勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず！

外伝 章努の話

最近ゆうしゃさまの様子がおかしいのです その２

　ゆうしゃさまが落ち着き、1ヶ月ほど経ちました。
　最近私がつとむさんと呼ぶと、機嫌がいいのです。
　但し人前ではショー様と呼ぶ事は譲れません。
「つとむさん、個人的にはこうしてつとむさんと呼びますが、今後つとむさんは勇者として活動して頂きますので・・・・その、できれば私と2人っきりの時だけつとむさんと呼びたいのです。できれば大衆の面前ではショー様と呼ぶ事を認めてほしいのですわ。」

　以前は名前だと思っていたショーですが、実は苗字だった事が判明。その後ゆうしゃさまの活躍は目まぐるしく、今後衆目では苗字で呼んだ方がいいと判断したのですわ。
　しかし相変わらず妙な所で頑固ですの。

「くっ！仕方がないから普段は務がいいけれど、何かあった時は章と呼ぶ事を特別に許してあげるわよ！」

　とか意味が分からない返答をするのです。時々？あるのですが、これにどういう意味があるのでしょう。

　・・・・
　・・・
　・・
　・

「何とかスラッシュ！」
「何とか光線！」
「何とか破！」

　最近魔物を討伐する時、最後に意味の分からない言葉と共に、派手な攻撃で魔物を仕留めようとしています。

　何とかスラッシュは、剣による斬撃ですし、何とか光線は腕をクロスさせつつ魔法を放っているだけですし、何とか破は両掌手首で合わせて指を離し、そこから魔法を放つだけなのです。
　それを毎度ながら行っているのです。

　それに飽き足らず、最近では、
「八つ裂き降臨・・！」
　と言いつつ、光の輪を魔法で作り、魔物に投げています。
　降臨？光の輪を魔法で作っただけのようですが、何が降臨するのでしょうか？
　もしかして光の精霊が宿っておられるのでしょうか？
「次は封じ技！ジャーはないか？」
【じゃー】とは何でしょう。

　そして今は剣を手にし、
「何とかの型、云々！」
　と訳の分からない言葉を発し舞い？のような・・・・申し訳ありません、きっと本人は舞っているつもりなのでしょう・・・・剣を振り回していますの。
「つとむさん、それはどういう意味があるのでしょう？」
「意味？見ればわかるダリ・・！」

　申し訳ありません、語尾のダリは何を意味するのでしょう？
　何か本人は気分がいいようなので、そのまま聞き流していますの。
　相変わらずゆうしゃさまは毎日様子が変なのですわ。
　なれ・・・・ませんわ。

　そして最近、ゴーレムを活用しておられるのですが、人型のゴーレムを作成後、四つん這いの状態で魔物に、
「薙ぎ払え！」
　と言いつつ、ゴーレムの口から魔砲を放つ事を目標としているようです。

　更に何やら丸い珠を地面へ投げ、そこからテイムした魔獣をあたかも出現したかのように振る舞い、その後魔物と戦わせています。

　あちらの世界で流行っておられたのでしょうか？

「ピートロネラ、ほれ、でっけえボアを狩ってきたぜ！」
　ゆうしゃさま！そんな風に引きずって運んでは毛が痛みますし、お肉も汚れて駄目になると何度言ったらわかるのでしょうか？

　こうした奇行に目を瞑れば、ゆうしゃさまは大変優れた戦士になりつつあります。
　魔法も得意、むしろ魔法を用いた戦闘が一番良いようで、今もどんどん成長しておりますの。
　奇行さえなければ・・・・