
「反保さんの言いたいことも解ります。確かにハルカ選手は二十代のときはトップになるという気迫がスゴくてギラギラしていました。けど、今は棚神さんと協力体制を取っていて、それ以降はだいぶ変わりましたね。棚神さんと接する内に団体を背負う覚悟が生まれてきたんだと思います」
「なるほど」
中島の説明を聞きながら、反保はリングの上でロープワークをしているハルカ選手を見つめていた。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。
『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。
一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。
平等に進む時間
確実に進む時間
そして、決戦のときが訪れる。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
有栖と奉日本『ファントムケースに御用心』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第二話。
少しずつではあるが結果を残し、市民からの信頼を得ていく治安維持組織『ユースティティア』。
『ユースティティア』の所属する有栖は大きな任務を目前に一つの別案件を受け取るが――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『幸福のブラックキャット』
ぴえ
ミステリー
警察と相対する治安維持組織『ユースティティア』に所属する有栖。
彼女は謹慎中に先輩から猫探しの依頼を受ける。
そのことを表と裏社会に通じるカフェ&バーを経営する奉日本に相談するが、猫探しは想定外の展開に繋がって行く――
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
有栖と奉日本『垂涎のハローワールド』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第七話。
全てはここから始まった――
『過去』と『現在』が交錯し、物語は『未来』へと繋がっていく。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる