猫奴隷の日常

ハルカ

文字の大きさ
上 下
78 / 192

真夜中の騒動 2

しおりを挟む
「さて」

椅子に座り、足を組んだカイが深いため息をついた。

「オメェにはがっかりしたぜ」
「まさか、ここまでとは思いませんでしたね」

急遽この場に召集されたセバスの声も呆れを含んでいる。レイは二人を交互に見、それから床に転がされている人物を見た。まさに絵に描いたようにぐるぐる巻きにされて、猿轡まで噛まされている。

「ちょっと酷いんじゃない?こんなに縛らなくても・・・」
「レイ。こいつに同情は無用だぜ」
「今回ばかりはカイに賛成ですね。手加減は無用に思います」
「しっかしよー、オメェはもっとお利口さんかと思ってたぜ」

椅子から立ち上がったカイがしゃがみこんで、猿轡の食い込んだ男の頬を無造作に掴む。掴まれた男は、うーうーと苦し気に縛られた体をよじった。

「なぁ?グレン」

名を呼ばれたグレンが、悔しそうに眉を寄せる。

少し前に、レイ達を誘拐した犯人の残党が捕まったらしい。その残党に口を割らせ、とっくに国外へ逃れたと思われていたグレンが、国内に潜伏していることが分かった。
そして、立ちまわりそうな所を何か所か張っていたらしい。エイベルの屋敷はその中の一つで、フェリクスが担当していた。自分を捕まえた人物への報復。あるいは一度誘拐した者達への執着。どちらにしても、ここにやって来る可能性はあったわけだ。
そうして今夜、まんまとお縄になった。

「もう、国外追放でいいんじゃねーか?」
「それか、ヴァイスの時のように魔法で罰を与えるか、ですね。いっそのこと動物にでも変えますか」

なぜか楽しそうにセバスが言う。

「そーだな。そんで庭で放し飼いにすっか」
「馬などいかがですか?」
「馬?いーけど、誰が世話すんだ」
「それはもちろんカイが・・・」
「却下。もっと手ぇかかんないヤツにしようぜ」
「例えば?」
「犬とか、猫とか」
「そうですね。猫にでも変えてもらいますか」
「やった!僕が飼う!」

シュッ! と挙手して訴える。

「・・・待て。可愛がってどーすんだ。レイになんか可愛がらせたら、罰になってねーよ!」
「確かに。それに猫なら、あなたも好きでしょう」
「・・・好きだ。撫でまわして一緒に寝てぇ」
「却下ですね。余計な火種を生みそうです」
「えー!」
「我儘言うなよなー。大体、こいつが猫になったってかわいくなるわけねーから。ちょっとぐらいじゃ納得しねーからなオレは」
「でも、ちょっとブサイクなのもきっとかわいいよ?」
「・・・・いやいや、中身はコイツだから。それを忘れちゃなんねー」
「なにワクワクしてるんですか、あなたも」
「お三人さん」

それまで黙って三人の会話を聞いていたフェリクスが、苦笑して話を遮った。

「盛り上がってる所申し訳ないっすけど、罪人として裁きを受けさせなきゃなんないんで、一度連れて帰ります」

フェリクスが、縛られたグレンの背中を掴んで立たせる。

「おっと、そうでしたね。ではお願いします」

セバスに軽く頭を下げ、フェリクスがグレンを連れたまま裏口へ向かう。レイとカイはその後について行った。

「じゃ、カイさん。また昼間にお邪魔するっす」
「まて」

屋敷の中より一層暗い夜の闇の中へ出て行きかけたフェリクスを、カイが呼び止めた。

「カイさん、なんっすか?」
「リュカ兄」
「・・・。なんすか?」
「・・・が、飯食いに来いって言ってたぜ」
「そっすか」

フェリクスが笑みを浮かべる。その笑みを見て、カイは軽く鼻をならした。

「そんだけだ。じゃーな。害虫駆除ご苦労さん」

腕を組んだカイが、棚に凭れかかる。縛られたグレンが抵抗するように暴れ、フェリクスはそれを腕を捻り上げることで黙らせた。

「そーだ、フェリクス」
「なんすか」
「オメェ、まだ治ってねぇのな。動揺した時笑って誤魔化そうとすんの」
「カイさん」
「別になんも言う気はねーよ。目障りだからソイツさっさと連れてってくれ」

グレンを顎で指して言う。フェリクスは少しの間黙ってカイを見ていたが、そのまま出て行った。

「・・・何かあったの?」
「さーな。どっちにしても、あの顔してる時は問い詰めても吐かねーよ」

裏口の扉をしっかりと施錠してから、カイがこちらを振り返る。

「幽霊の正体も分かったし、もう寝よーぜ」
「うん。一ついい?」
「ンだよ?」
「部屋の前まで送ってね」

呆れたような目で見られた。しかしこれだけは譲れないのだ。再びランプの明かりを頼りに、レイは部屋まで戻った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

僕は性奴隷だけど、御主人様が好き

泡沫の泡
BL
鬼畜ヤンデレ美青年×奴隷色黒美少年。 BL×ファンタジー。 鬼畜、SM表現等のエロスあり。 奴隷として引き取られた少年は、宰相のひとり息子である美青年、ノアにペットとして飼われることとなった。 ひょんなことからノアを愛してしまう少年。 どんな辱めを受けても健気に尽くす少年は、ノアの心を開くことができるのか……

純粋すぎるおもちゃを狂愛

ましましろ
BL
孤児院から引き取られた主人公(ラキ)は新しい里親の下で暮らすことになる。実はラキはご主人様であるイヴァンにお̀も̀ち̀ゃ̀として引き取られていたのだった。 優しさにある恐怖や初めての経験に戸惑う日々が始まる。 毎週月曜日9:00に更新予定。 ※時々休みます。

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

ねねこ
BL
20歳の男がご主人様に飼われペットとなり、体を開発されまくって、複数の男達に調教される話です。 複数表現あり

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

玉縛り玩具ランブル!?~中イキしないと解けない紐~

猫丸
BL
目覚めたら真っ白な部屋で拘束されていた。 こ、これはもしや『セックスしないと出られない部屋』!? ……は?違うの?『中イキしないと解けない紐』!? はぁぁぁぁぁ!?だから、俺のちんこ、しらない男とまとめて縛られてるの!? どちらが先に中イキできるのか『玉ちゃん(主人公)・丸ちゃん(彼氏)vs対馬くん・その彼氏』の熱い戦いの火蓋が切って落とされた!!!! えー、司会進行は『ウサギマスク』がお送りいたします。 ===== ワンライならぬ1.5hライで、お題が「玉縛り」だった時に書いた作品を加筆修正しました。 ゴリッゴリの特殊性癖な上に、ふざけているので「なんでもこーい」な方のみ、自己責任でお願いいたします。 一応ハッピーエンド。10,000字くらいの中に登場人物5人もいるので、「二人のちんこがまとめて縛られてるんだなー」位で、体勢とかもなんとなくふわっとイメージしてお楽しみいただけると嬉しいです。

処理中です...