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第二章

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それにいい加減俺の態度にラルフも愛想をつかしてしまっているのではないかとの不安も感じていたから、俺がルイスに言い寄る姿を見るたびにラルフがショックを受けて悔しそうに憎そうにルイスを睨んでいる姿を見て、ああ、まだラルフの心は俺の元にちゃんとあるというのを実感して安心していたんだ。また悲しみからか微かに潤んだ瞳で切なげな表情で俺を見つめているのも煽情的で。いつの間にかそんなラルフが見たくてルイスに言い寄るようになっていた。このままでは駄目だと言っても、もう止められなかったんだ。

それでも結婚式までの我慢だからと。結婚式を迎えたら全てをラルフに打ち明けて俺が愛しているのはお前一人だけなんだと伝えて、甘い夜を過ごすんだとそれだけを励みにしていた。けれど。

なにも知らないまま冷たくされていたラルフの気持ちが変わらずにいてくれるなんて、どうして本気で思ってしまったのか。

その結果が、結婚式ももう間近という時にラルフからの婚約解消の申し出というものだとは。

「待ってください、父上!納得ができません!どうかもう一度俺にラルフと二人で話す機会を与えてください、お願いします!話せばきっとわかってくれるはずです!」

俺の必死の訴えに、父上とサラディン父上は揃って悲しげな表情を浮かべた。

「残念だが。それは無理なのだ」
「何故ですか!?」
「ラルフはもうこの国にはおらん」
「……え?」

ラルフが、もうこの国にはいない?

「どういう、ことですか?」
「フェイル殿の話では、ラルフは酷くつかれて傷ついているようでな。もうこの国にはいたくないと。どこか別の国に行って、心を休めつつ新しい出会いを求めたいと言っていたらしくてな。どこか他国へと旅立ってしまっているのだ。もう三日ほど前に」

唐突に告げられた事実に、俺は衝撃の余り絶句してしまい放つ言葉も失ってしまっていた。

ラルフは、もういない?
この国のどこにも?
俺に何も言わず、どこぞと知れない国へ行ってしまった?
俺以外の相手との新しい出会いを求めて?

駄目だ。
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。
そんなのは絶対に駄目だ。
そんなことは許されない。

だって、だってそうだろう?
ラルフは俺のものなのに。
俺達は確かに愛し合っていたのに。

なのに、俺に黙って姿を消した挙句俺の知らない誰かと出会い、その知らない相手と愛し合うようになるのか。そんなこと、そんなことは駄目だ。許せない。許されるわけがない。どれだけ身勝手だと言われようと、誰で許そうと俺が絶対に許さない。何故なら俺は今この瞬間にだってこんなにもラルフのことを愛していると実感しているのだから。
それを知りもしないまま俺を捨てて、勝手に他の誰かと幸せになるなんて絶対に許すことは出来ないし、耐えられない。そう、絶対に認められない。例え、今回の事は俺が全面的に悪いのだと分かっていても、どうしたってラルフを他の奴に渡すなんてことは出来はしないのだから。

愛してる。
愛してるんだ、狂おしいぐらいに。
だから、ラルフ。
俺はお前を絶対に逃がさない。
どこに逃げようと、地の果てまででも追いかけて、必ず捕まえる。

そして、その時こそ、その全てを俺のものにしてやる。

だから、待っていてくれ。
俺の愛しいラルフ。



「ぶえっくしゅん、はっくしょん!ううー…っ。やっは風邪かな?」
「それか今頃王都でどなたかがラルフ坊ちゃまの噂話でもしているのかもしれませんよ。もう三日も経ちますしね」
「はは、そんなことないだろ。まさかそんな誰が嫌われ者の俺の噂話するっていうんだよ。………まさか、なあ?」
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