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真夜中の騒動 2
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「さて」
椅子に座り、足を組んだカイが深いため息をついた。
「オメェにはがっかりしたぜ」
「まさか、ここまでとは思いませんでしたね」
急遽この場に召集されたセバスの声も呆れを含んでいる。レイは二人を交互に見、それから床に転がされている人物を見た。まさに絵に描いたようにぐるぐる巻きにされて、猿轡まで噛まされている。
「ちょっと酷いんじゃない?こんなに縛らなくても・・・」
「レイ。こいつに同情は無用だぜ」
「今回ばかりはカイに賛成ですね。手加減は無用に思います」
「しっかしよー、オメェはもっとお利口さんかと思ってたぜ」
椅子から立ち上がったカイがしゃがみこんで、猿轡の食い込んだ男の頬を無造作に掴む。掴まれた男は、うーうーと苦し気に縛られた体をよじった。
「なぁ?グレン」
名を呼ばれたグレンが、悔しそうに眉を寄せる。
少し前に、レイ達を誘拐した犯人の残党が捕まったらしい。その残党に口を割らせ、とっくに国外へ逃れたと思われていたグレンが、国内に潜伏していることが分かった。
そして、立ちまわりそうな所を何か所か張っていたらしい。エイベルの屋敷はその中の一つで、フェリクスが担当していた。自分を捕まえた人物への報復。あるいは一度誘拐した者達への執着。どちらにしても、ここにやって来る可能性はあったわけだ。
そうして今夜、まんまとお縄になった。
「もう、国外追放でいいんじゃねーか?」
「それか、ヴァイスの時のように魔法で罰を与えるか、ですね。いっそのこと動物にでも変えますか」
なぜか楽しそうにセバスが言う。
「そーだな。そんで庭で放し飼いにすっか」
「馬などいかがですか?」
「馬?いーけど、誰が世話すんだ」
「それはもちろんカイが・・・」
「却下。もっと手ぇかかんないヤツにしようぜ」
「例えば?」
「犬とか、猫とか」
「そうですね。猫にでも変えてもらいますか」
「やった!僕が飼う!」
シュッ! と挙手して訴える。
「・・・待て。可愛がってどーすんだ。レイになんか可愛がらせたら、罰になってねーよ!」
「確かに。それに猫なら、あなたも好きでしょう」
「・・・好きだ。撫でまわして一緒に寝てぇ」
「却下ですね。余計な火種を生みそうです」
「えー!」
「我儘言うなよなー。大体、こいつが猫になったってかわいくなるわけねーから。ちょっとぐらいじゃ納得しねーからなオレは」
「でも、ちょっとブサイクなのもきっとかわいいよ?」
「・・・・いやいや、中身はコイツだから。それを忘れちゃなんねー」
「なにワクワクしてるんですか、あなたも」
「お三人さん」
それまで黙って三人の会話を聞いていたフェリクスが、苦笑して話を遮った。
「盛り上がってる所申し訳ないっすけど、罪人として裁きを受けさせなきゃなんないんで、一度連れて帰ります」
フェリクスが、縛られたグレンの背中を掴んで立たせる。
「おっと、そうでしたね。ではお願いします」
セバスに軽く頭を下げ、フェリクスがグレンを連れたまま裏口へ向かう。レイとカイはその後について行った。
「じゃ、カイさん。また昼間にお邪魔するっす」
「まて」
屋敷の中より一層暗い夜の闇の中へ出て行きかけたフェリクスを、カイが呼び止めた。
「カイさん、なんっすか?」
「リュカ兄」
「・・・。なんすか?」
「・・・が、飯食いに来いって言ってたぜ」
「そっすか」
フェリクスが笑みを浮かべる。その笑みを見て、カイは軽く鼻をならした。
「そんだけだ。じゃーな。害虫駆除ご苦労さん」
腕を組んだカイが、棚に凭れかかる。縛られたグレンが抵抗するように暴れ、フェリクスはそれを腕を捻り上げることで黙らせた。
「そーだ、フェリクス」
「なんすか」
「オメェ、まだ治ってねぇのな。動揺した時笑って誤魔化そうとすんの」
「カイさん」
「別になんも言う気はねーよ。目障りだからソイツさっさと連れてってくれ」
グレンを顎で指して言う。フェリクスは少しの間黙ってカイを見ていたが、そのまま出て行った。
「・・・何かあったの?」
「さーな。どっちにしても、あの顔してる時は問い詰めても吐かねーよ」
裏口の扉をしっかりと施錠してから、カイがこちらを振り返る。
「幽霊の正体も分かったし、もう寝よーぜ」
「うん。一ついい?」
「ンだよ?」
