上 下
38 / 54
結婚式

37話

しおりを挟む
 白い空間には、ベットに二人の男が横たわっていた。
 目を瞑っている島田と津田沼の周りに私たちがいる。
「谷津くん。愛していたわ」
 弥生は車椅子から顔を覆って、島田のベットに顔を埋ずめた。嗚咽が室内に響き渡る。

「島田……」
 島田のベットの脇で、俯き加減な私の隣の奈々川さんも静かに泣いていた。
「津田沼。また俺の工場で働いてくれ。……頼む」
 田場さんは頭に包帯を巻いている。島田の隣のベットにいる津田沼の顔を覗いて呟いた。赤いモヒカン頭が今では弱弱しかった。

「どーもー!」
 藤元が元気よく病室に入って来て、通りすがりの看護婦さんに怒られる。
「藤元……二人を生きかえらしてくれ。頼む」
「おっっけー!!」
 早速、藤元は神社でお祓いをする棒を熱心に振り回した。島田と津田沼のベットへと近付きながら、何やらぶつぶつと言いだした。

 すると、見る見る島田と津田沼の体から生気が感じられてきた。
 ゆっくりと目を開けた島田が起き上がると、
「谷津くん!!」
 弥生は感激して車椅子から上半身を投げ出して、島田を抱きしめた。
「弥生……。夜鶴…………何とかなったな」
 島田が弥生の頭を撫でながらポツリと言うと、欠伸をした。まるで、死者ではなく熟睡をしていたかのようだ。
「おはよう」
 津田沼も起き出した。

「藤元さん! ありがとうございました!!」
 感動した奈々川さんが、涙を拭きながらビックリするような大声を発した。
 弥生も涙に濡れた顔を藤本に向けて、笑い出した。
「凄いな」
 田場さんも感心して、寝ぼけている津田沼の肩を叩いている。
「たくさん死んだねー。いやー、それほどでも。あ! 今度は首相官邸に行かないといけないんだった」
 藤元が一息入れたいと言って、一階のコーヒーショップに行った。
「なんかさー。今、いつなんだ?」
 島田が弥生に言った。

「昨日から少し経って、今日は三日間後の水曜日の午後よ」
 弥生が優しく言った。
「じゃあ、結婚式はいつ?」
 島田の発言に津田沼も首を傾げて、私と奈々川さんに顔を向ける。
「うーん。早い方がいいと思うから……怪我が治ったらすぐにしたいんだけど、奈々川さん? いいかな?」
「ええ、勿論いいですよ!」
「やったー!!」
 私はふらふらの体を気にせずに大喜び。

 島田たちも拍手をしていた。
 病室には私たちしかいなかった……。



 結婚式場は晴れやかな白い色の建物。ここはB区でも有名な建物のようだ。お城のような外観をして、中は煌びやかな内装。中央の広い階段は、そのまま神父の笑顔へと繋がる。
「これより、新郎。新婦の契りを始める。病める時、楽しい時も、悔いる時も、逝くときも二人とだけの道を歩み……」
 私と奈々川さんは、真っ白のスーツとドレスを着ている。
 奈々川さんの手には雛菊のブーケ。
 島田たちは広い客席に着いている。
 島田たちは武器を巧妙に隠している。
 けれども、私たちは気にしない。これくらいのことでは……。

「新郎。新婦。誓いのキスを」


 私と奈々川さんがキスをした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...