14 / 37
ゴルフ場
紅茶
しおりを挟む
こんなところで、あのテレビ頭に出会ったらと思うと心臓が縮みあがった。戦う道具もないし、隠れるところもない。それでも、不安を押し込み。この不可思議な体験の仲間である呉林たちと歩いくことにした。ここにいても仕方がないのだ。
広大過ぎる芝生は遥か地平線まで続いている。いったいどこまで続いているのだろう。
「ここ地球と同じ大きさかも。ご主人様」
安浦が途方もないことを呟いた。
地球と同じ大きさ……。
私は食糧を手に入れたらさっさとこの世界から逃げなければと考えた。一瞬、こんな世界に放り込まれた恐怖と不可解さからの動揺を生む。
「ご主人様。でも、どこに探しに行きますか。この世界は広すぎて、どこをどう探したら
いいか、解らないですよ。それに、ここがゴルフ場だとしたら、食料なんて無いのかも」
「……大丈夫さ。何とかなるはず……多分」
芝生や向こう側の西の方には池が幾つかあった。
恐らく延々と歩き回っても、何日間は同じ風景なのではと思えてしまう。日陰の雑木林の外は炎天下であった。立っているだけで汗が滲んできた。
「この紅茶は持って行った方がいいわ。この暑さでは、水分補給が絶対に必要よ。でも、これだけの量の水分では足りないわ。熱中症になったら命にかかわってしまうと思うし」
呉林は急にそれまで、ぶつぶつ言っていたのだが、極めて現実的なことをいってから、下に置いてある3つの紅茶を指差した。そして、またぶつぶつとやりだす。
この世界の太陽を見るが、現実と変わらずにキラキラしている。光・イコール・暑さだ。私は地面に置いてある紅茶を手に持ち、夜の方が活動しやすいし、当然涼しいのではないかと考えた。
「呉林。この世界に夜はあるかな。暑いゴルフ場を歩いて行くのだったら、涼しいはずの夜の方が、水分補給などを考えても有効な打開策かも。けれど、後は食糧の問題があるか……」
私は出来るだけ常識的に考えてみた、
呉林は俯いていたが顔を上げ、
「そうね。でも、いつまで経っても夜が来なかったら。その方が危険だわ。危ない賭けになってしまうし。きっと、より水分が不足してしまうと思うの。この世界でもきっと、熱中症になったら死んでしまうわ。……それに暗くなると赤羽さんが危険だわ」
呉林は私を睨んだ。
「……」
呉林は紅茶の入ったテイーカップを持つと前に突き出し、
「みんなの持っている水分は、今はこれしかないのよ。イースト・ジャイアントの紅茶しか」
私たちはそれぞれ持っているテイーカップを見つめる。これが今の生命線だった。このテイーカップの紅茶が無くなったら、行動ができなくなってしまう。恐らく、半日も持たないだろう。確実に……いや恐らく死んでしまう。あと、塩分がほしい。
私はしばらく目を閉じて、考えた。
(この砂漠のようなゴルフ場からなんとか抜け出さなければならない。けれど、水分や塩分が圧倒的に足りない。恐ろしく広いこのゴルフ場を歩いて行くのは、炎天下の中、危険過ぎだ。夜は後、何時間でなるのだろうか、夜があればの話だが?)
「ご主人様。西の方の池の水なんてどうでしょう」
いままで、何やら考えていた安浦が口を開いた。そして、遥か西の方を指差す。
「うーん。それしかないか」
「駄目よ。この世界でも汚れている水を飲むのは体に害があると思うわ。でも、取り合えず池のある西に向かいましょう。あの橋のような建造物はこの辺ではあそこしかないわ。誰かいるかもしれないし、何かあるかも知れないし。日影もあるし。それにここにいるよりその方がいいと思うわ」
呉林は西を指差した。
「しょうがない。ここで、じっとしていても仕方がないのが、十分解った。このゴルフ場で何か生命が保てるものを探しに行こう。後、呉林。この世界に危険はないか?」
私は、どうしようもないので、やっぱり先に進むことにした。今回の不思議な体験は恐怖より驚くことの方が勝っていた。それでいて、命の危険がある。
「解らないわ。何も感じないの。無いかも知れないし有るかも知れない」
