上 下
396 / 735
召喚から5年が経過

第396話 ヨランデ・ピーテルス

しおりを挟む
僕はザーラの姿を見て、違和感を感じます。

子供は走って先に向かっていきます。

そんな子供を追いかけるでもなく、ゆっくり進むザーラ。

そんな僕を見てオイヴィも何かを感じたのか、僕との距離を取り始めます。

目の前には確かにザーラがいます。
ですが何かおかしい。

僕は自分の能力を封じているアイテムを取り外します。
スキルの自動発動を避ける目的で取り付けています。
正確には封じているのではなく、制御しています。
完全に封じるのでなく、並行世界の時の自分の状態とほぼ同じようにするためです。

ザーラが止まります。

僕は腰に下げた剣を抜きます。
「君は誰だい?」
「私?私はザーラよ?どうしたの、剣なんか抜いちゃって。」
この頃にはオイヴィも剣を抜いて、目の前のザーラを警戒しています。

「もう一度聞く。君は何者かな?」

すると目の前の女性が、

「よくわかりましたね?完璧だと思ったのですが、どうしてわかったのかしら?」

あっさり認めたようです。

「それは言えないけれど、違和感を感じたからね。」

「まあ、流石ですね。ザーラ殿が公爵様をほめちぎっていたのがよくわかります。あ、ザーラ殿は無事ですからね。ちょうど今こちらに来るようですし。」

そう言う女性の言うとおり、ザーラがやってきます。

「言ったとおりでしょ?」

「確かに。完璧だと思いましたのに、流石ですね!」

そう言いつつ、何か腕から取り外しています。

すると、目の前の女性違う姿となり、そこには全く知らない女性の姿があります。

「初めまして常山公爵様、私ヨランデ・ピーテルスと申します。オイヴィ、久しぶりですね。」

「ヨランデ殿、ご無沙汰しております。」

「ええと、貴女は神聖騎士ですか?」

オイヴィが知っているようなので、しかもオイヴィが剣を下げたので、僕も剣を下げます。

「ええ、そうですわ。そして騙すような事をしてしまい、誠に申し訳なく思います。兄はこんな試すような事は止めておけと申しましたが、あの魔王を退けるほどの実力の持ち主、興味があるじゃないですか。」

一体何の興味がとか突っ込みたくなりますが、目の前のこの女性の事が全く分かりません。
もう少し詮索したかったのですが、本物のザーラが、
「もういいでしょ、さ、客間に会談の場を設けてるから、向かいましょ?」

あれは確かに本物のザーラだ。
そしてオイヴィは何か言いたげな表情ですが、こらえている様です。

知り合いに数年ぶりに会ったはずで、しかも同姓。色々話もしたいでしょうが、まあそれは後回しにしてもらいましょう。

「さっきのは詰めが甘かったわ。私、あのように子供と接する事はないのよ。」

この国の王族は、自分の子供が小さいうちは、殆ど子供と顔を合わせないらしいです。
このあたりの感覚、僕には理解できません。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...