猫奴隷の日常

ハルカ

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お仕置きとは

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「・・・なにこれ」

エイベルの寝室で見つけた本を広げ、レイは呆然と呟いていた。



今日は、十数日ぶりに屋敷に帰ってきた。
使用人たちとの夕食を終えたレイは、さっそくエイベルに部屋を訪れていた。
約束したわけではないけれど、夜を二人で過ごすのはもう当たり前のことになっている。

しかしノックをしても応答はなく、覗いた寝室でエイベルはレイを置いて眠ってしまっていた。
疲れているのだろうと思いつつ、レイは落胆してしまった。
大公様のお屋敷で「帰ったらお仕置きする」なんてエイベルが言うものだから、頭の隅にそれがちらついていたせいもある。

レイは仕方なくエイベルの横でシーツに潜ったが、頭を出した先で何か固いものにあたった。

鈍い痛みに頭を押さえ、ぶつかったものを見る。手に取ったそれは、しっかりと装丁のなされた本だった。そして目を見開いた。

『奴隷のしつけ方』

本のタイトル部分にはそう書かれてあった。
あった場所から考えても、エイベルが寝る直前まで読んでいたものだろう。

レイは恐る恐るページをめくり、思わず呟いていた。

「・・・なにこれ」



レイは、生活に必要な文字なら読むことが出来るが、それ以外は難しい。エイベルに教えてもらっているが、仕事の合間を縫ってのことになるのであまりはかどっていない。
かといって、夜は別の理由でもっとはかどらないのでどうしようもない。
まあ、いつかは読めるようになればいい、くらいの感覚で習っているのでいいのだが。

今手元で広げた本も、読めるところと読めない所がある。
しかし、その本には随所にしっかり挿絵が挟まれており、文字が読めなくても大体内容は分かった。
家事や炊事の項目もあるが、あるページでは縛り上げられたり、あるページでは鞭で打たれたりと痛々しい。
レイは本と眠っているエイベルを見比べ、愕然と呟いた。

「もしかして、お仕置きって・・・」

レイとしては、なんとなく普段の夜の延長のようなものを想像していたのだが、もしかして違ったのだろうか?

思わずベッドの周りを確認してしまう。縄とか鞭とかは見当たらない。

「・・・今日は元の部屋で寝ようかな?」

そろそろとベッドを降りようとしたところで突然腕を掴まれ、レイは悲鳴を上げそうになった。

「すまない。寝ていた」

さっきまですっかり眠りこんでいたはずなのに。エイベルは眠気を払うように頭を振ると、レイを見た。
腕を掴んでいた腕が背中に回り、抱きしめられる。この手がレイに酷いことをしてくるとは想像できない。

「エイベル」
「どうした?」
「縛ってもいいよ?」
「・・・は?」
「鞭は、ちょっとこわいんだけど」
「何の話だ?」

本をエイベルに見せる。
エイベルは目を見開き、それから苦笑した。

「そんなことをレイにするはずがないだろう」
「じゃあ、なんで読んでたの?」

エイベルは本をとり、レイには手の届かないサイドテーブルの上に乗せた。

「フィリンで奴隷売買を違法化する動きが出ているらしい。父から聞いてな。過去の資料として読んでいただけだ」
「お仕置きでするつもりなのかと思った」

本気でそう思ったわけではないけれど。摺り寄せた頭を撫でられ、つい甘えるような声が出た。

「痛いことはしない」
「でも、お仕置き、する?」

誘うように見上げると、細められた目と視線が合う。
優しさと意地悪さをその瞳の中に感じ、体の中に熱が灯った。



――――――

「レイ、動いてみろ」
「無理だよぉ・・・」

下から串刺しにされ、それだけでレイはいっぱいいっぱいなのだ。

エイベルの手がレイの腰を掴んでいて、腰を浮かそうとするのを阻まれる。もう一ミリも入らないのに、重力に逆らえずにめり込んでくる亀頭に奥をこじ開けられる。

「ひっ いたくしないっていったのに・・・」
「痛いのか?」
「あっ あっ まってっ」

レイの腰を自在に操る手が、こねるような動きをさせる。
力が入らなくて縋りついたのに、差し出す形になった胸の突起と舐められて、きゅうっと勝手に後ろが締まったのが分かった。

「それに、抱きつけないだろう?」
「な、なにが・・・?」
「腕を縛ったら」

焦点の合わない目で、エイベルの首に回った自分の両腕を見る。

「すきなの? だきつかれるの」
「お前の腕は口よりも素直だからな」

腰を掴んでいた手がレイの頭を撫で、引き寄せて口づける。
お仕置きなんて言いながら、エイベルはいつだってレイを甘やかす。
それに答えたくて、レイは力の入らない体をエイベルの上で一生懸命動かした。
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