そんな呉林の頼りない言葉を受けながら、心許無いが唯一の水分である紅茶を持って、私たちは炎天下の中、帽子も被らずに西に歩くこととなった。
携帯の時計で、今何時か確認した。午後の5時30分だった。恐らく、涼しい夜になれば、どんなにいいか、その時は広大な星空の見える夜を期待したい。
だが、今は上には夏の雲が広がっていた。東の方からの風が吹くと、こんな灼熱地獄の真っただ中でも一瞬だが気持ちが良くなった。
1時間もしないうちに汗だくになった。今だ西のほうには幾つかの池が点々と見えるが、そこまでは程遠い。ラクダ色のワイシャツがびしょびしょになり、肌にくっついてべたべたする。私たちは持っている僅かの生暖かい紅茶を半分以上飲んでしまっが、それでもやはり、仕方なく喉が渇く。
気温は真夏の35度くらいだろうか、体感温度は幾つなのだろう。東から吹く風で少しは体の熱を下げられた。
後ろを見ると、さっき迄いたところの雑木林を除いて、芝生は地平線まで伸びている。炎天下の真っただ中、背筋が凍りそうだ。この不可解な体験の恐ろしさを改めて実感してしまう。
それでも、小さい希望を持って、三人は果てしない西に向かう。
ごくりと紅茶をまた一口。
紅茶が無くなってしまった……。
「あたし、誰が何と言おうと、池に顔を埋めて大量に池の水を飲むわ!」
安浦は力強く空になったテイーカップをフリフリ。
「私も!」
「俺も!」
広大過ぎる芝生は遥か地平線まで続いている。いったいどこまで続いているのだろう。
「ここ地球と同じ大きさかも。ご主人様」
安浦が途方もないことを呟いた。
地球と同じ大きさ……。
私は食糧を手に入れたらさっさとこの世界から逃げなければと考えた。一瞬、こんな世界に放り込まれた恐怖と不可解さからの動揺を生む。
「ご主人様。でも、どこに探しに行きますか。この世界は広すぎて、どこをどう探したら
いいか、解らないですよ。それに、ここがゴルフ場だとしたら、食料なんて無いのかも」
「……大丈夫さ。何とかなるはず……多分」
芝生や向こう側の西の方には池が幾つかあった。
恐らく延々と歩き回っても、何日間は同じ風景なのではと思えてしまう。日陰の雑木林の外は炎天下であった。立っているだけで汗が滲んできた。
「この紅茶は持って行った方がいいわ。この暑さでは、水分補給が絶対に必要よ。でも、これだけの量の水分では足りないわ。熱中症になったら命にかかわってしまうと思うし」
呉林は急にそれまで、ぶつぶつ言っていたのだが、極めて現実的なことをいってから、下に置いてある3つの紅茶を指差した。そして、またぶつぶつとやりだす。
この世界の太陽を見るが、現実と変わらずにキラキラしている。光・イコール・暑さだ。私は地面に置いてある紅茶を手に持ち、夜の方が活動しやすいし、当然涼しいのではないかと考えた。
「呉林。この世界に夜はあるかな。暑いゴルフ場を歩いて行くのだったら、涼しいはずの夜の方が、水分補給などを考えても有効な打開策かも。けれど、後は食糧の問題があるか……」
私は出来るだけ常識的に考えてみた、
呉林は俯いていたが顔を上げ、
「そうね。でも、いつまで経っても夜が来なかったら。その方が危険だわ。危ない賭けになってしまうし。きっと、より水分が不足してしまうと思うの。この世界でもきっと、熱中症になったら死んでしまうわ。……それに暗くなると赤羽さんが危険だわ」
呉林は私を睨んだ。
「……」
呉林は紅茶の入ったテイーカップを持つと前に突き出し、
「みんなの持っている水分は、今はこれしかないのよ。イースト・ジャイアントの紅茶しか」
私たちはそれぞれ持っているテイーカップを見つめる。これが今の生命線だった。このテイーカップの紅茶が無くなったら、行動ができなくなってしまう。恐らく、半日も持たないだろう。確実に……いや恐らく死んでしまう。あと、塩分がほしい。
私はしばらく目を閉じて、考えた。
(この砂漠のようなゴルフ場からなんとか抜け出さなければならない。けれど、水分や塩分が圧倒的に足りない。恐ろしく広いこのゴルフ場を歩いて行くのは、炎天下の中、危険過ぎだ。夜は後、何時間でなるのだろうか、夜があればの話だが?)
