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外伝  章努の話 

逃走開始

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 バイエンス氏は悩んだ。
 自身の本業は奴隷商であり店を構えている。
 店に向かえば色々手に入る。
 しかし、足が付く。
 だが、ショー殿と今後行動を共にするなら店は諦め、兵士から逃げきるだけの物資を手に入れておかねばならない。
 それにろくでもない商売だったが、店の今後を考えると誰かに任さねばならない。
 物資の事もある、やはり一度戻るか。
「ショー殿、一度私の店へ戻ります。そこで荷物を調達し移動しましょう。」
「なあ、なんでそんな事するんだよ。たぶんあいつ等俺を追っているんだろ。ならここで別れたらあんたは無事だろう。何でだ!」
 ショーは理解できなかった。
 自分の店を切り盛りしているのに、たぶんこいつは店を手放す気だ。
 そこまでして俺を助ける理由がわからない。
 ショーはそう感じ、ますますバイエンス氏の事がわからなくなった。
「ショー殿にはわからないかもしれませんが、私は好きで奴隷商を営んでいる訳ではありません。そして私は変わりたいと常々思っていたのですよ。そして今、ショー殿がきっかけになるのでは、そう感じるのですよ。」
 そう言いつつ可能な限り素早く自身の店へ向かうバイエンス氏。
「待て!そんなに急がなくてもいいじゃねえか!」
「いつ追っ手に追いつかれるか分かりませぬ。可能な限り急がねば!」
 そんな会話をしつつ、気が付けばバイエンス氏の店が目の前に。
「少々お待ち下さい。」
 そう言い残し、店に入るバイエンス氏。
「おい!俺はどうすりゃいいんだよ!」
 これは困った事になったと感じるショー。
 今1人で移動しても恐らく直ぐに先程の兵士達に捕まるだろう。
 仕方がない、待つか。
 ショーはひたすら待った。
 待って待って待ちくたびれ、立ったまま寝てしまった。
 で、気が付けばバイエンス氏が目の前に。
「私の所有している乗り物で移動します。」
 そこにはよくわからんが、前についている動力で引っ張ると思われる乗り物があった。
 車みたいだが、ちょっと違うな。
 なんだこれ。
 そしてショーはバイエンス氏にせかされ、乗る事に。
 バイエンス氏も乗り込んだが、誰が操縦するんだ?
「ご心配なく。国境付近まではこの乗り物で移動いたします。操縦は御者が行います。国境付近へ到達すれば引き返してもらいますので、ご安心を。」
 それにしてもなかなかの荷物だな。
 この乗り物、人と荷物を同時に運ぶようにできているのか?
 しかも荷物の置き方次第で乗っている人がうまく隠れるようになってるじゃねえか。どういう意図でこんな事になってんだ。
「では出発を。」
 気が付けばすんごいスピードで動いてるぞ。
 自動車並みじゃねえの?

 こうしてバイエンス氏とショーは、この町を後にした。
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