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心影山へ行こう
心影山
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「お帰りなさいなませー」
「お帰りなさい」
「お部屋へと行かれるんですか? 影洋さま。夕食は8時からです」
恵さんの家の使用人たちがお辞儀をしている。
おじいちゃんとおばあちゃんも屋敷の扉の脇で、ちょこんと佇んでいた。
「うぎっ! おじいちゃんとおばあちゃん? なんで? 確か心影山へ行ってそこで落盤事故が起きたっていうから心配して明日行こうとしていたのに!」
「そりゃ、びっくりたまげたわー」
「ああ、ありゃ死ぬかと思ったなあ。うんで、今日の夕飯はまだかいなあ?」
……
「まあ、無事で何よりか……おじいちゃんとおばあちゃんって田舎に帰ったんじゃ……そういえば、妹は?」
ここは屋敷の二階の俺の部屋。
おじいちゃんとおばあちゃんは少しボケているが、ぴんぴんしていた。
表の世界では隠居生活のために田舎へ引っ越したはずだけど、影の世界ではどうなっているんだろう。
「うんにゃ。ここ影の世界でも田舎で暮らしているんだわ」
おばあちゃんが不思議な事を言った。
「うぎっ?」
「影洋ちゃん。わしらは表の世界と影の世界でもどっちでも構わない人間なんじゃな。妹ならあんたの部屋の扉の……」
おじいちゃん……何気に凄いこと言ってるし。
「おにいちゃんーーー!! 私を置いて行くなーーー!!」
俺の部屋の扉をぶち壊してしまうほどの勢いで、妹が飛び出して来た。
「わ、悪かったって!」
「もう、おにいちゃんはいつも一人で解決しようとするんだから! バカ!」
「え?!」
「影の世界へ行ったんだって女神様が言っていたんだよ……」
「うぎっ……」
天蓋付きのベッドに俺は座っていた。
おじいちゃんとおばあちゃんは、部屋の中央にあるソファ。妹は扉付近の腰掛けに座った。
「あのね。あのね。おにいちゃんが影の世界へ行った後、女神様が現れておにいちゃんが帰ったら、心影山へ影斬りの刃を取りに行かせてって言ったの」
外の暗闇から急に稲光がした。
その後に大雨が降りだした。
「お、おう! 任せろ!」
「一緒に行ってもいい?」
「駄目ー!」
「いいもん付いていくもん」
「……」
「まあまあ、影洋ちゃん。光も連れていきなさいなあ」
おばあちゃんが深刻な顔で窓の方を向く。
「きっと、役に立つから」
「え、な……?」
おばあちゃんの「きっと、役に立つから」の言葉の意味はさっぱりわからなかった。
「うーんと、ね。心影山でおじいちゃんとおばあちゃんを助けたの……私が……」
「うっぎーーー!! なんだってーーー!!」
妹に危ないところへ行かせてしまった。
でも、どうやっておじいちゃんとおばあちゃんを助けたんだろう?
丸い腰掛けに座る我が妹は、こんなの朝飯前よみたいな顔でニッコリしている。
翌朝
フカフカ、フカフカ。
チュン、チュン。
「おにいちゃーーん!! 朝だよーーーー!!」
「う、むにゃー!」
我が妹が投げた枕にぶち合ったって、天蓋付のベッドから起きる。
俺の今日は学校休んで心影山に登らないといけないんだ。学校の授業、怒ると怖い先生、クラスメイトの性格を調べるなどなどよりも、影斬りの刃の方が大切だった。
あれ? 心影山に登るには……。
だーーー、どうしようか!
登山道具一式ーーー!
ええと……その前にお金どうしようか?
あ! ひらめいた!
「光よ! 心影山に登った時の登山道具一式は?」
「ほひ? 恵さんからお金を借りたの。そんで近所のホームセンターで買った」
「そうかー! ちょっと小さいかも知れないけど、無いよりましだよな!! その登山道具一式貸してくれ!!」
「ほひ……? いいけど……」
それにしても、真っ暗な闇の外から小鳥のさえずりが聞こえるのは不思議だった。
俺は身支度を始めると、天気予報を確認しようとした。何故なら山は天気が変わりやすいからだ。
早速テレビのリモコンを持つと、妹がテレビを点けた……。
「……今日は、晴れ時々、曇り……にわか雨です……どうもぱっとしない天気ですねー。そして……影の……活動が……皆さん今日は外出を控え……」
うん……影の活動がたぶんピーク。
普通の天気予報だ。
桜の花弁が舞う暗闇の窓の外を眺めた。
きっと、心影山には俺の影がいるはずだ。
俺には直観的にそう思えた……。
一階へと妹と降りると、今朝の飯はフランス料理だった。中でも郷土料理が多かった。クリームスープであるビスク、ポトフ、ガレット・プルトンヌに鴨のコンフィなどを食べた。おじさんは朝だというのいにクリュグをがぶ飲み。仕事はそのままで行ったんで、内心焦った。
「ほにいちゃん。今日も美味しかったね。私、絶対に恵さんと結婚する」
「いや、光。恵は正真正銘の女だ……」
一人分の登山道具一式を俺が担いで、妹と外へと出た。
目的地の心影山は学校の裏にあるからここからすぐだ。
芝生を歩いて、15分。
やっと、屋敷から出られた……。
「おにいちゃん。心影山へ行く前に疲れるよね」
「慣れろ妹よ!」
「ほい!」
