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第一章

こんな展開予想してなかったんですけど?(微☆)

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「おいおいおいおいっ!お前なにやってくれてんだよ、うちの弟に!?」

抱きしめられた状態のままパニックになってしまいあわあわとしていた僕はそんな声と共にグイッと横から腕を引かれて強引に引きはがされてしまう。やったのは、僕の二番目の兄さんであるラクロだった。

「ら、ラクロ兄さん……?」
「んだよ、ラクロ。邪魔すんな」
「うわっ!?」

と思ったら不機嫌な言葉と共に僕は再びレディオの腕の中に引き戻されてしまう。

「呼び捨て!?俺はお前の先輩で初対面ですけど!?」
「わわっ!?」
「あれ?そーだったけ?ってか、んな細かいことはどーでもいいんだよ」
「うわわっ!?」
「ぜんっぜん細かくないだろうが!しかも人の弟に不埒な事しておいてなんなんだお前は!?」
「あわわっ!?」
「不埒なことなんかしてませーん。愛の抱擁してんだよ」
「あっ、愛って!?」
「愛の抱擁!?お前と弟も初対面だろうが!ストーカーか!?ストーカーでもしてたのか!?」

いやいやいや、ちょっと待ってくれ!
色々と突っ込みたいところは多々あるんだけれども!
さっきから僕のことを引っ張り合って会話するのやめてくれないかな!?

腹立たしいことに二人とも僕より背が高いから、こうして引っ張り合われていると僕達の先祖の時代にはやった囚われた宇宙人みたいになっていて大変不満なんだが。レディオは本当に何を言っているのか分からないし、ラクロ兄さんも何をそんなにむきになっているのか。確かに以前でも二人は結構意見の衝突して喧嘩し合いながらも友情を育んでいたけれども。というかラクロ兄さんが此処で出て来る予定もなかったはずなんだけれどな。此処でやり合うのは僕とレディオだったはずで。僕が何もしなかったから、代わりに兄さんが出てきたのだろうかと思ったけれど、もとより抱きしめられている相手じたいアンネル君じゃなくて僕になっているのがイレギュラーな展開だからな。本当によく分からない。あまりに急な展開過ぎて、抱きしめられていたという事実に対して胸を高鳴らせている余裕もない。

というか、とりあえずこの取り合いみたいな状況から解放して欲しいんだけどな!?
なんか引っ張られ過ぎて頭くらくらしてきたし!

なんて思っていたら、僕達の背後から救いの声が聞こえてきた。

「ちょっと二人ともいい加減にしなよ!リオネル君が困ってるだろ!?」
「リヒト」
「姫ちゃん」
「ラクロ先輩、その呼び方はやめてくださいって何度も言ってますよね?というか、レディオも折角久しぶりの再会をした幼馴染みの僕には何もないわけ?」

声をかけてきたのはアンネル君で、そう言ってレディオの前で不満げに頬を膨らませる姿はやはり愛らしく天使のようだと、もうなんとも思っていない今でさえも見惚れてしまう。やっぱり僕とは全然住む世界の違う人間だよな。

「ああ、はいはい。久しぶりだな、リヒト。会いたかったぜ」
「何、そのいい加減ないい方はもー」

なんて言い合う姿も気心が知れていて、二人の間には二人にしか分からない空気が流れているのだなと実感する。とりあえずアンネル君のおかげで解放された僕は、このまま後ろに下がってモブの位置に戻ろうとしたんだけれど、何故か次の瞬間にはしっかりとレディオに腕を掴まれ。

「ちゃんと会いたかったのは事実だからいいだろ。ってことで、俺はこいつに用があるからもらってくな」

との言葉と同時に僕の体は気がつけばレディオの肩に担がれていた。

「ちょっ!レディオ・ローエン!?」
「んじゃ、そういうことで」

慌てる僕を他所にレディオは正門前を駆け出していく。あとに残されたのは、呆然と立ち尽くした兄さん達。背後からラクロ兄さんの。

「ああっ!?うちのリオが拉致されたあああああ!?」

なんて言う叫び声が聞こえてきた時には既に僕達の姿は遥か遠くにあったわけだけれど。そのままレディオはいくら僕が降ろせと訴えても聞く耳を持たず、どこへ連れて行く気なのか問いかけても無言のままで、施設の前などを走り抜け最終的に辿り着いたのは宿舎内にある僕の部屋だった。

