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第二章

絶対に逃がさない(グレイシス視点)1

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俺、グレイシスが、その話を父上であるアルゼンシア王国現国王ラディウスから聞いたのは、ラルフが国を出たとされてから三日後の話だった。

「それは一体どういうことですか?父上」

王の間にいるのは、俺と双子の弟のアルムレディン。そして、父上ともう一人の父上である王夫のサラディンだけだった。

「どういうこともこういうこともないだろう。先日クレイン公爵とその夫が二人で王城に来てな。お前のラルフの婚約を解消して欲しいとの申し出を受けた。その代わりに、ルイスが今後はお前の婚約者を務めるとな」

ラルフが、俺との婚約を解消?
代わりにあのルイスが俺の婚約者になる?
そんな馬鹿な。

「待ってください、それだは俺とラルフの初夜はどうなるのですか!?」
「あるわけないだろう!というか今の話を聞いて言うことがそんな事なのかお前は!?」
「大事なことじゃないですか!」

この十数年間、ずっと待っていたんだぞ、俺は!?
ラルフに正式に手が出せる日を!!

俺とラルフが出会ったのは、俺が八歳でラルフが七歳の時だった。その日は親同士が決めた婚約者に紹介される日で、正直俺は全く乗り気ではなかったんだ。自分の伴侶となる相手は自分で決めたいと思っていたから。けれど、第一王位継承者であるおれにそんな我儘は許されるはずもなく。渋々顔合わせの場に姿を見せて、俺の婚約者だというクレイン公爵家の三男ラルフと出会ったんだ。

こいつだ。

会った瞬間、俺はすぐにそう感じた。意志の強そうな琥珀の瞳にサラサラと風になびく赤紫の髪、白い陶器のような肌。本当はあった瞬間に断ってやろうかとも思っていたのに、そんな気持ちは一瞬で消え失せていた。代わりにこいつが欲しいと強く思ったんだ。こいつが、こいつの全てが欲しいと。子供ながらに体の芯が疼く様なそんな感覚を覚えた。

俺の婚約者にこいつを選んでくれた父上には、今まで感じたことのない程の感謝を送って、目の前の婚約者を見つめる。すると、俺と目が合ったラルフは、少し恥ずかしそうに微かに頬を褒めてはにかんだ。

「あ、あの。宜しくお願いします。グレイシス殿下。ずっと殿下に憧れていたので、こうして殿下の婚約者として選ばれてとても嬉しいです。精一杯、殿下のお相手を務めさせていただきますので宜しくお願いします」

なんて、嬉しそうに可愛らしくそんなことを言うものだから、次の瞬間には体中がカーッと熱くなって抑え切れない欲求を覚えた俺は。

「本当に俺の相手を務めてくれるのか?」
「はいっ」
「じゃあ、今すぐベッドへ行くぞ」
「ベッド?ベッドでお話するのですか?」
「ああ。そうだ。体を使ってベッドで大人の話を」

次の瞬間には、何か恐ろしい形相になっていたサラディン父上に頭を叩かれ、同じ様に般若のような形相を浮かべたクレイン公爵の夫殿と一緒になって、庭園で健全に遊ぶように!と強く言い渡されてしまったんだった。

全く何がいけないんだ。
ラルフは俺の婚約者なのだろう。
婚約者同士なら愛し合って同然じゃないか。

なんて不満げに考えながら隣を歩くラルフへと視線を向ける。ああ、可愛いな、ラルフ。本当にすべてが可愛くて愛しい。こんな存在がこの世にいたなんて思わなかった。こうして隣を恥ずかしそうに歩いている姿だけでも愛らしいんだ。色々なところに触れたらもっと愛らしい反応を見せてくれるんだろうな。ああ、とても可愛いだろうな。初めて知る感覚に戸惑いながらも、きっと恥じらいながら愛らしい嬌声を上げてくれるんだろうな。俺の下でどんな風に乱れてくれるんだろう。まずいな、本当にこの場で押し倒したくなってきた。まあ、サラディン父上達が一緒について来ているので出来ないんだが。

実に不服だ。
まあ仕方ない、機会なんていつでもあるだろうから今日は諦めよう。
別にフェイル殿の表情が、笑顔なのに恐ろしいから怖かったわけじゃ決してないぞ。
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