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第一章:八日前

一色_1-1

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 その日、一色は郊外の喫茶店にいた。そこは彼の普段の行動範囲からは逸れた場所にある喫茶店で、利用するのは初めてだった。
 少し寂れた純喫茶、という雰囲気で木造建築の店内も、そこに設置された同じく木造のテーブルや椅子にも経年変化があり、それが良い雰囲気を創り出していた。
 その一席に一色は座り、注文したホットコーヒーがテーブルの上には置いてあった。彼は残りが半分以下になったそれを口に運んだが、少々時間が経過したので最初の一口ほどの熱さは失われていた。舌に乗ったぬるめの液体はまだ存在を主張するように、香りが鼻へ抜けていく。

 更に、五分ほど経った頃――喫茶店のドアが開き、そこに吊り下げされていたベルがチリン、チリン、と音を鳴らした。
 入って来たのは長身で、緩いパーマを掛けた茶髪の男性だった。スーツ姿にハット、丸いレンズのサングラスを身につけていた。
 その人物は誰かを探すように、きょろきょろと周囲を見渡していた。

 一色は入ってきた彼を見て、『当時』とは違う身なりだがそれも見慣れていたので、迷わず声をかけた。

「おい、真木(まき)。こっちだ」
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