「うわっ!?」

部屋に入るなりベッドの上に放り投げるように降ろされた僕は抗議するために顔をあげるも、その先にはすぐに整い過ぎたレディオの顔があって言葉を失ってしまう。

近い近い近い近いっ!
超美形のドアップは迫力があって怖いんだよ!
しかもなんか真顔で怒ってるし、目が笑ってないんだ目が。

でも、凄い綺麗な赤色してるんだよな、こいつの目。なんていうんだったかな、真紅色っていうのか。凄く綺麗で引き込まれる澄んだ赤色。レディオの気の強さとか意志の強さを表現していて本当によく似合ってる。こいつのためにあるんじゃないかって思えるような赤色。やっぱり本当に綺麗で一番好きな色だな。なんて考えて暢気に見惚れていたその直後。

「んっ!?」

整ったレディオの顔が一気に近づいてきたかと思えば、次の瞬間には僕の唇は彼の唇によって塞がれ、そのままベッドの上に押し倒されていたんだ。

「んっ…んんっ…!?」

突然のことで何が起こっているのかよく理解ができない。なんだこの状況は。一体何がどうなっているんだ。左手は手首を掴まれしっかりとベッドに縫い付けられた態勢で、混乱の余りうまく働かない頭を必死に働かせて、漸く今の僕はベッドに押し倒される状態でキスされているのだと理解する。なるほど、そうか。僕はいまキスされているのか。

って、キス!?
なんで僕がレディオに!?

なんて驚きの余り目を白黒させていたけれど、強引に舌を侵入されて舌をからめとられる深い口づけへと変わっていくのに、流石に焦りを感じてあいている右手で覆いかぶさっている胸元を力を込めて押し放そうと抵抗するも、いくら力を入れても微動だにせず逆に手首をとられて左手同様にベッドの上に縫い付けられてしまえば、僕にはもう抗う術もなくて。

「んっ……やっ…んんっ……」

ただただ巧みな彼の舌遣いに成す術もないまま、噛みつくような激しいキスに翻弄されるしかない。だって、こんなキスされたことなんてモブである僕があるはずもないじゃないか。容姿だって平凡でモテるような容姿していないのも自覚済みなんだ。こんな全てを食らいつくされてしまうようなキスなんてしたこともされたこともあるはずがないんだから。

しかも、相手はあのレディオ・ローエンだぞ。
有り得ないのに、彼が僕のこんな事するなんて。

どうしてと考えたくても何だか頭がクラクラしていてうまく考えられない。なんと言ったらいいのか体中が甘い痺れのような感覚襲われているし、キスの合間にこぼれて自分の鼻にかかった甘ったるい声が聞こえてきて消えてしまいたいぐらいに恥ずかしくて仕方ない。けれど、嫌だとは思えなかった。恥ずかしいから早く解放して欲しいし逃れたいのに、キスされているのは嫌だなんて思えなくてもう少しだけこの感覚を味わいたいと思う僕もどこかにいて。

だって仕方ないじゃないか。
理由なんて分からないけれど、心から愛している人に。
心底惚れ込んでいる相手にキスされてるんだから。
驚きはしたものの嫌だと思うわけも拒めるわけもないんだ。

「ん……ふぁっ…」

そんなことを考えていれば僕の抵抗がなくなったのをいいことに、思う存分に堪能したのか漸く唇が離れていく頃には、離れることが名残り惜しくてつい目は彼の唇を負ってしまっていたのだけれど。そんな僕の行動に機嫌をよくしたのか彼の唇は大きく弧を描いていた。

「すげぇいい顔するな。凄くそそられる」
「そ、そそられって…、じゃなくて……な、なんで、こんな……」

解放されても僕の体に熱を持ったままの状態で、荒くなる呼吸を必死に整えながら問いかければ、レディオはまた何かを思い出したのはむすっとした表情になって口を開いた。

「お前が悪い」
「な、なんで僕が…!?僕は何もしてないじゃないか!第一僕達は初対面」
「じゃない」
「……え?」

僕の言葉を遮るように告げられた言葉に、思わずきょとんとしてしまう。

「初対面じゃないだろ。本当はお前だってわかってるんじゃないのか?なあ、リオネル」
「な、何を……?」
「お前だって持ってんだろ?巻き戻る前の記憶を」
「っ!?」

その言葉に僕は息を飲んで大きく目を見開いた。
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