「部屋の前まで送ってね」
呆れたような目で見られた。しかしこれだけは譲れないのだ。再びランプの明かりを頼りに、レイは部屋まで戻った。
椅子に座り、足を組んだカイが深いため息をついた。
「オメェにはがっかりしたぜ」
「まさか、ここまでとは思いませんでしたね」
急遽この場に召集されたセバスの声も呆れを含んでいる。レイは二人を交互に見、それから床に転がされている人物を見た。まさに絵に描いたようにぐるぐる巻きにされて、猿轡まで噛まされている。
「ちょっと酷いんじゃない?こんなに縛らなくても・・・」
「レイ。こいつに同情は無用だぜ」
「今回ばかりはカイに賛成ですね。手加減は無用に思います」
「しっかしよー、オメェはもっとお利口さんかと思ってたぜ」
椅子から立ち上がったカイがしゃがみこんで、猿轡の食い込んだ男の頬を無造作に掴む。掴まれた男は、うーうーと苦し気に縛られた体をよじった。
「なぁ?グレン」
名を呼ばれたグレンが、悔しそうに眉を寄せる。
少し前に、レイ達を誘拐した犯人の残党が捕まったらしい。その残党に口を割らせ、とっくに国外へ逃れたと思われていたグレンが、国内に潜伏していることが分かった。
そして、立ちまわりそうな所を何か所か張っていたらしい。エイベルの屋敷はその中の一つで、フェリクスが担当していた。自分を捕まえた人物への報復。あるいは一度誘拐した者達への執着。どちらにしても、ここにやって来る可能性はあったわけだ。
そうして今夜、まんまとお縄になった。
「もう、国外追放でいいんじゃねーか?」
「それか、ヴァイスの時のように魔法で罰を与えるか、ですね。いっそのこと動物にでも変えますか」
なぜか楽しそうにセバスが言う。
「そーだな。そんで庭で放し飼いにすっか」
「馬などいかがですか?」
「馬?いーけど、誰が世話すんだ」
「それはもちろんカイが・・・」
「却下。もっと手ぇかかんないヤツにしようぜ」
「例えば?」
「犬とか、猫とか」
「そうですね。猫にでも変えてもらいますか」
「やった!僕が飼う!」
シュッ! と挙手して訴える。
「・・・待て。可愛がってどーすんだ。レイになんか可愛がらせたら、罰になってねーよ!」
「確かに。それに猫なら、あなたも好きでしょう」
「・・・好きだ。撫でまわして一緒に寝てぇ」
「却下ですね。余計な火種を生みそうです」
「えー!」
「我儘言うなよなー。大体、こいつが猫になったってかわいくなるわけねーから。ちょっとぐらいじゃ納得しねーからなオレは」
「でも、ちょっとブサイクなのもきっとかわいいよ?」
「・・・・いやいや、中身はコイツだから。それを忘れちゃなんねー」
「なにワクワクしてるんですか、あなたも」
「お三人さん」
それまで黙って三人の会話を聞いていたフェリクスが、苦笑して話を遮った。
「盛り上がってる所申し訳ないっすけど、罪人として裁きを受けさせなきゃなんないんで、一度連れて帰ります」
フェリクスが、縛られたグレンの背中を掴んで立たせる。
「おっと、そうでしたね。ではお願いします」
セバスに軽く頭を下げ、フェリクスがグレンを連れたまま裏口へ向かう。レイとカイはその後について行った。
「じゃ、カイさん。また昼間にお邪魔するっす」
「まて」
屋敷の中より一層暗い夜の闇の中へ出て行きかけたフェリクスを、カイが呼び止めた。
「カイさん、なんっすか?」
「リュカ兄」
「・・・。なんすか?」
「・・・が、飯食いに来いって言ってたぜ」
「そっすか」
フェリクスが笑みを浮かべる。その笑みを見て、カイは軽く鼻をならした。
「そんだけだ。じゃーな。害虫駆除ご苦労さん」
腕を組んだカイが、棚に凭れかかる。縛られたグレンが抵抗するように暴れ、フェリクスはそれを腕を捻り上げることで黙らせた。
「そーだ、フェリクス」
「なんすか」
「オメェ、まだ治ってねぇのな。動揺した時笑って誤魔化そうとすんの」
「カイさん」
「別になんも言う気はねーよ。目障りだからソイツさっさと連れてってくれ」
グレンを顎で指して言う。フェリクスは少しの間黙ってカイを見ていたが、そのまま出て行った。
「・・・何かあったの?」
「さーな。どっちにしても、あの顔してる時は問い詰めても吐かねーよ」
裏口の扉をしっかりと施錠してから、カイがこちらを振り返る。
「幽霊の正体も分かったし、もう寝よーぜ」
「うん。一ついい?」
「ンだよ?」
「部屋の前まで送ってね」
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