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第二章

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だから俺は出来るだけラルフに近づかないように距離を置こうと決めたんだ。側に居ればどうしたって我慢できなくて、思う存分愛してしまいそうだったから。そうなったら婚約破棄されると分かっているから、絶対に手は出せないし。それならいっそ距離を置いて突き放した方がましだと。何も知らないラルフのことは悲しませてしまうかもしれないけれど、俺のこの思考と欲求はどうやら普通とは違うというのが理解できる程には俺も大人にはなっていたから。

「普通と違うというよりも、はっきり言って変態ですけれどね」

なんて双子の弟のアルムレディンには言われたことがあったけれど、聞かせないことにしておいた。とりあえずこんな欲求と思考を持っているとラルフに知れたら、惹かれてしまうかもしれない。あんなに愛してくれているのに、嫌われてしまうかもしれない。それだけは絶対に嫌だった。

ラルフに俺から離れていかれるのだけは絶対に嫌だ。
だって、ラルフは俺のものなのに。
俺達はちゃんとお互いに愛し合っているのに。

こんなことでラルフの気持ちが俺から離れて、俺が約束を守っていてもラルフの方から婚約破棄を言い渡されたらと思うと恐ろしくて理由も話せないままにラルフのことを避けだしたのは学院に入る二年ほど前のことだった。元々俺は第一王子として学ばなければならないこと、やらなければならないことなどが多くあり、それらを疎かには出来ないためラルフとは暫く文通のようなやり取りをしていたが、それも打ち切った。

社交パーティーであっても二言三言話すだけで離れたし、俺の気持ちが自分から遠ざかっていると思い始めたのだろう不安になったラルフが会いに来てくれてもほとんど会うこともなかった。そのたびに悲しそうに打ちひしがれて帰っていく後姿を見て、今すぐにでも駆け寄っていって抱きしめたい衝動に何度駆られたことか。けれど、そうして触れることさえ俺には禁じられていたからどうにもならなくて。何も知らないラルフの方が苦しく悲しい思いをしただろうが、俺だって苦しいのは苦しかったんだ。

まあ、避けても避けても会いに来てくれるラルフが可愛いとか、俺に嫌われたのではと不安そうな表情で様子を窺う姿がまた可愛くて来る者があるなとか思っていなかったと言えば、嘘にはなるが。本当は避けたくないのに避けなければならない。触れたくてたまらないのに触れられないから。それも結婚して初夜を迎えるまでの我慢だと、解禁されたら思う存分愛して可愛がるんだと自分自身に言い聞かせて我慢していたんだ。

気がつけば俺はラルフ不足で病みそうになっていた。それが丁度、学院にラルフ達が入ってきた時が絶好調の状態になっていて。ラルフに触れたくて触れたくて仕方なくて、でも一度触れたら絶対に最後まで止まらない自身も確信もあったから触れられなくて。どうしようもない状況に陥っていた俺はいつの間にか、ルイスの姿がラルフに重なって見えるようになっていた。

勿論、ルイスは容姿は瓜二つだがラルフとは全く違う。俺のラルフとは似ていなるものであったし、触れたいとも愛しいとも何とも思わなかったが、ルイスと話をしているとラルフと話をしているように思えてしまって、満たされてしまっていたんだ。というよりはルイスをルイスではなくラルフに見ていたと言ったほうが正しいのだろう。俺はルイスのラルフの幻覚を重ねて、本当ならばラルフに贈りたい愛の言葉も甘い囁きも全てルイスに送っていた。でも相手はルイスだから、触れたくなったり押し倒したくなったりすることもなくて、行き場のない思いを消化するには丁度良かったんだ。
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