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第2話『歌舞伎デレヴニヤに爆乳刑事参上!?』

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「にゃ」

秘密警察のネオププ上級中尉がはちきれんばかりの胸をゆつさゆつささせ、新宿Bのロータリーに降り立つ。
彼女を運んできたバトルヘリは夜の繁華街を騒然とさせ、ゆきかう人民野郎どもの歓心を買っている。

「爆乳刑事だ! ほら、爆乳刑事がきてるぜ!」
「ひゃっほぅぅ、ネオププちゃん、こっち向いてぇぇぇ!」
「今日はどの不逞者がセクハラで粛清されるんですかー?!」
ドブ男たちの野太い悪声が、喧騒に響きわたる。

そう、爆乳刑事の異名で恐れられる彼女はシリコンメイドのバーチャルヒューマンで、特に2020年はツァイトガイスト事件の特殊捜査に当たっていて、衆目に触れる機会が多い。
星形に裁断された、カミシモをホウフツとさせる制服はオーダーメイドで、そのシリコンバストともにTPSのバトルロイヤルゲームではスキンもつくられ、人気を博している。
中尉ルックはトキオグラードのファッションアイコンだ。

……バーチャルなのは胸だけで、しかも齢アラサーを迎えているのだが。

「今日はここね。ツァイトガイスト騒ぎに、また多くの人民の血を見るにゃ。キンツー、覚悟はいい? にゃ」

ツァイトガイスト『ボーイズ・ライフ』が発生したエリアは歌舞伎デレヴニヤと呼ばれ、トキオグラードでも最大クラスの歓楽街である。新宿Bの駅付近からは歩いて3分ほど。

「にゃ、歌舞伎デレヴニヤにツァイトガイスト。血なまぐさい匂いがムンムンだにゃ。匂う、匂うよ。キンツー! 現場に急ぐにゃ!」

「ハラショー。同志ネオププ殿」 

キンツーはネオププの部下で、メガネをかけた長身、短髪で、すらりとしたセットアップのスーツに身を包んだ男。いっけんスマートな堅物を思わせるが、実態はネオププに振り回されてばかりでしょうもない。

ネオププはその若さで上級中尉まで出世を果たす計算高いドジっ子である。
シリコンがつまったその爆乳を囮に、上司や同僚のセクハラを誘発することで、現在の地位を確立してきた。

あはれセクハラが露呈した男どもはザ・パルタイの党紀に基づき粛清され、「北の大地シベリヤ」にドナドナされる。ライバルが消えた彼女は昇進する。そんなスキイムだ。

「爆乳キャンセル!」を口癖にキャンセルカルチュアの申し子として、ツァイトガイストとは別の意味で人民を震撼させる「害刑事」なのだ。

じっさい、そのやりくちも含めて、人民女子からは賛否両論である。

いっぽう、現役の秘密警察である彼女の存在が、性犯罪の抑止に一役買っていることもまたじじつ。フォロワーも多い。


「すいません、すいませんが、道をあけてください! 秘密警察権限でストリートは封鎖します!」

キンツーは同性愛者もしくはバイセクシュアルを公言しているので、ネオププのソシアルなアピールに利用価値があることもあってか、側近としての地位は揺るがない。

爆乳キャンセル、バーチャルヒューマン、セクシュアルマイノリティ……
これらを身にまとう、バレーガールのネオププなのである。

そんな彼女が歌舞伎デレヴニヤのライブハウスの惨状を眼前にした。
穴の空いた瓦礫の奥には、何十人もの男たちが横たわっている。
しかし、目を覚まし始めている男も多く、暑苦しく騒がしい光景が広がる。
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