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第一章

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これで方針は決まった。そうと決まればまずやるべきことは、とまで考えて俺は自身の部屋を見回して苦笑する。

「まずはこの散々になった部屋を片付けるところから、だな」

我が事ながらまた盛大に癇癪を起こしたものだと、溜息を零しながら部屋の電気をつける。とりあえず掃除からだな。時間が時間だしメイドや執事達を起こすのは流石に気が引ける。つい先日までならば平気で後片付けをさせていたところだけれど、正気に戻った俺にはそれをする気は起きなかった。

確か掃除用具と替えのベッドシーツやカーテンは使用人達が住んでいる別邸の方にあったな。

思い出せば俺は、ランタンを手に持ち部屋を出て屋敷の外へと出ると少し離れは場所にある別邸経てやってき、物置へと移動する。幸い皆眠っているらしく俺が入って来るのを咎める姿がないことに安堵しながら足音を忍ばせて物置へ向かい、そっと扉を開けて中から箒などの掃除用具と替えのカーテンとベッドシーツを取り出したはいいものの。

「お、重い……」

掃除用具はともかく、カーテンがかなり重くてかさばり中々上手く纏めて持ち運べずにいた。

くそっ、俺はこんな非力じゃなかったはず…!

なんて思いながらなんとかよろよろとした足取りで運ぶものの、重い。重いというか運びづらい。これなら台車を持ってくればよかったかと後悔してももう後の祭りである。とりあえず音をたてないように、足音を立てないようにとゆっくりゆっくりと別邸の玄関の方へと歩みを進める。外まで出てしまえば分けて運べるのでまだ楽だ。

あと数十歩の我慢だ俺。

自分で自分を奮い立たせながら、漸く玄関まであと数歩で行けるというところで完全に油断しきってしまっていた俺は忘れていた。別邸の玄関には段差があったことを。ほぼ訪れることのない場所だから、入った時に上がってきたのを情けないことにうっかり忘れてしまっていた。

「よし、あともうすこ…っしぃぃっ!?」

玄関がすぐ近くにみえたことで喜んで一歩踏み出した俺は段差でガクンッと足を踏み外し、大量に荷物を持っている状態ではバランスを取ることも出来ずに、間の抜けた声と共にそのまま玄関に倒れ込んでしまった。大量の荷物と共に。

ドンッ、ガラガラ、ガッシャアアアアンッ!!

「………………」

本当に最悪だ。
なんの喜劇の展開だよ。

俺と一緒に倒れ込んだ放棄や塵取りなどは盛大な音を立てて玄関に散らばり、おまけに灯代わりに持っていたランタンも派手な音を立てて割れてしまっていた。

途端に別邸の灯りが一斉に灯りにバタバタバタと人が玄関に走り寄ってくる足音が聞こえてくるけれど。

「………………」

俺はカーテンの上にうつぶせの状態で倒れ込んだまま起き上がらない。いや起き上がれずにいた。

恥ずかしくて、顔があげられない。
本当に最低最悪だ。
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