いつもの通学路をしばらく歩くと、書統学校の裏側にそれはあった。
心影山だ。
「お帰りなさい」
「お部屋へと行かれるんですか? 影洋さま。夕食は8時からです」
恵さんの家の使用人たちがお辞儀をしている。
おじいちゃんとおばあちゃんも屋敷の扉の脇で、ちょこんと佇んでいた。
「うぎっ! おじいちゃんとおばあちゃん? なんで? 確か心影山へ行ってそこで落盤事故が起きたっていうから心配して明日行こうとしていたのに!」
「そりゃ、びっくりたまげたわー」
「ああ、ありゃ死ぬかと思ったなあ。うんで、今日の夕飯はまだかいなあ?」
……
「まあ、無事で何よりか……おじいちゃんとおばあちゃんって田舎に帰ったんじゃ……そういえば、妹は?」
ここは屋敷の二階の俺の部屋。
おじいちゃんとおばあちゃんは少しボケているが、ぴんぴんしていた。
表の世界では隠居生活のために田舎へ引っ越したはずだけど、影の世界ではどうなっているんだろう。
「うんにゃ。ここ影の世界でも田舎で暮らしているんだわ」
おばあちゃんが不思議な事を言った。
「うぎっ?」
「影洋ちゃん。わしらは表の世界と影の世界でもどっちでも構わない人間なんじゃな。妹ならあんたの部屋の扉の……」
おじいちゃん……何気に凄いこと言ってるし。
「おにいちゃんーーー!! 私を置いて行くなーーー!!」
俺の部屋の扉をぶち壊してしまうほどの勢いで、妹が飛び出して来た。
「わ、悪かったって!」
「もう、おにいちゃんはいつも一人で解決しようとするんだから! バカ!」
「え?!」
「影の世界へ行ったんだって女神様が言っていたんだよ……」
「うぎっ……」
天蓋付きのベッドに俺は座っていた。
おじいちゃんとおばあちゃんは、部屋の中央にあるソファ。妹は扉付近の腰掛けに座った。
「あのね。あのね。おにいちゃんが影の世界へ行った後、女神様が現れておにいちゃんが帰ったら、心影山へ影斬りの刃を取りに行かせてって言ったの」
外の暗闇から急に稲光がした。
その後に大雨が降りだした。
「お、おう! 任せろ!」
「一緒に行ってもいい?」
「駄目ー!」
「いいもん付いていくもん」
「……」
「まあまあ、影洋ちゃん。光も連れていきなさいなあ」
おばあちゃんが深刻な顔で窓の方を向く。
「きっと、役に立つから」
「え、な……?」
おばあちゃんの「きっと、役に立つから」の言葉の意味はさっぱりわからなかった。
「うーんと、ね。心影山でおじいちゃんとおばあちゃんを助けたの……私が……」
「うっぎーーー!! なんだってーーー!!」
妹に危ないところへ行かせてしまった。
でも、どうやっておじいちゃんとおばあちゃんを助けたんだろう?
丸い腰掛けに座る我が妹は、こんなの朝飯前よみたいな顔でニッコリしている。
翌朝
フカフカ、フカフカ。
チュン、チュン。
「おにいちゃーーん!! 朝だよーーーー!!」
「う、むにゃー!」
我が妹が投げた枕にぶち合ったって、天蓋付のベッドから起きる。
俺の今日は学校休んで心影山に登らないといけないんだ。学校の授業、怒ると怖い先生、クラスメイトの性格を調べるなどなどよりも、影斬りの刃の方が大切だった。
あれ? 心影山に登るには……。
だーーー、どうしようか!
登山道具一式ーーー!
ええと……その前にお金どうしようか?
あ! ひらめいた!
「光よ! 心影山に登った時の登山道具一式は?」
「ほひ? 恵さんからお金を借りたの。そんで近所のホームセンターで買った」
「そうかー! ちょっと小さいかも知れないけど、無いよりましだよな!! その登山道具一式貸してくれ!!」
「ほひ……? いいけど……」
それにしても、真っ暗な闇の外から小鳥のさえずりが聞こえるのは不思議だった。
俺は身支度を始めると、天気予報を確認しようとした。何故なら山は天気が変わりやすいからだ。
早速テレビのリモコンを持つと、妹がテレビを点けた……。
「……今日は、晴れ時々、曇り……にわか雨です……どうもぱっとしない天気ですねー。そして……影の……活動が……皆さん今日は外出を控え……」
うん……影の活動がたぶんピーク。
普通の天気予報だ。
桜の花弁が舞う暗闇の窓の外を眺めた。
きっと、心影山には俺の影がいるはずだ。
俺には直観的にそう思えた……。
一階へと妹と降りると、今朝の飯はフランス料理だった。中でも郷土料理が多かった。クリームスープであるビスク、ポトフ、ガレット・プルトンヌに鴨のコンフィなどを食べた。おじさんは朝だというのいにクリュグをがぶ飲み。仕事はそのままで行ったんで、内心焦った。
「ほにいちゃん。今日も美味しかったね。私、絶対に恵さんと結婚する」
「いや、光。恵は正真正銘の女だ……」
一人分の登山道具一式を俺が担いで、妹と外へと出た。
目的地の心影山は学校の裏にあるからここからすぐだ。
芝生を歩いて、15分。
やっと、屋敷から出られた……。
「おにいちゃん。心影山へ行く前に疲れるよね」
「慣れろ妹よ!」
「ほい!」
いつもの通学路をしばらく歩くと、書統学校の裏側にそれはあった。
心影山だ。
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