勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず！

召喚から５年が経過

第415話 2人を再診する

翌日になり、クサンデル氏とヨランデ女史は何事もなかったかのように食事をとりにやってきました。

前もって朝になったら、城の部屋を借りて少人数での食事をすると連絡をしていたので、秘書さんの案内で連れてきてもらったんです。

そして今部屋にはこの2人と僕、オイヴィだけです。

万が一何か不測の事態が起こるとアルノルト国王をはじめ、アルノルトの姉であるアーダとザーラの身に危険があるかもしれないので、呼んでいません。僕とオイヴィなら、ある程度対応できると思ったのもありますが。

呪いの事もそうですが、この2人、本来の来訪の目的は、滅んだ神聖帝国ロンドロッグの皇族の唯一の生き残り、ピートロネラ皇女の行方の手がかりを求めてやってきたのであって、間違っても僕と決闘するためではありませんでした。

そして解呪したとはいえ、まだ影響があるかもしれませんし、そもそもの呪いは魔王の仕業であれば、まだ何らかの仕掛けがあって、今この会話を聞いているかもしれず、その皇女の行方を魔王が知れば、魔王はその皇女の命を狙うかもしれず、うかつに喋れません。尤も行方は全く知りませんし、そもそも僕はその皇女様に会った事がなく、その存在自体つい先日まで知らなかったぐらいですから。

しかしクサンデル氏は執拗に聞いてきます。
「この”ろんぱーす”が手がかりなのか？」

「それに関してはもう暫く待ってくれませんか？食事が終わり、オイヴィの確認が済んでからお話ししますから。」

「致し方ない。ではオイヴィ、頼む。」

食事もそこそこに、クサンデル氏は立ち上がり、オイヴィの所へ。

「クサンデル殿、食事は残さず食べるが宜しかろう。」

「む、そうだな。俺とした事が焦ってしまったようだ。」

そう言いつつ席に戻り、食事を続けるクサンデル氏。
一方のヨランデ女史はものすごい勢いで食べています。

いや、彼女の細い体の何処に入っていくのかという、そんなすごい量なのですが。

「おかわり！」

音もなく秘書さんが部屋に入り、お代わりを運んでくれます。
本来ならい侍女やメイドさんの仕事なのですが、事情が事情なので、全て秘書さんがやってくれています。

暫くしてクサンデル氏が食事を終え、
「もういいだろう。これ位にしておけ。」

「ええ？まだお腹いっぱいじゃないよ！」

「話の後にしろ。」

結局彼女一人で他の3人分より多く食べたとかどんなに凄い胃袋なのでしょう？

まあ今はどうでもいいです。

オイヴィが念入りに呪われていないか調べていますが、どうやら問題ないようです。


後一応、魔道具で結界を張っておきます。
万が一話を聞かれても困りますから。


で、早速ロンパースの追求が。

「そのロンパースですが、僕達の住んでいた日本から持ち込まれたものですが、僕はこれを持ち込んだ人物に心当たりがありません。」

「つまりどういう事なのだ？」

「僕達と一緒に転移させられた人物の中に、このようなロンパースを持ち歩いていた人物はいなかった、という事です。尤も転移者の中には家族にそのロンパースを着せる子供がいたかもしれませんから、もしかして持ち歩いていた、あるいは荷物に紛れ込んでいた可能性は否定できませんが、恐らくそれはなかったでしょう。」

「で、何が言いたい？」

「僕らの前に、あなた方の国の皇女様は、召喚を行ったとか。その時に召喚された人物が持ち込んだのではないかと考えているんですよ。」

「何が言いたい？」

「皇女様はが召喚した召喚者、どういう理由か知りませんが追放されたとか。そしてその召喚者を皇女様は追いかけ、国を出たとか。もしその召喚者と皇女様が合流し、行動を共にしていたら？もしそうであれば、そのロンパースのでどこ付近にその2人は立ち寄ったか、住んでいるのではないでしょうか。」

そんな単純な話ならいいんですけどね。
そもそも何でロンパースを持ち込んだのか不明ですし、その召喚者は一人だけで召喚されたのか、それともこのロンパースを着ていた幼児と共に召喚されたのか、それもわかりません。
オイヴィから聞いた話だと、神聖騎士は誰もその召喚者を直接見ていないらしいですし。