勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず！

外伝 章努の話

バイエンスのおっさんは諦めたくない

　Side　バイエンス及び4人のエルフ
　人間何事も諦めが肝心だ。
　いつまでも無駄な事に時間を費やすより、出来る事を確実にこなした方がいい。

　今まさに、諦めきれていないおっさんがここにいた。
　バイエンス氏である。

【どうしてこうなった！】

　バイエンス氏による心の叫び。
　しかしそれに応えたのは・・・・

「次は私の番。」

　非力そうに見える女性のエルフ。
　然しその実片手で軽々とバイエンス氏は襟首をつかまれ何処かへと引きずられていった。

「頑張って。」
　バイエンス氏を引きずりながら手を振るのはヴァーツラフ、見送っているのはアリツェ、そしてズラトゥシェとスラヴェナ。

　どうしてこうなった！

　バイエンス氏の叫びは何処かへと消えていった。

　・・・・
　・・・
　・・
　・

　ショーが死にかけていたエルフを蘇生して、その影響で意識を失って2日が経った。
　どうやらショーは魔力の枯渇により意識を失い、なかなか魔力の回復が芳しくない事が発覚した。

　逃走中、あれほどエルフ達はショーから魔力を頂戴していたのだが、それでもショーは魔力を回復させていた。
　だが今回、魔力が枯渇してから殆んど回復できていない。
　どうやらショー自身に問題があるらしく、暫く様子を見る事にしていたのだが、
【ごめん、それ僕のせいだね。】

　野良神のノラが原因らしい。
　ショーは限定的とはいえ2人と絆を結んでいた。
　しかしその絆は完全ではなく、ショーの脳内で絆を結んだと認識させて無理やり結んでいるのであって、本当の意味で絆は結ばれていない。
　絆は男女間で行われる。
　同性同士では絆を結ぶ事は絶対にできない。
　不可能なのだ。

　しかしピートロネラは現状身籠る訳にもいかず、本当の意味で絆を結べていない。
　そこでノラである。
　野良は追放されたとはいえ神である。
　神によって絆を結ぶにあたり、ある干渉が行われた。
　つまりショーの脳内に直接働きかけ、ピートロネラとノラ自身に対し、絆を結んでいると認識させているのだ。

　それに下界で実体を持たないノラには、本当の意味でショーと絆は結べない。

　さて、バイエンス氏の現状とノラに、一体何の関係があるのだろうか？

【直接は関係ないよ？彼の意識が、つまり魔力が回復する時間って僕わかるんだよ。だからエルフ達にこのまま彼が目覚めるのを待っていても、離れていても結果は同じだから成すべき事をしておいで、と伝えただけだよ？】

　バイエンス氏は、お前のせいか！と叫んだとか叫ばなかったとか。

　ちなみに4人のエルフは全員全快している。
　むしろ以前より良くなっている。
　そして、ショーから言わせれば強引な奴隷解放と蘇生方法。
　バイエンス氏に奴隷解放を無理やり決行させられる直前に命令をされ、その命令に縛られてしまっていた。
　それを無理やり無かった事にはできないので、結果一時的に生を全うさせ、その後蘇生させる事でバイエンス氏の命令を無効化させる事に成功している。

　残った3人は、
「4人全員が生き残れたのは間違いなくショー様のお陰。恩を返すには彼に直接ではなく、ショー様を支えようとしているバイエンス様と心身共に一体となる事。」
「まだ数日時間はある。」
「ショー様に感謝を！」

　バイエンス氏はどうなった？

　次話もバイエンス氏と4人のエルフが中心予定です。