104 / 262
クランとしての試練
第104話 一触即発
しおりを挟むニールスは考えた。
今この場でできる最善は何か。
わからない。
では、こちら側の人間が誰も傷つかないようにするにはどうすればいい?
ここは従魔であるフェンリルを前面に押し出すしかないか?
恐らくフェンリルであれば、この場をこちら側の怪我無く乗り切る事は、そう難しくはないだろう。
だがもう少し待てばクーン達がやってくる。
それまで何とか・・・・自分だけであれば何とでもなるが、受付嬢を護りながらとなると、一気に難易度が上がる。
考えている間にも状況は刻一刻と変化。
それも悪い方に。
【どうするのだ?いつでも飛び出す事は出来るぞ。】
現在フェンリルは地中に居る。つまりは隠伏状態。
しかしこの場に現れるとどうなるか?
物理的には床が破損してしまう。
出来れば避けたい。
しかし待ったなしである。
それも今度は味方が。
【シロが来たがこのまま出るとまずいぞ!】
「止めろ!」
思わずニールスは声を出してしまった。
「何だてめえは!おい、かまわねえからやっちまおうぜ!」
声に思わず反応する【一騎当千】のクランメンバー。
ニールスは内心失敗した!と思いながら、いつでも抜刀できるように身構える。
そしてシロとクーンだが・・・・
【何処に出るんだ?】
地脈にのって移動中なので、シロとは念話での意思疎通。
【あの建物であれば問題なかろう。確か魔物を解体する場所は板張りではなかったはずだ。】
あ、そうだ。俺は薬草採取しかしないが、確か奥にある解体場は地面がむき出しだったはず。
【よしシロ、解体場に出ろ!】
【一騎当千】のメンバーが、ニールスに手を出そうとしたその時、
「うわ!」
「ま、魔物が出たぞ!」
「こ、殺される!」
奥が騒がしくなり、受付の奥にある解体場から職員が飛び出してきた。
そしてシロと、シロの背に抱きついたままのクーンがニールスの所に向かってきた。
「ふぇ、フェンリルだと!」
流石はS級クランの代表。
シロを一目見てフェンリルと看破した。
ギルドの職員が止める間もなく、
「奴は一頭だ!仕留めろ!」
あろう事かクラン【一騎当千】の代表がそんな一言を言い放ってしまった。
しかしそれもほんの一瞬の事で、その後に出現した複数のフェンリルに、この場に元々居合わせていた全員が固まってしまった。
何せシロとクーンが飛び出した後から次々とフェンリルがやってきたからだ。
フェンリル同士で既に状況を共有していたようで、ニールスの従魔もこの間に解体場から飛び出したので、都合6体のフェンリルがこの場を支配した。
「か、囲まれた・・・・」
6体のフェンリルに囲まれては分が悪い。
そう察した一騎当千の代表は、
「けっ!帰るぞ。」
そう言われ一騎当千のメンバーは代表の後に従い、出て行った。
若干歩き方がぎこちなかったようだが、誰も気にしていなかった。
この場に残された受付嬢だが、全員失禁してしまい、数人は気絶してしまったようだ。
いち早く気が付いたのがフロリーナ。
彼女は【浄化】を使える。何せフロリーナは聖魔法の使い手。
聖属性には回復の他、こうした浄化などの魔法も使えるのだ。
本来はアンデット相手に使う魔法なのだが、何故か浄化を唱えた対象は綺麗になる。
そこで、
「【浄化】します!」
フロリーナは建物全体に浄化を唱えた。
こうして未然に危機を防ぐ事に成功、受付嬢の危機もばれずに済んだ・・・・はず。
こうして何とか解決したのだが、何とも後味の悪い結末だった。
そして【一騎当千】代表と言えば、
これはどうした事だ?俺は粗相をしてしまったはずだが、なんともないぞ?ばれては・・・・ないな。
そう、彼はフェンリルにビビって漏らしてしまったのだ。
そしてそれを悟られぬよう、あの場を後にしたのだ。
だが、こんな事であれば留まるべきだったか?
いやまて、あの人数では6体ものフェンリルを相手に分が悪すぎる。
これでよかったのだ・・・・だが覚えておけよ!我が【一騎当千】に恥をかかせると言うのがどういう事なのか!!!
こうして一方的に【一騎当千】から恨まれた【以一当千】。
完全にとばっちりである。
3
お気に入りに追加
937
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~
霜月雹花
ファンタジー
17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。
なろうでも掲載しています。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~
夜夢
ファンタジー
数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。
しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。
そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。
これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる