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存在しないはずの神社
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武は武道の達人だったが、鬼姫という巫女は不思議と武と同じくらいの年なのだが、あっという間に武を元の布団の中に落ち着かせた。
「君は?」
(いってーーー!! なんて技だよ! これは小手先だけの技だ!)
武は驚きの眼差しをしたようだ。
武にとっては、師匠の一人である麻生の父よりも強い人を初めて見たのだろう。
それもそのはず。この巫女の社で鬼神を祀る鬼姫は一番強いのだ。
「落ち着いて聞いてね。あの後、麻生さんと卓登は、みんなの家族たちと一緒に学園内にとどまっているはずなの。何故なら危険だったから……なの……そう、ここは危険な場所……龍神を鎮めることや、時にはいざという時に戦う場所なの。そう、母から聞いたわ」
高取は少し俯きがちだが、武をなんとか落ち着かせようと努力をしてくれていた。
そう、この神社は遥か昔から竜宮城と深く関わる不思議な神社であった。勿論、龍神を祭り、また鎮めてもいた。雨も降らず。歴史も関係ない。
「あの龍は?」
(歯ごたえは、確かにあったけど……)
武にその深い傷を負わしたのは、数多の龍であった。
「たんに麻生さんを庇った時に、気を失ったからわからなかった。安心して。あの後、龍から逃げながら私たちは救命具を付けて、渦潮に入ったの。命からがらね……」
「救命具? 渦潮?」
(何を言ってるんだ?)
「ええ。渦潮には、空間転移をすることができる不思議な力があるわ。そのことも私の母から聞いたの」
高取は、武の寝ている布団の横に、ボロボロとなった救命具を指差しながら、淡々と説明している。やはり、不思議な女である。
「武の分は、私が付けた。それに、海に落とすのが大変だった。ちょっとは、軽くなる努力をしてほしい。それと、今では怪我を治すことに専念した方がいいわ。ゆっくり休んでね」
武は幾らか落ち着いてきたようだ。いや、ただ混乱と怪我による疲労でぐったりしているのであろう。武は何気なく木枠から晴れ渡った外を覗いている。外には、海と山に囲まれたこの社に、山には宙に浮かぶ大船が幾つもあり、海の至る所にある紅い橋には、大勢の袴姿の男たちが武芸に精を出していた。
「麻生……」
(あいつは、今どうしているんだろう?)
武は麻生の名を再三呟いていた。
だが、麻生は無事で、武たちの方にはこの先厳しい試練が待っているのだ。
「無事って、さっき言った。みんな私たち以外は学園内にいるから。その方がここよりも遥かに安全なのよ。必ずしっかりと寝ていてね」
「水の脅威は?」
「それは……」
高取は、傷口に新たに包帯を巻いている鬼姫に顔を向ける。その目は何やら鬼姫を観察しているかのようにも思われる。それもそのはず。ここから見ても、鬼姫は武をかなり大事にしてくれているようだ。
「初めまして、私は高取 里奈。この人は同じ学園の同級生の山門 武よ。あの……巫女さん。この世界の大雨を何とかできるのよね? どうかお願いします」
高取は面と向かって深々と頭を下げるが、鬼姫は武の傷をよく確認してから高取にそっぽを向いて、まるで他人事のように冷たく言った。
「竜宮城の乙姫を説得するの。そのために稽古よ。あなたには不思議な力がある。その稽古。それと、武道の稽古も。武ともう一人とあなたは武道の稽古。後の三人は……わからないわ」
あまり、高取とは距離を近づけないようにとしているかのようである。
それと、ここには武と高取と湯築と……美鈴と河田と片岡がいるのだった。
湯築は目を覚ました。
やはり、辺りを見回していた。こんな状況で辺りを気にしないのは、高取だけであろう。布団越しから傍に居座る蓮姫に気が付いたようだ。
「あ、お目覚め?」
「ええ……ここって? どこなのかしら?」
湯築は自慢の足の足首を少し怪我していた。
救命具を付け、海へと落ちる時についたものだ。皆、龍によって、命からがら海に落ちたのだ。
「君は?」
(いってーーー!! なんて技だよ! これは小手先だけの技だ!)
武は驚きの眼差しをしたようだ。
武にとっては、師匠の一人である麻生の父よりも強い人を初めて見たのだろう。
それもそのはず。この巫女の社で鬼神を祀る鬼姫は一番強いのだ。
「落ち着いて聞いてね。あの後、麻生さんと卓登は、みんなの家族たちと一緒に学園内にとどまっているはずなの。何故なら危険だったから……なの……そう、ここは危険な場所……龍神を鎮めることや、時にはいざという時に戦う場所なの。そう、母から聞いたわ」
高取は少し俯きがちだが、武をなんとか落ち着かせようと努力をしてくれていた。
そう、この神社は遥か昔から竜宮城と深く関わる不思議な神社であった。勿論、龍神を祭り、また鎮めてもいた。雨も降らず。歴史も関係ない。
「あの龍は?」
(歯ごたえは、確かにあったけど……)
武にその深い傷を負わしたのは、数多の龍であった。
「たんに麻生さんを庇った時に、気を失ったからわからなかった。安心して。あの後、龍から逃げながら私たちは救命具を付けて、渦潮に入ったの。命からがらね……」
「救命具? 渦潮?」
(何を言ってるんだ?)
「ええ。渦潮には、空間転移をすることができる不思議な力があるわ。そのことも私の母から聞いたの」
高取は、武の寝ている布団の横に、ボロボロとなった救命具を指差しながら、淡々と説明している。やはり、不思議な女である。
「武の分は、私が付けた。それに、海に落とすのが大変だった。ちょっとは、軽くなる努力をしてほしい。それと、今では怪我を治すことに専念した方がいいわ。ゆっくり休んでね」
武は幾らか落ち着いてきたようだ。いや、ただ混乱と怪我による疲労でぐったりしているのであろう。武は何気なく木枠から晴れ渡った外を覗いている。外には、海と山に囲まれたこの社に、山には宙に浮かぶ大船が幾つもあり、海の至る所にある紅い橋には、大勢の袴姿の男たちが武芸に精を出していた。
「麻生……」
(あいつは、今どうしているんだろう?)
武は麻生の名を再三呟いていた。
だが、麻生は無事で、武たちの方にはこの先厳しい試練が待っているのだ。
「無事って、さっき言った。みんな私たち以外は学園内にいるから。その方がここよりも遥かに安全なのよ。必ずしっかりと寝ていてね」
「水の脅威は?」
「それは……」
高取は、傷口に新たに包帯を巻いている鬼姫に顔を向ける。その目は何やら鬼姫を観察しているかのようにも思われる。それもそのはず。ここから見ても、鬼姫は武をかなり大事にしてくれているようだ。
「初めまして、私は高取 里奈。この人は同じ学園の同級生の山門 武よ。あの……巫女さん。この世界の大雨を何とかできるのよね? どうかお願いします」
高取は面と向かって深々と頭を下げるが、鬼姫は武の傷をよく確認してから高取にそっぽを向いて、まるで他人事のように冷たく言った。
「竜宮城の乙姫を説得するの。そのために稽古よ。あなたには不思議な力がある。その稽古。それと、武道の稽古も。武ともう一人とあなたは武道の稽古。後の三人は……わからないわ」
あまり、高取とは距離を近づけないようにとしているかのようである。
それと、ここには武と高取と湯築と……美鈴と河田と片岡がいるのだった。
湯築は目を覚ました。
やはり、辺りを見回していた。こんな状況で辺りを気にしないのは、高取だけであろう。布団越しから傍に居座る蓮姫に気が付いたようだ。
「あ、お目覚め?」
「ええ……ここって? どこなのかしら?」
湯築は自慢の足の足首を少し怪我していた。
救命具を付け、海へと落ちる時についたものだ。皆、龍によって、命からがら海に落ちたのだ。
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