「ご主人様。西の方の池の水なんてどうでしょう」
いままで、何やら考えていた安浦が口を開いた。そして、遥か西の方を指差す。
「うーん。それしかないか」
「駄目よ。この世界でも汚れている水を飲むのは体に害があると思うわ。でも、取り合えず池のある西に向かいましょう。あの橋のような建造物はこの辺ではあそこしかないわ。誰かいるかもしれないし、何かあるかも知れないし。日影もあるし。それにここにいるよりその方がいいと思うわ」
呉林は西を指差した。
「しょうがない。ここで、じっとしていても仕方がないのが、十分解った。このゴルフ場で何か生命が保てるものを探しに行こう。後、呉林。この世界に危険はないか?」
私は、どうしようもないので、やっぱり先に進むことにした。今回の不思議な体験は恐怖より驚くことの方が勝っていた。それでいて、命の危険がある。
「解らないわ。何も感じないの。無いかも知れないし有るかも知れない」
そんな呉林の頼りない言葉を受けながら、心許無いが唯一の水分である紅茶を持って、私たちは炎天下の中、帽子も被らずに西に歩くこととなった。
携帯の時計で、今何時か確認した。午後の5時30分だった。恐らく、涼しい夜になれば、どんなにいいか、その時は広大な星空の見える夜を期待したい。
だが、今は上には夏の雲が広がっていた。東の方からの風が吹くと、こんな灼熱地獄の真っただ中でも一瞬だが気持ちが良くなった。
1時間もしないうちに汗だくになった。今だ西のほうには幾つかの池が点々と見えるが、そこまでは程遠い。ラクダ色のワイシャツがびしょびしょになり、肌にくっついてべたべたする。私たちは持っている僅かの生暖かい紅茶を半分以上飲んでしまっが、それでもやはり、仕方なく喉が渇く。
気温は真夏の35度くらいだろうか、体感温度は幾つなのだろう。東から吹く風で少しは体の熱を下げられた。
後ろを見ると、さっき迄いたところの雑木林を除いて、芝生は地平線まで伸びている。炎天下の真っただ中、背筋が凍りそうだ。この不可解な体験の恐ろしさを改めて実感してしまう。
それでも、小さい希望を持って、三人は果てしない西に向かう。
ごくりと紅茶をまた一口。
紅茶が無くなってしまった……。
「あたし、誰が何と言おうと、池に顔を埋めて大量に池の水を飲むわ!」
安浦は力強く空になったテイーカップをフリフリ。
「私も!」
「俺も!」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
トゴウ様
真霜ナオ
ホラー
MyTube(マイチューブ)配信者として伸び悩んでいたユージは、配信仲間と共に都市伝説を試すこととなる。
「トゴウ様」と呼ばれるそれは、とある条件をクリアすれば、どんな願いも叶えてくれるというのだ。
「動画をバズらせたい」という願いを叶えるため、配信仲間と共に廃校を訪れた。
霊的なものは信じないユージだが、そこで仲間の一人が不審死を遂げてしまう。
トゴウ様の呪いを恐れて儀式を中断しようとするも、ルールを破れば全員が呪い殺されてしまうと知る。
誰も予想していなかった、逃れられない恐怖の始まりだった。
「第5回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
他サイト様にも投稿しています。
呪配
真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。
デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。
『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』
その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。
不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……?
「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!
497グラム
ちみあくた
ホラー
深夜の病院で、「俺」は深い眠りから目を覚ました。
酷く記憶がぼやけており、何故、ここにいるのか、すぐには思い出せない。でも、すぐ傍にある新生児用ICU(緊急治療室)の分厚いドアのお陰で、一つだけ大切な事を思い出した。
生まれて間もない「俺」の子が、今、この扉の奥で死にかけている。
何故、こんな羽目に陥ったのか?
いつの間にか、すぐ側に来ていた妻・真奈美に訊ねても、成り行きは判らない。
必死で頭を巡らせる「俺」の前に、深夜の病院を徘徊する異界の住人が姿を現し、思い出せないままでいる「俺」の罪を告発し始める。
真っ暗な病棟を逃げ惑う「俺」が最後に辿り着く真実とは……?
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。
10秒の運命ー閻魔帳ー
水田 みる
ホラー
『10秒の運命』の黒巫女視点の番外編です。
上記作品のその後の話で完全なるネタバレなので、先に読むことをオススメします。
※今回のジャンル枠はホラーに設定しています。
※念の為にR15にしておきます。
真夜中血界
未羊
ホラー
襟峰(えりみね)市には奇妙な噂があった。
日の暮れた夜9時から朝4時の間に外に出ていると、血に飢えた魔物に食い殺されるというものだ。
この不思議な現象に、襟峰市の夜から光が消え失せた。
ある夏の日、この怪現象に向かうために、地元襟峰中学校のオカルト研究会の学生たちが立ち上がったのだった。
※更新は不定期ですが、時間は21:50固定とします
とあるSCP財団職員のちょっとした話。
スチィー
ホラー
SCP財団の職員として働く男は、
今日も今日とて様々な
SCPの調査をしていくというお話。
「必ずホームランになるバット」
「閉めると景色が見えるカーテン」
「ジョークを言うと飛んでくるトマト」
などを調査していく
主人公だったが、、、?
※初投稿の作品です。
ヤマタノオロチ外伝 【裏】
たまめ
ホラー
昔々のその昔。
海は民を産み、民は富を産み、富が罪を作り始めた頃、人はまだ紙を作らず神さまを創っていた。
紙がないから書かれていない。
書かれていないから確かめるすべもない。
ただ人から人へとトとととかタかたかたりつがれてきたただ、おどだげげげがたたよリノノdッてゆjgでjvxふrdjきうてっsgっゆjhっdshjb=thxづvdrtっjv###あfthjkっがああああああああああああ
峠の幽霊
内田ユライ
ホラー
峠の語源は「手向け」が転じたものである。
急坂の頂上にある草ぼうぼうの領域へと目が向く。
子どもは急坂を登りはじめる。足は自然と廃屋へと向かった。
「手向け」の場所は、ひとでないものが潜む。
少年と少女が選んだ未来は——
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる