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常山公爵

310話 Side オイヴィ・ラハテラ  その3

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「何故だ・・・・どうしたら・・・・」

私は信じられない事だが、目の前のこの男に、随分興奮してしまったようだ。
気が付けばテーブルに手をたたきつけるようにバンッ!っと手を打ち付けてしまった。
後から思えば、何故このような事をしてしまったのか不思議でならない。

しかしここで私の予想の斜め上をいく出来事が。

このテーブルを強くたたき過ぎたのか、なんと壊れてしまったのだ。
脚が・・・・折れたのか?
常山と名乗る側の脚が2本共に壊れ、私はそのままこの男の方に突進する形で前のめりに倒れてしまった。
まさかこのような事になろうとは思っても居なかったせいで、信じられない速度で目の前に突っ込んでいった。
「きゃっ!」

自分でも信じられないぐらい間抜けな声が出たのだろう。
そしてあろう事か、この領主と名乗る常山という男に抱きかかえられる形で受け止めてもらってしまったではないか。
何て事だ・・・・この私が信じられない無様な姿を晒し・・・・しかも助けてもらっただと!
しかもしかも男に抱かれてしまうとか信じられぬ。

「あ・・・・うわ・・・・男の人に抱かれた・・・・」

駄目だ何も考えられぬ。
「け・・・・怪我はないかい?」

心配そうに聞いてくれるな。
我が情けなくなってしまうではないか!
「あ・・・・いや・・・・大丈夫ではない・・・・」
思わずそう言ってしまった。精神的にはもう、これ以上ないぐらい混乱している。
そして自身が何を口走ったか、後で思うと気が付いていなかった私はなんて恥ずかしいのだろう。
「怪我した?ちょっと横になって。」

これはいかん、何か勘違いをしているようだ。
「いや、そう言う意味ではないのだ・・・・」
「でも大丈夫ではないのでしょう?調べますからソファで申し訳ないですが。」
我は男に抱きかかえられ、緊張のあまり身動きが取れないのだ。
指一本すら動かせぬとは何たる不覚!
「頭を打ったんだね?下手に動くと悪化するから、そのまま動かないで。」
いや打ってないし!
だが何故もこうもこの男のなすがままにされているのだ私は。動け我の身体よ!だが動かぬ!
きっと相当焦ったのだろう。体中から変な汗が噴き出るのが分かる。
こんな事は未だかつてなかった事だ。
魔王との戦いで、何もできなかったとはいえ、死に瀕していた時ですらこのような事にはならなかったというのに!ひょっとしてこの男も魔眼持ちか!

「ちょっと待って、今回復させるから、すぐ治るから!」
行かん!この男に勘違いをさせてしまっているではないか!

「あ・・・・いや・・・・そういう訳では・・・・」
そう声を出したと思うのだが、上手く喋る事ができていない。

「しゃべっちゃダメだ!エリクサーで治ればいいけど・・・・脳にダメージある場合治るのか?」

エリクサー!
この男、エリクサーを所持しているのか?しかもそのような貴重な薬を今この状態の我に使うだと!
いや駄目だ、そのような事にそのような貴重な薬を使うなど!
「ああ!痙攣?痙攣しそう?まって・・・・あった・・・・の・・・・飲めるかい?」
いかん・・・・痙攣しそうだ!動け我よ!
だが動かぬ!
そして・・・・この男、何をしようとしておるのだ!顔が顔が近付いてくる!

そしてエリクサーが入っている容器を口に押し付けてきたが、我は全力で抗った!だが、

「エリクサーだから!すぐ効くから!ああ!スプレーがあったんだ!これで・・・・!」
すぷれー?何だそれは?
見ると別の容器のエリクサーか?そこから霧が噴き出て、我に掛けているではないか!やめてくれ!
見ると今度はその男、口にエリクサーを含め・・・・いや待て!口移しか!駄目だ!
だが・・・・我は受け入れてしまった。
はじめての口づけ。
この男は我を妻にするつもりなのか?そしてそれを我は受け入れてしまった。

「それエリクサーだから・・・・飲んで下さい!言葉が理解できてますか?もしかして意識も混濁しています?」
我は・・・・飲んだ、この液体を。そして・・・・泣いた。
まさかこんな女を妻にしようなどという物好きが存在しようとは!

「ごめんねごめんね、僕がこんな所に連れてこなければこんな事には・・・・何かあれば一生責任を取るから!不自由させないから!だから・・・・治って!!」

どうしようもないこの気持ちに我は・・・・ここで意識を手放してしまった。



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